428 封鎖された渋谷で


対応機種Wii
発売日2008/12/04
価格6800円
発売元セガ

(c)2008 SEGA / CHUNSOFT
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428とは「よんにいはち」と読む。チュンソフトが制作する大作サウンドノベルである。
実写、複数の主人公、ジャンプシステム(ザッピング)、TIPS、舞台が渋谷、共通項が非常に多く、これはまさに以前サターンで大コケした「街」そのものである。
ただし以前計画されていた、続編ではない(関連を匂わせる記述はあるが)。

ゲームシステムは、「街」を踏襲したものとなっていて、新鮮さに欠けるものの、その代わり完成度は非常に高い。
チュンソフトは、一度大まじめに実写サウンドノベルをやっているノウハウもあり、カット割りやムービー演出もツボを押さえてる感じで、クオリティはかなり高い。
ただ、演出はやや派手さにかける印象がある。勢いが無いというか、もっと豪快に盛り上げる演出であっても良かった気がするが。

登場人物の衣装なども、「街」の時のような浮いたものではなく、おしゃれとは言い過ぎだが、実写であっても不自然さが無く、間口は広い。
ゲームデザイン(ここで言いたいのは、中身ではなく見た目)や、コマーシャルなども、かなり気を遣っている感じで、実写だから売れないという垣根を取り払おうとした努力がかいま見える。
というか、これで売れなかったら本当に悲しい。こんなにも面白いゲームなのに。

ストーリーは、笑いあり涙ありの、ごった煮形式で、どんなにわがままな客でも、どれか一つはツボにはまるシナリオが出てくる風に作ってある。
個人的にはどの物語も完成度が高く、楽しめた。

複数の主人公が、それぞれのストーリーに影響をもたらすので、選択肢で、正しい展開に導いてやらなければならない。違う展開に進んでしまった場合は先に進まずバッドエンドとなる。
それだけでなく、文章中に張られたハイパーリンクでジャンプすることで、シナリオにかけられた鍵(本作ではKEEP OUTと称される)をはずしてやることで、先に進めるようになる仕組みもある。

1時間ごとに、フラグチェックがあり、全ての主人公が正しい道のりを歩むことが出来ると、次の1時間が読めるようになる(「街」では5日間だった)。
プレイステーション版で追加された、フローチャートもあり、ヒントの与え方もうまく出来ていて、バランスが非常に良い。

複数の視点から、複数のシナリオが、絶妙に絡み合って展開するという、作り手や書き手からすれば、敷居の高い大変な面倒なコンセプトであるが、
やはりそこは、数々のサウンドノベルを手がけ、「街」という前例を作ったチュンソフトにしかできない、高い次元で上手にまとめあげられている。
複数の物語が、最後に綺麗に一本にまとまっていく様は、手放しで素晴らしいと褒めざるを得ない完成度の高さで、思わず舌鼓を打った。

全体の文章量も丁度良く、バッドエンドに関係する選択肢なんかも上手に作ってあり、「街」では日数という広さだったが、今作では1時間というなかで探せば良いので、それほどきつくも感じないだろうと思う。

こういったブレの少なさや、緻密に考えられたゲームバランスは、「街」を作り上げてきたからこそだと思う。

不満点といえば、隠し要素が隠れすぎっちゅうぐらいだ。
ま、便利になったシステムに対する対策とでも言うのか、コマンド総当たりで全部見られちゃあ商売あがったりだとでも言いたげだ。
それならば、ジャケットの裏やプロモーションで、隠しシナリオに起用した脚本家をわざわざ書かなければいい。宣伝に利用しなければいいのである。
隠れてる割に、正直言ってTYPE-MOONのシナリオは面白くなかった。逆に考えれば、隠れていてくれた方が良かったとも言える。それほど、ギャルゲーのノベルと、本編のサウンドノベルとのギャップがひどかった。
サターン版「街」でも、こんなの誰がわかるか!という隠しシナリオがあった。

あとは、タイムチャートが微妙に見づらい、操作性が悪い、ぐらいだろうか。

Wiiのゲームでは珍しく、ワイドサイズ前提のゲームである。ただし、単純にレターボックスにされるわけではなく、4:3のテレビでも問題なく遊べるように文字の大きさが調整されている。
去年発売された同じくチュンソフト制サウンドノベル「忌火起草」はプレイステーション3用のゲームとして開発された。元はプレイステーション3で出す予定だったのではないだろうか?
売り上げ不振だったのか、「忌火起草」はWiiに移植された。「428」もシェアウェアの大きいWiiで出そうと方向転換したように思える。

近年の表現規制の強化によって、この手のゲームが作りづらくなっていることが良くわかる面も見られた。もうちょっと融通きかせても良い気がするぞ。ゲーム業界!!
それと、商業的に厳しいとわかっていて、お金を出すセガの男気に感謝!
「街」でポシャッた続編計画に習って、結論。

こんなゲームを年に一回遊びたい。傑作!





[2008/12/08]
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