ドラゴンクエスト10 いにしえの竜の伝承 オンライン


対応機種Wii/Wii U
発売日2015/04/30
価格3800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2012-2015 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / SUGIYAMA KOBO
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Amazonリンク:ドラゴンクエスト10 いにしえの竜の伝承 オンライン(WiiU)

「ドラゴンクエスト10」拡張データディスクの第二弾。

2012年8月の運営開始から実に3年弱が経過した現在、とてもこなれた作りとなっていて、あらゆる部分が隙のない作りで非常に良く出来ている。
立ち上がりの頃は、ドラクエの慎重さが裏目に出た部分があったものの、Ver2.0以降は段階的に改善が進み、かなり完成度が高まっている。

LV上げが辛いイメージが強かったが、かなりのテコ入れが行われ、楽に遊べるようになった。
具体的には、ストーリーやクエストをクリアするごとに大量の経験値がもらえるようになったことや、
LV60までの獲得経験値が3倍となる「エンゼルスライム帽」が何もせずとも手に入るようになり、低レベル帯のLV上げが非常に楽になった(ただしVer3.0の新職業は非対応)。

他にも、元気チャージ220時間を消費するともらえる「メタル迷宮招待券」は、メタル系モンスターが大量出現して経験値大量ゲットできる大盤振る舞いの夢の様なエリア。
実装当初は、雑な対処とは思ったものの、実際元気チャージを使い切れずに余らしていることも珍しくなく、時間をかけられない人が短時間でレベルアップ出来る手段としては、これぐらい極端でもいいのかなとも感じた。

日替わり討伐とは別に週替り討伐(レンダーシア)が導入され、1週間に一度だけだが指定の討伐クエストをクリアすると15万弱の経験値が手に入る。
Ver3.0のタイミングで、週替り討伐が2つ受けられるようになり、さらに経験値が稼ぎやすくなっている。
また、日替わり討伐では、お金と経験値のどちらの報酬を受け取るか選択制だったが、これも両方もらえるように変更され旨味が増している。

魔法の迷宮で使う、メタル系コインなどの入手頻度が以前と比べかなり増えており、とにかく遊びやすくなっている。

以前は、フィールド上のモンスターと延々戦い続けるという遊び方が主流となっていたが、現在のドラクエ10では、そういった遊び方を極力排除する方向に舵を切っている。
ただし、全く否定してるわけではなく、日替わり討伐や転生モンスター狙いで、外に出かける遊びは今もきちんと残されている。

一方で、高レベル帯の装備品が高騰している問題はそのままだが、Ver2.0以降、遊べるコンテンツが大幅に増えたため、それらをこなしていけば経験値、お金、どちらも自然と貯まっていくようになっている。
そのため、以前ほどのマゾさは薄れており、気軽に楽しめるような内容になっている。

バトルバランスにも手が入れられ、どの職業でもそれなりに活躍できるようになり、武器スキルも強化され、少なくとも選んだ武器が弱くてがっかりということはほぼ解消されたと思う。

他に大きな変更点としては、メインシナリオ(クエスト)のボス戦で難易度選択制が導入された。
ボス戦の直前に、「つよい」「ふつう」「よわい」の3つの選択肢が出てその中から選択するようになっている。高い難易度のものを選択すると、経験値にボーナスが加えられる。
この対応は、相当考えぬいた末に決めたものと思われる。

Ver1.0時代のボスは、複数の職業のレベルを上げて、スキルを沢山取っていけば、サポート仲間を使って1人でも楽にクリアできる難易度だった。
対してVer2.0に入ると、全職業をほとんど育てきっていることを前提とした強さのボスばかりになり、クリアするための敷居がかなり高まっていた。
(極端な話、やりこんだプレイヤー4人集まっても、運が悪かったり戦略が間違っていると負けてしまうことがありえるほど、ボスが強かった)

Ver2.0の立ち位置は、Ver1.0の続きであり、このような辛めのボスバランスの調整は致し方ないという声もあると思われる。
かといって、安易に消化試合的なボスバトルにしてしまうのも、それはそれでやり込んでいる人からしてみればつまらない。
1人では倒せないボスモンスターを、他の人と協力しながら倒すというせっかくの出会いのきっかけを摘み取ってしまうことにもなる。

