ドラゴンクエスト8 空と海と大地と呪われし姫君


対応機種プレイステーション2
発売日2004/11/27
価格8800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2004 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / LEVEL-5
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前作の7から実に4年。対応ハードをプレイステーション2にうつし
若手精鋭集団LEVEL-5を開発に迎え、新生ドラゴンクエストがやってきた。

ドラクエ7では、マップが3Dになったものの
PSのハードウェア性能上、「グランディア」と同じカメラ回転の出来る見下ろし型のフィールドで
しかしドラゴンクエストの色を失わないようにと、マップ上の描写が薄っぺらで
造形が今ひとつ面白くなかった。

PS2での開発となる今回は、惜しげもなくハードウェアの性能を限界まで使い尽くし
等身大の3Dフィールドを構築している。
散々メディアで「やっとやりたいことが出来た」(堀井談)と嬉しそうに語るところを見る限り
これが理想型で相当やってみたかったことらしく、実際凄く面白くできあがっている。

このタイプのRPGは幾つか発売されているものの、質、量ともに満足出来る完成度のゲームに
出会うことはなかった。
また、3D独特の煩わしさを醸し出してしまったケースも珍しくなく、
そういう事情から、この手のRPGを制作するのは、かなり大変なはずで
しかし、このドラクエ8は、名前負けせずにしっかり良く出来ている。

キャラクター中心に、しかも同じ目線の高さにカメラ位置を置くタイプのものは
臨場感や迫力を出すのに最も適しているが、デメリットの方が多く
全体像が把握し辛い、カメラ位置が近すぎてカメラ操作が面倒、
画面の変化が目まぐるしくついて行くのが大変など、結構敷居が高かったりする。
(下手をするとドゥームやFPS物のように一人称視点の方が遊びやすい場合がある)

本作では、マップのオブジェクトのルール付けを分かりやすくしたことによって
特有のわずらわしさが無く、非常に快適に遊ぶことが出来る。
いちいち、フィールドの端まで行かないと、物陰の影の部分まで歩かないと
構造が分からない、といった遊びにくさは無く、とにかく分かりやすい。
開始直後は、従来作に比べオブジェクトの豊富さに戸惑うのだが、
それもちょっとやればすぐに慣れ、ドラクエらしさを感じ取ることが出来る。

それに合わせるかのように、歩ける場所歩けない場所の区切りなどマップの広さが絶妙で、
探索がうざったいと感じることが無く、楽しく動くことが出来る。

カメラ操作に関してもFF11頃から使われるようになったR3スティックに操作を当てていて
直感的に動かすことが出来て、カメラの挙動にクセもなく素早く動いてくれる。

マップも、地図が用意されていて、ダンジョンマップに関しては地図と合わせて見ながら進めば
まず迷うことはない。
地図を見なくても、迷わないように(迷わせないように)作ってあるが、徹底して親切であり、好感が持てる。
(ちなみに自分は、あまり地図を見ないように頭の中で全体像を思い浮かべるようにして進んだ)

グラフィックは、特にマップ造形に関しては、モデリングが今ひとつな印象を持つかもしれない。
しかし、変に描き込みすぎてマップ構造がパッと見ただけでは分からないという状況にさせないために
ある程度バッサリ削ぎ込んだ感覚がある。
その代わり、キャラクター周りのモデリングやテクスチャーに力が入っており、
360度どこから見ても、一点の落ち度もない鳥山絵で描かれており、その技術の進歩に驚くばかり。
キャラだけではない、戦闘時の一体一体の敵キャラ全てに関しても、そのことは言える。
このクオリティーの高さと分量を両立させるとは、凄いとしか言いようがない。

ストーリーに関しては、これまでのドラクエとは違い、
アニメというか、飛び出す絵本のようなものを見ている感覚で描かれている。
フルポリゴンのフィールドマップを生かした、派手なカメラワークで見せていく。
今までこのシリーズは、テキストの良さで勝負していた向きがあったために、
この傾向には違和感を覚えるかもしれない。
想像力にまかせていた部分も丹念に描かれているため、
ドラクエにしては、という但し書きを付けると、押しつけがましさすら感じる可能性がある。
だが、そこにかまけて出来を悪くしていた面もあったように思う。
このようにきっちり作られた箱庭マップがあって、綺麗なキャラもいると
どうしても、見せたいという欲求に負けて、プレイヤー置いてきぼりな演出をやってしまうのだが、
本作では、飽くまでプレイヤー=主人公の図式を忘れておらず、
それでいて、インパクトの強い心に残るイベント演出で全般作られており、しらけることがない。

