ブレスオブファイア3


対応機種プレイステーション
発売日1997/09/11
価格5800円
発売元カプコン

(c)1997 CAPCOM
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コマーシャルソングにソフィアの「街」を起用したCMが大量投下され、大変な話題となった人気シリーズ第三弾「ブレスオブファイア3」。
スーパーファミコンで2まで発売された人気RPGが、プラットフォームをプレイステーションに一新して送る話題作!

プレイステーションになったことで、フィールドをポリゴン、キャラクタをスプライトという新しい表現技法に挑戦している。
これは、大作RPGとしては、かなり珍しい試みといえる。
スクウェア「ゼノギアス」、ゲームアーツ「グランディア」等、他にも同じ路線でRPGを制作しているが、まだ発売までには漕ぎ着けていない。
それを考えると、本作はかなり早い段階から、ポリゴン+スプライトのRPGに挑戦している先駆者と言えないだろうか。

フィールドがポリゴンと言っても、視点変更を360度自由にグルグル回転できるようなものではない。
一応、視点を動かすことはできるが、ごく限られた範囲であり、使用用途としては、壁など物陰に隠れた部分を見るために使う程度のものになっている。
こうすることで、裏データを誤魔化すことが出来てデータ量を軽く出来、なおかつ、方角を見失わずに済む。

マップは、立体感を強調したいためか、クォータービュー、いわゆる斜め見下ろし型になっている。
セガ「ランドストーカー」、任天堂「スーパーマリオRPG」で採用されている形式だ。
この方式で気になるのが、プレイヤーの操作性なのだが、本作では「スーパーマリオRPG」と同様の、キーを入れた方にそのまま動くものとなっている。
だが、昔のRPGのような、マス目形式の移動システムになっているので、動きが少々硬い印象がある。

1つのマップはそんなに大きくないし、自由に視点を動かしたりも出来ない、ただSFC時代の見下ろし型のRPGをそのままポリゴン化した雰囲気で、イマイチ必然性が足りないとも言える。
イベントシーンで、カメラアングルを動かす演出を使って見せているものの、そのメリットを活かしきれているかというと、正直厳しい。
フィールドの造形も、ポリゴン数が厳しかったのか、マップタイルを敷き詰めるような作り方をしているせいで、まるでSLGのマップの中を歩かされてるような整然とした作りがちょっと物足りなさを感じさせる。

フィールドをクォータービューの3Dポリゴンにしたことで、視界がかなり狭まってしまったのも気になる。その割にエンカウント率が高めなのも辛い。
壁や建物等に完全に隠れてしまう物陰もかなり多くて、そういう場所にわざと宝箱などを隠していることもあり、それがストレスを助長している。
だが、それはわかっているのか、スタートボタンを押すことで、ポインタが出現し、周りを確認できる機能が用意されている。かなり割りきった機能だなと感じた。
どうせなら、これでカメラを引き状態に出来れば、とても便利だったのに、と思う。

まだ全体的に、ポリゴン+スプライトのRPGがどこまでやれるのかということを、手探りで模索しながら作っているような感じで、そんな状況の中、なんとか着地点を決めて着地したという感じだ。
そのため、洗練されてないような部分、粗がどうしても目立ってしまうが、この前衛的な挑戦は、それだけで高く評価したい所だ。

このように、3Dポリゴン化されたフィールド部分については、今ひとつ惜しい印象を受けてしまう。
が、一方で、キャラクタのスプライトの出来が、とてつもなくクオリティが高い。

さすが、格闘ゲームの長とも言うべきカプコン。とにかくキャラのパターン絵が膨大で、やりすぎなぐらい良く動く。
これは味方キャラだけでなく、敵キャラ1体1体にも言えることで、多少ボスのデザインがダサいのが気になるが、そこまで動くか!?というぐらいいきいきと動く。
ただ、よく動くのはバトルに入った時で、欲を言えばイベントシーンなどでも、これぐらいのパターンで演技して欲しかったかなと思う(気になるほどのことでもないのだが)。
またバトルでは、声優の掛け声が演出で入る。それ以外で喋ることはないが、地味に豪華だと感じさせる演出だ。

戦闘へは、画面が切り替わらず、フィールドでそのままバトルに突入する。
フィールド画面がただの背景になるのではなく、フィールドの当たり判定を計算した上で、敵味方の配置場所がきちんと決められる。
そのため、壁にめり込んだ状態で戦うなどといったことが起こらない(逆に物陰に隠れて全く見えないなんてことも起こるが)。
おそらくフィールドにエンカウントするポイントを決めておいて、そこを通過した時に確率でエンカウントするとか、そういう特殊な仕組みでやっているのかもしれないが、それにしても凄い。
フィールドの視点であるクォータービューとの親和性も非常に高く、この仕様にするために、敢えてクォータービューにしたのではないかとも思ってしまうほど。

これは全く本当に良く実現したものだ。

CD-ROMの読み込みを感じさせないために、このようにしたのだろうが、相当苦労したと思われる。それを考えると、よくぞ実現した!と拍手したくなる。
(同時に、戦闘終了時も、シークタイムを誤魔化すような演出を使っている。体感的な待ち時間を無くす努力を怠っていない)

魚釣り、共同体といった膨大なサブゲーム、サブイベントが特徴的なシリーズだが、第三作目にしてこれらの要素も完成形へと発展した。
それぞれの要素が、一つのゲームとして独立して売り出せるぐらい、きっちりと作りこまれている。
これまでは、飽くまでドラクエタイプのオーソドックスなRPGに、それらの要素を付け足したような感じだったが、本作ではそれぞれが本格的なミニゲームとして、きっちりと作りこまれている。

これだけ作りこまれていると、普通は本編に絡ませて無理強いして遊ばせようとするものだが、本作では遊びたい人が遊べばいいという立ち位置にバッサリと切り分けている点も好感度が高い。

