ドラゴンクエストモンスターズ


ドラクエ5のモンスター仲間システムに特化させた意欲作。

GBで出してくる辺り、当時流行りだしていたポケモンの後追いではあるのだが、
ドラクエは鳥山明が描く魅力的なモンスターと、
元々完成されているバトルシステムのおかげで、ただのパクリでは終わらず、かなり完成度の高いゲームになっている。
寧ろ、ポケモンの新しい世界観に入り込めない世代の人にとっては、こちらの方が入り込みやすいはず。

当時最新作であった本流ドラクエの6は、
育成方法がFFに近くなり、それぞれの職業の熟練度を上げることで様々な技を覚えることが出来た。
だが、これは取捨選択の要素が無く一度覚えれば使い放題なので、キャラ固有の個性を打ち消すという欠点も生み出していた。
それに、初期の時点でそもそも完成されていたシステムに手を入れること自体疑問を感じずにはいられなかったし。

しかし、本作では、その6の要素をも上手く咀嚼して昇華している。
一度に使える特技は僅か6つ。
それ以上の特技を覚醒すると今まで覚えた特技を忘れて覚えさせるか選択しなくてはならない。
これは厳しいシステムに思えるが、配合して次の世代に受け継がせる際に、
忘れた特技も含め、一度覚醒した特技は潜在能力として残るために擬似的に万能なキャラも作ることが可能。

配合の話が出たが、これは本作に於ける成長過程の肝となる要素となっている。
最初に仲間にした時点では、ある程度までLVが上がると成長が止まってしまう(それ以上レベルが上がらなくなる)
だが配合することによって、親の能力(パラメータ、特技)を受け継ぎ
更なる次元まで育成が可能になるのだ。
(因みに配合してしまったモンスターは、仲間から外れてしまう)
このように、強いモンスター同士掛け合わせることを繰り返して成長させていくのだが、これがとんでもなく面白い。
見た目はキリキリバッタなのに、やたらパラメータ値が高く、強力な特技を使ってくる…なんていうモンスターも作ることが出来る。
とにかく育成の自由度が半端じゃなく高いのだ。

ただ何でもかんでも配合すれば強くなると言うわけでもない。
序盤はそれでもそれなりに強くなるのだが、
具体的な成長の中身についてはドラクエ3の転職システムを想像して頂きたい。
特技は潜在しているものも含め丸々受け継ぐが、パラメータは親の値の半分になって生まれてくる。
そして、LVアップ時のパラメータの伸びは、モンスターの種類(3で言えば職業)に準ずる。
そのため掛け合わせて生まれたモンスターが序盤に出てくるようなスライムだったり弱いモンスターの場合
パラメータの伸びが悪くなる。だから、その種族で強いモンスターを作るのは難しい。

今回は人間が戦いに参加することは出来ない。
モンスター3匹を連れ歩き、基本的にはこちらの指定した作戦を元にAIが勝手に戦ってくれる。
野生というパラメータがあり、要するにプレイヤーになついているかなついていないかなのだが、
使い込んでいるモンスターはこちらの意図した通りに動いてくれるが、
野生のパラメータが高いモンスターは思い通りに動いてくれず、非常に苦労する。

ストーリーは無いに等しく、
一つの町を拠点に、自動生成式のダンジョンを順々にクリアしていく内容になっている。
新たなダンジョンへ進むには格闘場で戦って自分のクラスを上げる必要がある。
ダンジョンの奥地にはボスがいたり、格闘場ではプレイヤーと同じモンスター使いと
戦って勝利しなければならなかったりと、腕試しの出来る場がきちんと用意されており
ただダラダラとキャラ育成させるものではなく、それなりの目的もちゃんと用意されている。
ゲームを進めることで発生するサブイベントも充実しており、
旧来のドラクエでお馴染みの探索する楽しさも忘れずに入れられている。

自動生成式のダンジョンは終始同じ地形ばかりなので、退屈なのだが、
バランス取りがしっかりとなされていてダレることはない。
ファーストプレイでは中盤辺りから四苦八苦するFC時代のDQを思い起こさせるシビアなバランスなのだが
ゲーム自体に慣れて上手くなってくると、簡単に越せるようになってくる絶妙さも持ち合わせている。

ポケモンのように対戦をしたり、モンスターを交換したりといった要素も入っている。
対戦はポケモンほど駆け引きは深くないが、3vs3ということもあって、
その点で、補っている点は評価出来る。
結局、最終的にはマダンテの撃ち合いになってしまったのが残念ではあるが、
プレイヤー側でルールを定めれば面白い試合が出来るはずだ。
何より、ドラクエ世代同士ならば、これほど盛り上がる対戦ゲームはない。
自分が手塩にかけて育てたキャラで対戦出来るのはこのゲームが初めてなのだから。

主に戦闘時の処理がもたつく印象を受けたり、移動時の歩行速度がやたら遅いなど
インターフェースでの不満はあるものの、それを打ち消すほど革新的なゲームシステムは魅力的である。
しかし、配合時にモンスターの性別をも考慮しなくてはならないのはちょっとガチガチとした印象を受ける。
このせいで、新たな子を生む時点で、性別を考えたかなり計画的な育成が要求されてしまうからだ。
非常に残念なのがゲーム後半になってくると、ダンジョンがやたら長く、
その上、気軽にセーブして辞めることがなかなか出来ないため、携帯機としては遊び辛い仕様になっている点。

本作はこの上ないほどゲーム部分で勝負してきているのに、
多くのドラクエフリークは、このゲームを素通りしているのだ。
それでも一作目は100万本を突破しかなりロングヒットを飛ばしたのではあるが、
買ったのはポケモン世代の小学生が多い印象を受ける。
これは、多くのドラクエプレイヤーが、堀井雄二の描く世界観であるとかストーリーのような副次的要素が何よりの魅力であり、
ドラクエにゲームを求めていないという理不尽な結論を叩き出す。

これは、かつてFC時代のロト3部作辺りのゲーム寄りの路線を突き詰めた画期的なゲームである。
もし、4以降のドラクエに違和感を感じるのならば、これを遊んでみるといいかもしれない。
やや煩雑さは漂うが、あの頃の雰囲気を感じ取れるはずである。




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