ドンキーコング リターンズ


対応機種Wii
発売日2010/12/09
価格5800円
発売元任天堂

(c)2010 Nintendo
戻る
Amazonリンク:ドンキーコング リターンズ

1994年冬に勃発した次世代機ゲーム戦争に対抗してリリースし記録的ヒットを飛ばした人気横スクロールアクション「スーパードンキーコング」の正当な新作がWiiで帰ってきた。
開発は「メトロイドプライム」の実績を持つレトロスタジオが担当。

SFC「スーパードンキーコング」がスーパーマリオをお手本に製作されたのに対し、本作も一年前発売されたWii「NewスーパーマリオブラザーズWii」を参考に開発された節がある。
何度も同じステージでつまずいていると、お手本プレイがみられるようになったり(クリアしてくれる機能は無い)、2人同時プレイを搭載するなど、酷似した部分が見られる。

フルポリゴンの3D描画でサイドビューの2Dアクションゲームなのは、「Newスーパーマリオブラザーズ」と同様だが、本作ではこの部分をもっと活用し、立体的なギミックを積極的に導入している。
例えば、ただの背景だと思っていた奥側の地形が実はステージの舞台の一つになっていたり、奥から手前に転がってくる岩をうまく避けながら進めたり、カメラ視点も状況に応じて引いたり寄ったりダイナミックな演出が目立つ。

元の作品のSFC「スーパードンキーコング」では、コンピュータグラフィックのデーターを2Dドットに落としこんでスプライト処理していたが、あの時代から15年以上経って、全てがポリゴンで表現された当時では考えられない夢のような作品が目の前に実現している。

ゲーム内容は、良くも悪くも当時の「スーパードンキーコング」をそのまま踏襲している。
基本的に非常に完成度が高いゲームなのだが、それを前提に、いくつか気になった点を最初に指摘する。

今作もプレイヤーキャラがドンキーとディディーの2人だが、1人で遊ぶ場合、従来作のようにキャラを切り替えることが出来ない。
ドンキーコングというキャラクタは、はっきりいってアクションゲームには合わないキャラである。きびきび動かないしどの動作に対しても動きが重い。これが難易度を引き上げている。
スーパーファミコン時代でも、多くのプレイヤーはどちらかというと、機敏なディディーの方を愛用していたのではないだろうか。

操作性が良くない。リモコン横持ちかヌンチャクで操作する(コマーシャルで松潤はヌンチャクスタイルだったが、自分は横アクションであれは遊びづらいと思い、リモコン横持ちでプレーした)。
「Newマリオ」と違い、これはこってりしたアクションゲームだと容易に想像がついたので、絶対にクラシックコントローラでも遊べるように作るべきだった。
対応できなかった理由としては、リモコンを振る操作があったからだ。これが曲者で、ローリング(体当たりで敵を攻撃)、床を叩く、息を吹く、この3つの動作をする際にリモコンを振る操作を割り振っている。
「Newマリオ」でもリモコンを傾けたり振ったりする操作があり、あまり評判が良くなかったが、本作ではそれらの操作をリモコンを振ることに固執する必要性に乏しく、はっきりいって最後まで好きになれなかった。
床を叩くのはSFC版からあったが、今作ではスイッチを起動したり、対応するオブジェクトの前で叩くとアイテムが出てきたりする。もう一つ新アクションに、息を吹きかけるというのがある。
これは十字キーの下を押して伏せた状態でリモコンを振ると出るのだが、ゲーム上の役割としては床を叩くのと大差ないし、アクションゲームとしてのテンポが悪くなるだけで、なにより、ドンキーコングというキャラクタに似つかわしくない。
全体的なゲームデザインが、過去のスーパードンキーコングをリスペクトしたような内容なので、その中に何とか新しい要素を入れたい気持ちはわかるが、上滑りを起こしているだけである。

任天堂がWiiで出すサイドビューアクションは、慣習的にWiiリモコンを振る操作を入れたがるが、もうちょっと考えて入れて欲しい。プラットフォーマーとしてWiiの機能を盛り込まないわけに行かない事情もあるだろうが、本作に限っては取ってつけたような感じ丸出しで、ゲームの出来を落としてるだけだ。
個人的には、この部分だけでゲームの評価が2段階は落ちた。

視界を確保するために、基本的に従来のサイドビューアクションに比べて引いた視点が多いせいか、スピード感や爽快感に乏しい。
マリオとは対照的に、オブジェクトが何を意味するかわかりづらく、通れると思っていた部分が実は壁だったり、乗った瞬間崩れてしまう足場だったということが良くある。
当たり判定やプレイヤーの挙動も洋ゲーらしい大雑把さで、理不尽にやられてしまうことが多い。しかしこれは最初にも書いたが、昔の「スーパードンキーコング」でもそんな感じのゲームだった。