しかし、結果的に“一人で遊べるオンラインゲーム”というテーマの原点に立ち返った結果が、難易度選択制なのだろう。
プレイスタイルに合わせて選ぶというのは、安直な対応と思われるかもしれないが、一番理にかなっているように思う。

「よわい」を選んだから、楽に勝てる作りになっているかというと、そこまで簡単にしているわけでもなく、設定上強めのボスは手強い感じに作られている(Ver3.0の範囲では)。
いずれはレベル上限解放などで楽に勝てるようになるだろうが、あくまでも“良心的な難易度”という位置づけなのだと思う。

Ver2.0でのピラミッド以外の新しいコンテンツは主に2つ追加され、一つは勇者姫アンルシアと専用のダンジョンで冒険できる「王家の迷宮」。
もう一つは、仲間にしたモンスターを使って闘技場で戦う「モンスターバトルロード」。これはいわゆるPvPではなく、他プレイヤーのモンスターを借りて即席でパーティを組み、
対戦相手(CPU)を選んで、ここで使えるバッジなどの報酬集めとランクをあげるための経験値稼ぎを行うものだ。
どちらのコンテンツも、非常に手の込んだ巨大な作りとなっているため、詳細な説明はここでは省く。

それ以外だと、「強戦士の書」という機能が追加され、強ボスや試練の門へのアクセスをその場で出来るようにしている(専用のインスタンスダンジョンへ飛ぶ)。
各町・城の出入口に馬車が配置され、村や拠点へ100G支払ってワープできるようになるなど、主に利便性の強化がメイン。

Ver3.0の拡張内容は、Ver2.0の時のものをほとんど踏襲している。
新ストーリーと新職業。カジノに「すごろく」を追加(Ver3.0を入れていないと遊べない)。

新しい物語は、Ver2.0と同じく段階的に続きが追加されるようになる。
Ver3.0時点では、ボリュームは結構なものではあるが、まだ序章といったところで、物足りなさは否めない。
Ver2.0の時は、レンダーシア大陸全土が一気に開放され、その広い大陸を巡りながらストーリーを追っていき、ラストダンジョンらしきところまであって、なかなか豪華でボリューム感があった。
しかしVer3.0では、新大陸といった目玉はなく、主な舞台はVer1.0のアストルティア五大陸で、4つのダンジョンとレンダーシアで一つの村が追加された程度。新キャラも少なくほとんど既存キャラでストーリーが展開する。
今後のアップデートで、Ver3.0の目玉となる世界が開放される予定なのだろうが、追加ディスクまで出して大々的にやっておいて、これはいくらなんでも寂しい。
シナリオ構成上、あるいは今後の話題性などを考慮して、後出しを決めたのだろうが、なんだかスケールダウンしたな...という悪い印象を持ってしまう。

また、ストーリーはVer2.0クリア後の続き物となっているため、Ver3.0のストーリーをいきなり楽しむことは出来ない。

多くの謎を残しながら続いてきたドラクエ10のストーリーだが、Ver3.0シリーズで一応の結末を見せるのか、楽しみな所だ。
シナリオ周りはだいぶこなれてきた印象で、演出や筋書きには安定感があるが、その分意外性は薄れた気がした。

新職業「踊り子」だが、Ver2.0のときは「魔物使い」が追加され、モンスターを仲間にするという新しい仕掛けが実装された。
それと比べると、大掛かりな仕掛けはなく、強烈な個性というものは現時点では感じられない。
職業スキルが2つあると言われても、既存プレイヤーは面倒臭いことをしたと思うぐらいで、二刀流も既にバトルマスターで実現しているため驚きはない。

他には「達人のオーブ」という新しい強化システムが追加された。
これは、Ver1.0をクリアしていると利用できるようになる。
プレイヤーに入る経験値と同等の経験値が、そのままこの達人のオーブに入っていきレベルアップして成長する。
ルールが複雑なために詳しい説明は省くが、敵が落とす宝珠を鑑定して、それを達人のオーブにセットすることで効果を発揮する。
オーブのレベルを上げていると、セットした宝珠の効果を高めることが出来るスキルポイントが手に入るため、宝珠の恩恵をより強く得られるようになる、という流れだ。
(実際はもっと複雑で、大幅に端折って説明している)

