コナミの洋画ホラーを題材にしたジャンプアクションの看板タイトルである 悪魔城ドラキュラシリーズが、ついにPCエンジンに登場。 PCエンジン市場を意識したのか、アニメチックなビジュアルシーンが挿入されたり、 主人公のリヒターベルモンドにも声優を当てて喋らせるなど 今までドラキュラシリーズではタブーとされてきた要素をどんどん取り入れている。 これまでプレイヤーキャラクターやストーリーの描写は無いに等しかった。 しかし、本作ではステージがイベント仕立てになっていたり、 それまでのシビアな雰囲気が払拭され、当時は賛否両論だったのだが、 今になってみれば、本作は「キャッスルバニア」系統のルーツ的作品であり、 洋画ホラーから中世ファンタジーへ裾野を広げた革命的な位置に属するゲームといっても過言では無い。 それまでと違って間口も広がり、結果的にドラキュラシリーズの作風の幅を広げることは良い判断と言える。 ゲームバランスについても、かなり融通の利く操作が可能になったことによって 難易度もグッと下がっており、より手軽に遊べるようになった。 かといって極端に易しくなったわけではなく、ほどなく難しいといった感じで なかなか手応えのあるバランスになっている。それは絶妙と言っていい。 ただ、キャラの動きに関しては、PCエンジン特有の効果音のスカスカ感と合わせて ちょっと軽すぎる気もする。 PCエンジン極度の弱点である音関係は、効果音までは流石にフォロー出来てないが 音楽はCD-ROMの利点を生かしたトラック再生によってかなり豪快な音楽が流れる。 ドラキュラシリーズお馴染みの音楽も派手にアレンジが施されており、 逆に五月蠅いと感じるほどだ。 これは必聴の価値があるほどクオリティが高い。 セーブデータ周りの管理も当時としては画期的で まだアクションゲームのセーブの役割が途中経過を記録するだけだったのに対し これが現在のシステムデータ並の情報量を持っていて 例えば今まで聴いた音楽が聴けるサウンドテストの項目があったり 一度クリアしたステージを選べるステージセレクトの項目があるといった 今では当たり前だが当時としては非常に厚味のある内容になっていた。 このゲームを語るに当たって必ずネタにされてしまうのが、隠しキャラのマリアである。 その後PS版「月下の夜想曲」でも登場しているが、 隠しキャラ扱いということもあって、本主人公のリヒターが霞んでしまうほどの 異常な強さを誇っていて、マリアでプレイするとゲームバランスが崩壊してしまうほどの威力を持っている。 一番の問題点は、隠れキャラなのにあまり隠れてしまっていない点。 ちょっと探索すればすぐ見つかってしまう。幸いステージ後半で出てくるのだけが唯一の救い。 終盤は結構歯ごたえのある難易度になっているので、どうしてもクリア出来ない人がマリアを使えばよいのだが、 エンディングがマリア仕様なので、ちょっと煮え切らない物がある。 マリアは、まだ(確か)12歳くらいの女の子で、そんな子供よりも弱いリヒターに 当時は結構嘆かれた物だ。 プレイヤーキャラの違いで途中のビジュアルシーンが変わるのだが、 リヒターの場合、まだいくぶんかは硬派な雰囲気を出しているのだが、 マリア編の場合、PCエンジンなノリのギャルゲー的な雰囲気丸潰れなストーリーになってしまっていて 何もそこまでPCエンジンユーザーに媚びなくてもいいだろう!と思ったものだ。 ドラキュラシリーズとしてはちょっと致命的な欠点も抱えてるような気もするかもしれないが、 本筋のアクションステージの出来はかなり良く、バリエーション豊富なステージ構成と イベント仕立てのメリハリのある展開は何度遊んでも飽きない。 演出周りも秀逸で細かな部分まで凝っており、かつそれまでのドラキュラらしい物も さらっと入れていたりして、なかなかニクイ内容になっている。 キャッスルバニアと比べるとまだステージクリア型の構成になっているので 探索要素には乏しいが、ステージによっては ルート分岐があったりと、その後のPS1/SS版への路線変更をにおわせる部分もある。 個人的にはRPG要素を削って、このドラキュラXにちょっと探索要素を強める程度が丁度いいと思うのだが。 のちに本作をベースにアレンジが加えられたSFC版ドラキュラXXが発売されるのだが、 体裁は新作だが、実際はSFCのハード性能に合わせたアレンジ移植であり 音楽と操作性の悪さが非常に目立つ粗悪作品だった。