アルカイックシールドヒート


対応機種ニンテンドーDS
発売日2007/10/04
価格5800円
発売元任天堂

(c)2007 Nintendo / MISTWALKER
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Amazonリンク:アルカイックシールドヒート

坂口博信制作総指揮のミストウォーカープロデュース作品、第二作目がこの「アルカイックシールドヒート」である。
ニンテンドーDSのウリであるタッチペン操作を使った独自性の強いシミュレーションRPG。かなりの意欲作だ。

カートリッジ容量がDS初の2Gbit採用しているため、小売価格が5800円と相場から大きくはずれて高額になっている。
これは、坂口博信特有のビジュアル重視な制作体制から来たものだろう。
そもそも、あのヒゲのおっさんがXbox360用作品を発表時に、高画質の映像をニコニコしながら見せていた姿を知っていると、DSを選んだ理由が想像出来ないのだが…。
まあこの人は元々スクウェアで「ファイナルファンタジー」作ってた頃から映像重視な人間だったし、余計疑問が深まる。

自慢の映像美に関しては、ムービーの多いS.RPGっちゅう感じで、取り立てて技術的に見所は無い。
強いて言えば、戦闘時のキャラグラフィックが、ハイポリっぽく見せたプリレンダアニメーションなところだろう。
見た目は3Dのポリゴンっぽいが、実際は擬似的なもので、綺麗なスプライトってなオチだ。画面を見ていて、なんとなくサターンの「シャイニング・ザ・ホーリィアーク」に近い物を感じた。
ただし、アニメーションのつなぎが実になめらかで自然で、この辺りには強いこだわりを感じる。
この手法は容量をものすごく食うだろうし、単純に開発者としては少々メンドイと思うので、ほかはなかなかやりたがらないことと思う。

それ以外では、フィールドはローポリ、キャラはスプライト、イベントは2D背景にCG立ち絵というありきたりなものだ。

ゲームシステムは、たとえると、フロントミッション5+バハムートラグーンみたいな感じ(わかる人にしかわからないたとえだが、最もしっくり来る)。
3人一組でパーティを組み、一人一人のユニットはパーティ共有のAP(アクションポイント)の許す限り動けるが、戦闘シーンになると、一緒に戦うことになる。
このとき、各々の立ち位置によって、攻撃の威力や命中率に補正がかかる。攻撃範囲からはずれていたら、その攻撃は当たりづらくなるし威力も落ちる。

ちなみに戦闘は、敵から攻撃を仕掛けられた時のみ、その敵パーティから攻撃を受けて終了だが、こちらで仕掛けた場合は、どちらかが全滅するか全員が逃走するかするまで戦闘が続く。
戦闘シーンは、どちらかというとRPGの戦闘に近い。

こちらで戦闘を仕掛けないと敵を倒せないので、いかにして限られたAPを駆使して敵を殲滅していくかという効率を要求される面から考えると、戦略性は高くなかなか面白い。
ただ、肝心のバトルのテンポが壊滅的に悪く、おまけに単調でとにかくかったるい。
敵の配置も一貫してひねりがなく、コツがわかってくると戦闘のつまらなさとあわせて完全に作業になる。
CPUの頭の悪さもなんだかねぇ。本気でプレイヤーのユニットをつぶそうという動きをしてこない。特に想定外な動きをすると、とんちんかんな行動を起こすことが多く、非常に冷める。

システム的な構造上、ごり押しな進め方が極端に有効で、色々試せそうなユニットなんかも用意されているが、いかんせん出撃出来る枠が狭すぎて、試す余地が無い。これはもったいないの一言に尽きる。
シナリオ上の縛りで一度クリアしたマップに戻れないことの方が多かったり、リーダー格の重要固定ユニットが唐突に離脱したり、長いこと戻ってこなかったりすることが多く、強引な展開が目立つのも好きになれない。
ゲームバランスも大味で全体的に作りが大雑把なのもどうかと。

特徴的な要素である灰の戦士(要は無名ユニット)については、イマイチ内容面で生かし切れてない。
やられても戦闘中ならば復活させられるし、仮にやられたまま戦闘が終了していなくなってしまっても、お金さえ持ってれば同等のユニットを簡単に持ってこれるので、その辺の命のやりとりがかえって安っぽい。
強いユニットを犠牲に融合させ、能力値をアップさせたりという要素もあるが、使えるユニットを好きこのんで減らすことのデメリットの多さから、普通やらないだろう。年齢制限対策か?と勘ぐりたくなる。

これはXbox360「ブルードラゴン」でも感じたが、海外を意識した演出も目立つ。あんまり、そっちに媚びなくてもいい気がするんだがなぁ。
必殺技の名称や、グラフィックデザイン、世界観、シナリオなど、はなから日本ユーザーには目が無く、どちらかというと海外受けを狙った印象がある。
それにしても、他社製RPGが「ポーション」や「エーテル」といった「ファイナルファンタジー」シリーズで使われている名称を避けているというのに、このゲームでは堂々と使っている。いくら生みの親とはいえ、なんだかねぇ。
「ファイナルファンタジー」を捨ててゼロから新しいものを作ろう!という割には、前の作品に縛られすぎな気がする。脚本が代わり映えしないという点は差し置いても。
というか、この人は構想だけ立てて脚本は別の若手にでも任せた方がいい。
音楽も全体的に抑揚に欠け、鈍いBGMで退屈を誘う。

このゲームの操作は、マップの視点変更以外はすべてタッチペン操作だ。ボタン操作の方が圧倒的に快適かどうかという議論は難しい。
どちらかというと論点は、タッチ操作に限定する必然性はあったのか?という点である。残念ながら、一部操作においては、お世辞にも操作性が良いとは言えなかった。
せめて一つ、フィールドマップで、スクロール操作を十字キーに割り当ててくれれば、格段に操作しやすくなったろうに。
逆に、カメラ操作は蛇足だったと思う。それを入れるぐらいなら、物陰の部分に透過処理を入れてくれた方がよっぽど見やすくて良かった。

スクウェア時代からのつながりで、そこそこ有名なスタッフが参加していたりするが、どうにもその凄味が伝わってこない。
やっぱりDSでこの手のゲームは難しいんじゃないかー?昔ゲームで一山当てたいいオッサンが興味本位で手を出したような軽々しいゲームにしか見えなかった。
「ブルードラゴン」に続き、手厳しいことを書いてしまったが、この人のチャレンジ魂は買っているので、これからも期待したい。
しかし任天堂はRPGとなると、とんとはずれくじを引いてしまう不思議なメーカーである。ほかのジャンルの成功率と比べるとRPGとは本当に縁遠い会社だ。
そこで結論。

がんばれ坂口おにーさん!





[2007/10/14]
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