ゲームバランスを壊さないための措置なのだと思うが、ランダム要素が強く、宝珠の効果がどれも微妙なものが多い。
そのうち、仕組みが解明されて、定石のようなものが出来上がってくるのかもしれないが、労力の割に微妙で、あまり凝って遊びたいと思わない。
なかなか、難しいところだとは思うが、期待していたものとは違っていたため、残念という印象は否めない。

そんなわけで、Ver3.0単体では、今後の展開に不安を残す作りというのが実直な感想だった。
ただ、細かいUIの改善など、マメな修正対応は素晴らしいので、そこまで悲観しているわけではない。
Ver3.0でいきなり全部出してくるのではなく、新職業や新コンテンツなど、隠し玉をきちっと用意しているはずなので、今後に期待したい所だ。

最後に、現状のドラクエ10についての不満点を書いて終わる。

長く運営をしたことで、各要素がこなれてきて、とても機能的になってきた反面、ゲームとしてはやや淡白になってしまった印象がある。
例えば、今パーティを組んで何をやるかというと、主にコインボスや試練の門、あとはピラミッドである。
クエストやシナリオは、一人で遊ぶことが出来るように調整が進められているため、せっかく新エリアが追加されても、誰かとそこへ行くという機会はほとんどない。
追加されるエリアはどれも作りが凝っていて造形も面白いのだが、外のフィールドで遊ぶことというのが全然ないため、非常にもったいなく感じる。

ピラミッドは一応外の世界(パブリックエリア)ではあるが、結局その中にあるバトルフィールドにアクセスするために行っているだけなので、やっていることは1パーティ4人での専用バトルフィールドでの戦闘である。
コインボス、試練の門は、1パーティ4人で専用のインスタンスエリアへ飛んで行くのだが、今パーティを組んで遊ぶのがほとんどこればかりになっている。
わざわざ現地まで移動させる時代が良かったとは決して言わないが、ワープしていつもの暗がりの迷宮で、見慣れた敵と戦って...というのが、それだけ成熟された世界ともとれるが、風情がなくてつまらない。

リーネが真のラスボスと揶揄されるように、ドラクエ10はいつの間にか、アクセサリー合成が大きな存在感を持つようになってしまった。
コインボスを倒して手に入るレアアクセサリを、理論値(最高の合成結果)を目指して延々と合成するというものだ。
合成時の値段を下げたり、気に入らない効果を消すといった機能拡充が行われ、とうとうVer3.0では合成屋レベルが導入されるほどになった。
これまで理論値を作り出すには完全に運頼みだったものが、何度も繰り返せばいつか必ず最強のレアアクセサリを作れるようになるという仕組みだ。

これに関連したものとして、王家の迷宮のシステムにやや不満がある。
勇者姫アンルシアとの修行を目的とした専用ダンジョン(インスタンスダンジョン)で、プレイヤー一人とNPCアンルシア、お供の仲間モンスターを一匹だけ連れていける。
専用フィールドが作られる豪華さで、ドラクエ2のフィールドBGMが流れるところには思わず感動してしまう。
入場権として“勇気の輝石”が3つ必要で、これは一週間に一度15個ずつ補充される。最大60個までストックできる。
ここで手に入る「輝石のベルト」(アクセサリー)を消費することで、輝石を1個増やすことも出来る。
独自仕様の作りで、色々凝っていて面白いのだが、アンルシアとの修行が目的の割に、ちょっとやり込むとすぐアンルシアのレベルが最高に達してしまう。
そうなると、ここで手に入るアイテムの報酬目的でプレイすることになるのだが、凝った作りなんだけど繰り返し遊ぶには辛いという微妙な水準のゲームで、非常に苦しい。

アンルシアのレベルがカンストした辺りからが退屈になってくるポイントで、輝石があふれるのがもったいないから仕方なく潜るという状態になってしまう。
途中のアップデートで、一度の入場で輝石をさらに3つ使ってその分アイテム報酬を取りやすくする措置が取られたが、それでもまだダルい。