また、本来RPGというゲームは、剣で敵を刺したりという残虐性の強いものだが、
DQ8では、血が出たり殴り合ったりという暴力的なシーンは一切無く、
ディズニー映画のような華やかさで溢れている。
効果音の使い方も上手で、一片の嫌らしさも無い。
人を選ばない、誰でも気兼ねなく遊べるような、細部まで気を使った描写法には好感を持てる。

それから、大体ドラクエ5か6辺りから堀井雄二の脚本は、
台詞周りのジジイ臭さや引き出しを出し切った感じを覚えていたのだが、
どうやらこの人の力量を見誤っていたようだ。
全体的に台詞が若々しく、目新しい描かれ方をしたキャラが目立ち、素直に楽しむことが出来た。
特に仲間に話しかけるシステムは、(前作に比べ)主要キャラもストーリーも絞られているため
会話のバリエーションも驚くほど豊富で、面白いこと意外なことを喋ってくれて、非常に面白い。

戦闘システムも、転職システムを廃し、無駄な要素をバッサリ切り捨てている。
このことによって、よりドラクエの元々完成されていた戦闘の面白さが引き立ってきたように思う。
それでいて、レベルアップ時にもらえるスキルポイントを振り分ける、という自由度も見せる。
特技、呪文の種類もかなり絞られていて、使用用途のはっきりしない、使いどころがまったくないような
ものもグッと減り、とても洗練されている。

全体的にチューニングは、広大なマップをぞうきんがけしていることが前提のバランスで
道沿いにさっさと進んでいると、経験値が想定レベルに足りず苦労する。
露骨に足止めをかけられるような箇所も見受けられ、寄り道して欲しいという意図なのだと思うが、
寄り道はしたいときにするから楽しいのであって、したくもないのに寄り道させられるのは
ちょっと苦痛に思う。
たしかに、フィールドマップは広い代わりに、脇道にはふんだんに宝箱が置いてあったりするが、
エンカウント率が低めとはいえ、一回の戦闘は比較的長めなので、
積極的にうろつきまわるというのは負担が大きい気もする。
また、この手のゲームは、かえって道を逸れるといいことがないことの方が多く
他のゲームで学習済みの人は道を外れるというのに抵抗感すら覚えるかもしれない。

ちらっと書いたが、今回は戦闘での攻撃演出がちょっと冗長気味で、
一回の戦闘がそのせいで長くなりやすい。
無駄に長いわけでもないが、短くもない。
また、敵パーティの調整が極端で、少ない時と多い時の差が激しすぎる気もする。
状況によっては、パーティが半壊するぐらいの数が一気に出る時もある。

また、戦闘システムがここまで洗練されているのに、「ためる」という
今ひとつ使用頻度の少ない、使い勝手の悪いコマンドがあるのが妙に気になった。

PS版ドラクエ4で登場した、プレイ情報をカウントし評価してくれる
戦績システムもパワーアップして、称号以外にプレイスタイルにコメントを入れてくれたり
モンスター図鑑などのデータ情報の記録してくれる機能も充実しており、なかなか凝っている。

錬金釜という、アイテムを合成する要素も初登場したが、
合成のレシピ情報が、そこかしこに置いてあって、従来の合成のように
取って付けたような煩雑な物では無く、自然に、かつ、意識させるように作ってあり、
遊びやすい。
(例えば、呪われた装備を呪いを中和する素材と合成して呪いを解くというような具合)

若干ローディングが遅い箇所もあるが、PS2というハードウェアを考えれば
この上なく快適である。

音楽は、テンポのよいものが少なく、BGMに徹しているといえば聞こえはいいが、
もう一つバリエーション豊富な構成にして欲しいとも思う。
とはいえ、全体的に低音部の音質が良く、特にフィールドの楽曲はなかなかいい雰囲気を出していると思う。

非常に丁寧に作られており、実際遊んでみると見た目(スタンス)の違いにはほとんど気にならず
ドラクエとしての違和感も感じることなく没入出来るはず。
シリーズファンを喜ばせる仕掛けも心得ており、なかなかニクイ。
相変わらず、ストレスを感じずに遊べる良く出来た作品である。
なにより、ここまで広大な3D世界を、濃密に作り上げたというだけでも凄いし、
それだけで遊んでみる価値はある。
特に、開発元が変わったからか、作風が従来よりグッと若くなり、
若さ故の新鮮さが漂っている。

表現法が変わろうがドラクエはドラクエ。とても丁寧に作られた傑作。





[2005/02/02]
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