ブラッドオブバハムート


対応機種ニンテンドーDS
発売日2009/08/06
価格5980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 SQUARE ENIX / THINK & FEEL
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早い話が、スクウェアエニックスがモンスターハンターブームに便乗した作品である。

巨獣という巨大モンスターを相手に戦う。目、腕、胸、背中などにコアが存在し、コアを破壊すると、巨獣を倒した際に、その場所に応じた素材を手に入れることが出来る。
これらを合成し、より強い装備品を作って、キャラクターを強化していく。
レベルの概念もあるが、成長するのはHP、MPのみである。

キャラクターがスプライトでフィールドがポリゴンで描かれている。
開発は「THINK & FEEL」で、以前「ファイナルファンタジー12 レヴァナントウィング」を作った所である。
制作スタッフもかぶっているのか、作風がどことなく似通った雰囲気が見受けられる。
前回の作品が売れて成功したので、そのままの環境で新作ゲームを任されたのだろう。

しかし条件として、完全新作とはいえ「ファイナルファンタジー」の世界観を共有した物を求められたのだろう。
巨獣には「ファイナルファンタジー」の召喚獣の名称と同じ物が出てきたり、装備品にも同じ名前のものが出てきたりする。
基本的には別物である。

タッチパネル操作を基本とした作りだが、ほとんどの操作はボタンでも出来る。
但し、「攻撃をする」アクションは、タッチペンでなければならない。
攻撃したい敵や場所をつついてやると、その場所に向かっていき攻撃をおこなう。任天堂「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」でも使っていたシステムだ。
これが非常に古い、頭の悪いインターフェイスである。

カメラ視点が、サイドビューであり、しかし3Dフィールドなので当然奥行きがある。
タッチペンで攻撃したい相手をタッチしても、間違えてその手前や奥にいる部分を認識して攻撃しに行ってしまう間違いが良く起こる。

また、“タッチペンで指し示した方向に自動的に攻撃に行く”というプログラムを組むことが実に大変なことだということがこのゲームを遊んでいると良くわかる。
思い通りに動いてくれなかったり、おかしな動きをしたり、とにかくイライラさせられるのである。

他にも、画面右下に装備したアビリティのアイコンが表示され、これをタッチすることで、アビリティを使用する状態になるが、やはり煩わしい。
キャンセルしたい場合は、同じ並びにある×ボタンをタッチしろというのも、面倒な話だ。
しかし、このゲームは、左利きプレイヤーにも配慮した作りになっていて、A,B,X,Yボタンにも十字キーと同じ操作を割り振っているため、ボタン数が足りなくなってしまっている。

もう再三言われてきたことだが、ボタン+タッチパネル両刀遣いのゲームは駄目だということだ。
どちらかに特化したものにしないと、まず大前提としてユーザーへの負担が大きい点。ゲームが面白いつまらない以前に、この操作性のせいで疲れてしまって、なかなかゲームに没頭出来なかった。
あまり精密な操作ができないと言うこともあり、結局ゲームバランスも大味になってしまっており、アクションゲームとしての面白さが薄っぺらで物足りない。

グラフィックは中々綺麗。巨獣がポリゴンで描かれており、最もポリゴン数を使うキャラクターなので、それ以外の部分を犠牲にして作られている。
フィールドは巡礼路という露骨にポリゴン数を削るために作った設定でごまかしており、質素な通路で作られたフィールドだけがプレイヤーの歩ける部分である。背景も寂しい。

視点がサイドビューなのは、巨獣を見やすくするためのものであり、奥行きはあまりこのゲームでは重要では無い。
キャラクタはスプライトだが、パターン数は決して少なくなく、見栄えは良い。

ただし、巨獣以外に、ザコモンスターも巡礼路の上にいることが、せっかくここまで作り上げてきたゲームコンセプトを邪魔している。
巨獣の他に、巡礼路(フィールド内)にいるザコモンスターの相手もしなくてはならないのである。
せっかく倒しても、巨獣が新たに「召喚」することもあり、非常にうっとうしい。
巨獣だけだと簡単すぎる、物足りないという配慮だと思う。だが、前述したタッチパネルで攻撃する場所をタッチするという操作と、ザコキャラと戦いをする相性は非常に悪い。

ここで先ほど指摘した、タッチパネルの奥行きから来る誤操作が出てくる。
ザコ敵を倒したいのに、奥にいる巨獣にタッチしたという認識をしてしまう、その逆に手前にいるモンスターを認識してしまうという最悪のインターフェイスが出来上がる。