何故かと言うと、抜本的な部分が解決していないからだ。
ここで手に入る「輝石のベルト」という腰アクセサリ。これは、王家の迷宮の中ではレアアイテムとして扱われているが、実際は実用価値の無いものばかりである。
なぜなら「輝石のベルト」の性能が完全にランダムなので、価値のあるものがなかなか出てくれない。
「輝石のベルト」の装備効果を別の「輝石のベルト」に移すといった、融通の効くカスタマイズ性をリーネの合成屋のように付けてくれれば、それだけでもかなりやりがいの出るものになるのだが。

スキルポイントの割り振りの管理が煩雑である。
職業レベルごとに手に入るスキルポイントを武器スキル、職業スキルに割り振るんだけど、現仕様だととてもじゃないが計画をねりにくい。
急ごしらえで「振り直しの宝珠」を用意したものの、1万ゴールドも払わなければならない。
(高額設定しすぎたのを反省したのか後に追加された「全振り直しの宝珠」は3万ゴールドで買えるようにした)
Ver2.0では、スキルポイント不足と融通の効かない仕様をなんとかしたかったのか、マスタースキルポイントを用意し、専用NPCの場所へ行く必要はあるが無料で好きなだけやり直しが出来るようになった。
しかしこれも、スキル上限100だったものが、150まで拡大されたため、やはり頭を悩ませる状態に陥っている。
問題となるのは武器スキルで、装備できる職業でしかポイントを割り振ることが出来ないので、武器スキルを強化したいけど、職業スキルに割り振っちゃってどうやっても足りない!!と言う困ったことになりがちである。
そこで計画的に割り振ろうと思うと、もう何かのパズルゲームでもやっているかのような有り様で、職業が増え、スキル上限も増えたことで、余計複雑化してしまっている。

最後の不満になるが、Ver2.0以降顕著になってきたが、過去作の有名BGMに頼り過ぎな気が?
適当に借りてきて流しているのではなく、愛のある使い方をしているのは伝わってくる。
それにしても一応ナンバリング作品であるドラクエ10で、ここまで過去作のBGMを引用するのはどうか?
オンラインRPGだから、ファン向けにこれぐらいのサービスをするべきというのもわかる。
ちょっとどうかと感じた使い方としては、Ver2.0でDQ5の通常戦闘BGMを使っている所。関連性がないし脈絡が無い。
Ver3.0では、DQ7のボス戦のBGMを引用しているが、これも何を意図して使っているのかがわからない。
やはり贅沢かもしれないが新規の音楽をもう少し聴きたい。あまりに過去作の音楽を多用されると逆に冷めるのだ。

まとめに入る。

このVer3.0までが、おそらく初期に想定していた完成像なのだと思う。
Ver1.0のディレクター、藤澤仁がドラクエらしさを重視して、かなり作りなおしたと述べている。

入念に準備したはずの割には、Ver1.0初期は、恐ろしく遊べるものが少なく、本当に大丈夫なのかと心配になるぐらいの出来だったが、壊して作りなおしたというのなら納得がいく。

Ver1.0時代は、今思い返すと褒められたものではないが、外の世界(パブリックエリア)に比重を置いた古臭い作りというのは、あながち間違いでもなかったのかと感じる。
ああいう時代があってこそ、今のMMO寄りのデザインが、受け入れられたのかもしれない。
いきなり今のようなインスタンスメインの内容だと、拒絶反応を起こされていた可能性はある。

Ver3.0に至るまでの片鱗を見て、そんなことを感じた。

Ver2.0と異なり、Ver3.0は、あらかた派手目の要素が追加された後での拡張ディスクとしてリリースされた。
現段階では、これだ!といえるほど目玉といえる追加要素がなく、今後に展開を心配してしまうほどの状態であるが、佳境を迎えるストーリーや未発表のコンテンツなどのサプライズを期待したい。
そこで結論。

ドラクエ10らしい進化を遂げた安定期に入ったが、同時に陰りも感じる作品。





[2015/05/07]
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