それ以外にも、本編は本編で、ミニゲーム的なトリッキーな仕掛けがいくつも取り入れられており、長丁場のプレイをマンネリにさせないための配慮が数多く見られる。
スクウェア「ファイナルファンタジー7」では突拍子もないところでミニゲームが始まって興ざめすることが多かったが、本作ではわりかしミニゲームを上手に使いこなしているように感じた。

ただ、非常に残念だと感じたのは、どのミニゲームも、遊ぶまでの敷居が高い感じがした。
例えば釣りだが、ルアーと餌を用意して、釣りポイントで遊べるが、獲物にかけるアプローチがかなり増えた一方、良い意味での手軽さが薄れてしまった。
気合を入れて作りこんだことが仇となっているのだ。

また、共同体についても同様で、妖精に指示を出して町を発展させるのだが、このプロセスも、RPGを進める片手間にやるには、いかんせん重たすぎる内容になってしまっている。
町が発展せず詰まった場合にも、ヒントが教えられないので、どうすればよいのかというのがわからない。
共同体のサブゲームが本編であるのであれば、原因と対処法を真剣に考えるが、飽くまでやってもやらなくてもいいサブゲームだ。そこまで力を入れられない。

師匠に弟子入りするシステム、敵の技を「見て」盗むシステムといったものもある。
しかし、とにかくこれらも惜しい。
敵の技を盗むシステムはともかくとして、師匠に弟子入りするためには、入門試験をクリアしなければならないのだが、これがどれも比較的難しい。
ゲーム自体は、これらの要素を駆使しなくても、十分クリアできる難易度になっているので、そこまでキャラクターカスタマイズに拘る必要が無い。
自分は、これらの要素をまったく手を付けずにクリアしてしまった。

このように、面白そうなイベントや要素が山のように用意されているにもかかわらず、それを強要される内容ではないことに加え、試したり楽しむまでの敷居がとにかく高すぎる。
あくまでも、本編がRPGであって、それのサブゲームであるという認識で作っていないのか、取っ付きが悪いために、不幸なことに手を触れずに終えてしまう。

このシリーズは毎回このように勿体無いところがあって、凝って遊ぶ人にとっては凄く充実して楽しめたと感じる内容かもしれないが、そこに到達できなかった人にとっては良くある凡百のRPGとして終わってしまう。
特にこの本作においては、その傾向が顕著に現れているように感じる。

最後になるが、本編であるRPG部分について触れる。

相変わらずストーリーは、どこか間の抜けたシュールでコミカルな味のあるテキスト、空気感で占められている。そして、後半に向けての展開の盛り上がりは、このシリーズならではの安定感を見せる。
この辺は、本当に続編が出る度に、クオリティが一段と上がっていっているように感じる。

ストーリーの演出に、ムービーを使いたがるものだが、本作では一切それに頼っていない。これは高く評価したい。
多くのプレイステーションのRPGは、見せ場に入ると、自慢のプリレンダムービーで見せたがる。しかし、すべてリアルタイムで表現している。
オープニングムービーすら入れないというその潔さは、実に素晴らしい。

いっぽう、戦闘は相変わらず辛めだが、4人パーティから3人パーティになってしまったことで、戦略のバリエーションが狭まり、単調になってしまったように感じる。
陣形も種類が減り選ぶほどの数はない。特にワントップが強力過ぎる印象で、主人公などパワータイプのキャラを先頭に立たせて押しまくるだけで解決してしまう。
また、戦闘シーン自体のテンポが微妙に悪く、エフェクトが冗長なのも気になる。

全体的にゲームとしての作りが旧世代的で古臭い所も気になる。エンカウント率が高めだったり、セーブポイントが少なくて不親切。
パーティの入れ替えがワールドマップやキャンプ、セーブポイントなどでしか出来ないのにもかかわらず、ゲームを先に進めるためには特定のキャラが必須になっていること。不便。
また、前作ほどひどくはないが、パーティに特定のキャラクタが強制加入してくる点。レベル差があっても割りとなんとかなるようにはしているものの、育ってないキャラを強制的に入れられるのは不快になる。
メニュー画面のインターフェイスは刷新され、アイコンベースのものになったが、全体的に煩雑で改良の余地がある。テキストウィンドウの表示が遅く、切り替えも遅い、ウィンドウ自体が狭くて情報量が乏しいのは気になった(文字が巨大化したり動くなどの演出は新鮮で面白いが)。

この微妙な古さや物足りなさ、配慮の無さといった惜しい部分があるのも、「ブレスオブファイア」恒例のものになってしまっているのも悲しい。

しかし、プレイステーションにプラットフォームを移した三作目で、ようやく独自の作風が固まってきたように感じる。続編が出るのであれば、かなり期待していいだろうことは間違いない。
SFCの2までに関して言えば、色々新しいことをやっているものの、基本はドラクエタイプの王道RPGになってしまっており、どこかパッとしなかったものだった。
それを考えると、本作は、まだ勇み足で荒削りな部分は数多く感じられるものの、シリーズとしてみればものすごく成長したように思う。
(荒削りなシステムに関しては、プレイステーションに移ってから一発目ということで、多少大目に見るべきだろう)

見た目やシステムが大きく変わっていったことで、シリーズ物としては名前だけで後は別物という印象をもたれやすい(特にスクウェア「ファイナルファンタジー7」がそれで賛否両論を分けた)
この問題に関して、本作では、シリーズお決まりの要素を沢山散りばめたり、細かい手触り感を前作に準拠した作りとしたことで、「たしかにこれはブレスオブファイアだ!」と感じさせることに成功している。

そこで結論。

シリーズとしての基礎が固まった秀作。





[2016/05/10]
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