ドラゴンクエストモンスターズ ジョーカー3


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2016/03/24
価格5250円
発売元スクウェアエニックス

(c)2016 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / SUGIYAMA KOBO
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実に6年ぶりとなる「モンスターズ」シリーズ久々の完全新作。
とはいえ、この間、新作同等の過去作のリメイクが2年おきに2本発売されているので、実質的にはブランク期間は無いと言っていい。

モンスターをスカウトして仲間に引き入れ、配合を繰り返し、より強力なモンスターを育てていくという、大元のゲームシステムは大体前作の時点で完成型に達しているので、大きな変化はない。
よって、安定して面白いし期待した通りの内容になっていると言っていいだろう。勿論そこで終わっておらず、より遊びやすく楽しめるような改良が施されている。

例えば、これまでは配合時に、モンスターの性別を合わせる必要があったが、今作では思い切ってこの性別の要素を撤廃。
オスならメス、メスならオス、というシリーズ通しての決まり事がとうとうなくなった。

シリーズ一作目のGBの「テリーのワンダーランド」の時の配合は、魔物同士が結婚して子供を生み、その子供が両親の能力を引き継ぐという設定に基づいたものだった。
しかし、シリーズ化されて以降、この性別のシステムが煩わしくなってきて、アイテムでエンカウントする敵の性別をある程度操作できるようになったり、オスとメスのどちらにも使える両生類といったものも出てきたりするようになった。
段々、この配合の意味合いも曖昧になってきて、性別の設定だけがどんどん形骸化してきていた。次第にただ、ゲーム的に面倒なルールになりだしていた。
慣習化されていたシリーズのお決まり事を、根本からバッサリ切り捨てるというのはなかなかやれないことである。地味な所だが評価したい。

性別を気にする必要がなくなったので、これまで以上に配合がやりやすく、余計なことを気にする必要がなくなり遊びやすくなっている。
ただ、配合のシステムは、特に「ジョーカー」以降、複雑化の一途をたどっているため、遊びやすくなったとはいえ、これでもまだ一見さんには厳しいかなと思う。

他にも、このシリーズのレビューでは毎回書いている気がするが、バトルシステムについてもそれは言えて、「ジョーカー2 プロフェッショナル」からは、はっきりと対人戦に特化した作りになったため、独特のバトルデザインに戸惑うところが多い。
(連携や相殺というシステム、特技の種類の豊富さなど)

一方、今作最大のウリが、仲間になる全てのモンスターに乗れること。専用のモンスターだけではないところが、見えない苦労を強いられたと思われる。この辺は個人的には凄く良く頑張ったと褒め讃えたい。
ゲームを進めると、水系モンスターで水中に潜ることが出来るようになったり、空を飛んでいるモンスターに乗って、空を駆けまわることが出来る。
まるでアクションゲームでもやっているのかと錯覚するぐらい、色々自由に飛び回れる。
実際、サブイベントに、ほぼほとんどアクションゲームのようなミニゲームが2種類ある。

それに合わせる形で、フィールドマップも起伏があって入り組んだ高低差のある作りになっており、探索が面白い。
しかし、3DSの画面サイズだと、これだけ高低差のあるマップを見て回るのは少々しんどかったのが本音だ。
カメラ操作もやりづらく、こちらで操作しなくてもそれなりにいい位置に動いてくれるものの、下画面に表示される全体マップでも、高低差に対応してない表示なので、どこに何があるのかがわかりづらく辛かった。

もう一つの新要素として、リアクターというナビゲーション機能がある。
これは任天堂「メトロイドプライム」のバイザー機能と同じもので、隠し通路などを見つけたり、オブジェクトの解説、敵シンボルの強さなどが知ることが出来る。

リアクターで発見しなければ開けられないステルスボックスという宝箱もある(近づくと知らせてくれる)。また、戦う前から敵シンボルの強さが調べられるので便利。

リアクター機能によって、隠れた宝箱を探すなどの探索要素を充実させていて、一度クリアしたエリアに戻ってくる機会を作っていて、ゲーム全体の流れがとても良い感じになっている。
それだけに、リアクター機能の拡張が、スカウトQを進めないといけないのは勿体つけ過ぎかなと思う。メインストーリー進行と同時に拡張でちょうど良いぐらいだ。
(まあ、スカウトQがそんなに難しいわけではないが、ゲームを遊ぶ上で半ば必須機能の割にという話だ)