ゲームシステムにご都合主義が目立つ。
巨獣との距離があるのに、剣で切る動作でもダメージが与えられる点。距離の大小でダメージ量が変化するようにしているが、どうにも滑稽である。
遠距離用に、エネルギー弾を発射するアクションもあるが、違和感バリバリだ。
たまに体当たり攻撃などでこちらに接近し、直接巨獣に乗り上げて攻撃出来るシーンもあるが、とってつけたような感じが否めない。

結局こうなってしまったのは、スプライト+ポリゴンのために、あまりお互いが干渉出来ないからなのだろう。
直接でかい強大な敵と戦っているというよりは、巨獣の動いている背景の映像に合わせて攻撃しているという感じで、臨場感が無い。
タッチペンで攻撃するというのは、特定のコアの部位破壊を狙ったためのものなのだと思う。実際そこだけを抜き出すと、納得出来るインターフェイスではある。

ゲーム自体は難しくなく、寧ろかなり難易度は低く作ったつもりだろう。
だが、欲しい素材のために特定の部位破壊をやろうとすると、自分でやり方を探さなくてはならないので、一気に難しくなる。
アクションの難易度が低いために、敢えてノーヒントなのだろうが、もう少しヒントが欲しい。わからなくなるととことんドツボにはまってしまう。
特定の属性武器じゃないとダメージを与えられないと言う隠し方だけは勘弁して欲しかった。
チュートリアルモードが付いていたり、序盤は丁寧にゲームの説明が入るが、部位破壊に関しては今ひとつ説明不足に感じた。
序盤のミッションにそういったものをもっと組み込んでプレイヤーに理解させるべきだったと思う。

最大の不満点としては、ミッション(モンスターハンターで言うクエスト)の制限時間が短すぎることだ。
いわゆる素材集めに活用するフリーミッションでは30分だが、効率的なやり方を見つけられないと30分でも足りないぐらい。
本筋のストーリーミッションに至ってはたったの15分である。こちらに関してはフリーミッションに比べ難易度を大幅に落としてはいるが、制限時間が原因で先へ進めなくなったという事態に何度もぶつかった。
特に終盤のストーリーは、高いヒットポイントの巨獣を倒せというものが多く、仕方なしに素材集めを強要される作りが好きになれなかった。ラストバトルに関しては、かなりキツキツのものを求められ、ストレスが溜まった。
モンスターハンターのように、狩りそのものを楽しんで欲しいコンセプトのゲームだろうが、それ自体が面白くないので、あまり遊ぶ気になれなかった。

なんといっても巨獣の数が少なすぎるのがあるだろう。本筋で戦うもの以外だと、ほとんどが色替えの強化バージョンである。
おそらく隠しでまだいるとは思うが、実質本編で戦う7体程度である。この少なさだとやはりゲンナリするだろう。

モンスターハンター同様、協力プレイに重点を置いたゲームなので、ワイヤレス通信による最大4人までの協力プレイもある。但しWi-Fiは未対応だ。これは痛かったかもしれない。
モンスターハンターでは、主人公を作った後、使う武器を自分で選んでいくが、このゲームでは使いたい武器に合わせて、用意されたキャラクターを選択するようになっている。
しかしこの作りだと、前者に比べて敷居が高くないか?という気がする。キャラクタのレベルは、使ったキャラクタのレベルしかあがっていかないので、簡単に変更することができない。
わりとレベルアップが早いとはいえ、面倒このうえない。結局実質的な主人公以外なかなか使われないのではないだろうか。

スクウェアエニックスということで、世界観やシナリオが用意されているものの、後付け感は否めない。また、本編のみだとイマイチ説明不足な点も気になる。
特にキャラクターデザインが地味なのが致命的だ。魅力に乏しく、印象に残らない。ドット絵を意識したデザインをしている点は評価出来る。
一応のエンディングを迎えた後も、この後もゲームをやりこみましょうという露骨なメッセージが好きになれない。

前述したタッチパネルの誤認識もそうだが、巨獣が突撃してきて乗り込む時の動作や、巨獣が巡礼路にめり込んでしまったり、プログラミングが甘い。

ゲーム発表前のカウントダウンサイトでは、「バハムートラグーン」の続編を連想させるサイトでちょっとした話題になった。なんのことはない完全新作のゲームを売り込むための餌だったわけだが。
但し、シナリオライターが同じ人だったり、世界観に似通った点は見受けられる。

ゲームボリュームもたいしたこと無いくせに、5980円である。DSのゲームにしては高い。値段相応のゲーム内容であれば話は別だが。そこで結論。

冒険心は評価出来るが、今の時代新規の超大作を作り出すのは難しい。





[2009/09/05]
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