起動時にメーカーロゴなどを一切出さず、すぐにタイトル画面を表示してすぐさまゲームが遊べる工夫は高く評価できる。しかし、エリアマップからステージへの切り替わりに入るロード時間は、CD媒体ででかいデータをやり取りしている以上避けられない部分で、ディスクアクセスで操作出来ない時間が長い。
デモ画面を表示させたり、先読みを駆使して体感的なロード時間を削ろうという努力は非常に伝わってくるのだが、それをもってしてもテンポの悪さは払拭出来ていなかった。SFC時代とは違い、フルポリゴンのデータを読み出しているのだから、ある程度は仕方ないっちゃ仕方ないのだが。

たいしたことではないが、音楽がおとなしい。「スーパードンキーコング」と言えば、見てるだけで遊びたくなってくる多彩なステージ構成と、豪華なBGMである。スーパーファミコン一作目のアレンジ曲が多く使われているが、なんか妙に上品で派手さがない。ただ、ゲームをプレイしながら聴いているときは物足りないとは感じなかったので、これはこれであっているとも言える。

さて、悪い部分ばかり書いてしまったが、気になるのはそれぐらいで、総合的に言えば、非常に丁寧に作られた作品で、かなり楽しめる。

サイドビューアクションとしては、歯ごたえのあるゲームバランスで、「Newスーパーマリオブラザーズ」が物足りなかった人でも、この「ドンキーコング」では、納得行くクオリティを味わえるだろう。
一つ一つのステージが豪華に作り込まれている割に、ボリュームもたっぷりでパッケージの裏には70ステージ以上と書かれている。

収集要素も勿論あり、ステージ内に隠されたパズルピースや、K,O,N,Gパネルを4つ全て集めることで、おまけモードのメニューが増えていったり、隠しステージへ行けるようになる。
今作は3D化されたことで、これまでより巧妙に隠されており、探し出すのが大変だ。そのためか、怪しい場所に反応するアイテムがお店で売り出されている。ちょっとやりすぎかもしれないが、お助けアイテムがあっても丁度良いほどのバランスだと思う。

さらに、クリアしたステージではタイムアタックモードが追加され、クリアまでの時間を図ることが出来る。予め登録されているベストタイムを越えると金メダルが手に入るが、これを抜くのが非常に難しい。タイムアタックをやらなくても隠しステージや隠しモードは出せる。
ただ、ゲーム上で与えられた完全クリアを目指すのであれば、かなり遊べるゲームになっていると言える。

全体的に難易度が高めだが、ライフ制を採用して、一発で死なないようにしたり、1UPしやすくしたり、ショップで救済アイテムを購入できるなど、あまりゲームが得意でない人にもクリアしてもらえるよう配慮がなされているところも好感が持てる。

このように、「ドンキーコング リターンズ」は、小さい子供からゲームおたくまでストイックに遊べる要素を充実させ、誰でも楽しめる懐の広さを持った良質なアクションゲームと言えよう。

最後になるが、何度か書いていると思うが、恐らくここ数年は3Dのサイドビューアクションが狙い目だと思う。このジャンルに力をいれているのは今や任天堂ぐらいで、他所のメーカーはこぞって3Dのゲームばかり目が行っている。
既に使い古されたジャンルという認識が大多数だろうが、それは逆で、これだけハッタリが効いて作り易いアクションゲームは他にない。勿論このゲームのように、丁寧に作りこんでというのが前提ではあるが。
数年前までは確かに出すだけで3Dでポリゴンなのに、なんでわざわざ横スクロールアクション?などと批判的に見られた時代もあったが、今は箱庭タイプのゲームでやれることをひと通りやりきって、この土壌で新しいことをやるほうが逆に難しい時期にきている。
その点、横スクロールアクションというのは、ルールががっちり定まっており、単純明快、一目見るだけで楽しみどころなどがはっきりわかる。ルールが分かりやすいということは、遊び手も覚えることが少なく入り込みやすいということだ。
うまく料理すればこのゲームのように、立体的で下手な3Dアクションゲームよりも臨場感溢れるものを作ることが出来てしまう。そこで結論。

他のメーカーも、もっと原点回帰してみませんか?これは力作!!迷わず遊べ。





[2010/12/13]
戻る

inserted by FC2 system