欠点というか不満点について触れる。

やはり、抜本的な進化のないマンネリ化したゲームシステム。これはこれで完成されたゲームなので、下手にいじくりまわす必要は無いのだが、それにしたって核となる部分は違いがなくやってることが同じゲーム内容。
毎回、収録モンスターが変わったり、全く一緒というわけではなく、ちゃんと細かい部分は変えてきているのだけども、所詮前作「ジョーカー2」から継ぎ足し程度なのは否めない。これは、これ以上進化の必要がないとも言えるが。

加えて、グラフィックやサウンド、インターフェイスといった視覚的な部分も、大きな変化がない。
新作を出す度に改善、改修をしているのはわかるのだが、3DSのゲームならもうちょっと頑張れないかなと思う水準である。
特に戦闘時のエフェクトがヘボい。特にSEは、ずっとDSの「ジョーカー」時代からの使い回しなので、3DSのゲームにしてはチープに感じられる。この辺りは倍速機能の快適さを優先したのもあるのだろうが。
BGMも、戦闘時の音楽はアレンジを変えるだけでもいいので、新しくして欲しい。新作なのに新作感が無い、薄いというのはこの辺に理由がある気がする。

今回は、完全新作とは言うものの、内容的には2年前に出した「イルとルカの不思議なふしぎな鍵」をベースにした作りで、それと比べると目新しさはあまりない。

後は細かいところだと、ストーリーが仰々しい割にちょっと(特に終盤の展開が)期待はずれだった。期待はずれというより変な方向に行っているというか、うまく書けないが微妙な違和感があった。
終盤になると、やたらめったらボス戦が多く間延びしているのも気になった。そのボスもしっかり育ててないと強くてキツイ。

それと、これはゲームの構造的にどうしようもないことなのだが、序盤はやれることが少なく、面白くなってくるのが自由度が広がるゲーム後半以降。
毎回毎回、そこまでにたどり着くまでが苦痛というか、シリーズを何作もやっていると、流れが読めてしまうのでつまらないのだ。

後半は色々と厳しいことを書いてしまったが、まとめに入る。

仲間にしたモンスターに乗れるということをテーマに、フィールドマップでの遊びを大幅に増やしたことで、間接的にではあるが一応しっかりとした新しいプレイ感覚を提供できている。
バトルでも、モンスターに乗ることで乗ったモンスターの能力が引き上げられる要素が出来たことで、新しい駆け引きが生まれた。
やはりドラクエ。ごちゃごちゃ言ってしまったが、総合的に見るとクオリティは高い。特にモンスターに乗るというテーマだけで、ここまでアイディアをふくらませているのは凄いことだろう。

このシリーズは一度、「ジョーカー」で大幅なリニューアルを行った。それ以前の「モンスターズ」の路線では2を出した所で後が続かなかったためだ。育成は面白かったんだけども、対戦がイマイチだった。

そのおかげか、当時のDSブームのおかげかはわからないが、大変に売れて話題作となった。しかし、肝心のゲームの出来は、粗削りで厳しいものだった。
それを約9年かけて、これほどまでにゲームとして成長させて完成形へと持って行けたのは、ドラクエという看板だからこそ出来た芸当だろう。

このシリーズを見ていると、ポケモンの二番煎じを実現するのがいかに大変かがわかる。育成と対戦の面白さを両立させて、しかもそれをドラクエという枠組みの中で作らなければならない。
完成された作品と言っても、それでも配合や戦闘システムの煩雑さは否めない。だけども、シリーズの持ち味、面白さを活かすためにはこれは外せないという苦渋の連続の上に初めて成り立っているように思える。
そこで結論。

本質的な目新しさはないが、より遊びやすく、かつ、力技で新鮮さを演出している力作。





[2016/03/31]
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