鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 暁の王子


対応機種Wii
発売日2009/08/13
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 SQUARE ENIX / EIGHTING / 荒川弘 / 鋼の錬金術師制作委員会 / MBS
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この春にはアニメの新シリーズの放映もはじまり、一大ブームを巻き起こした「鋼の錬金術師」。
それに合わせて勿論ゲームソフトも発売された。

もしかしたら前にも書いていたかもしれないが、「鋼の錬金術師」は、作品の内容や出来云々以前に、用意周到に計画されたメディアミックス展開に関心が向く。
言葉悪く書けば「搾取」という二文字がつきまとい、どうしても良い印象が持てないのだ。
今回も、こうして一過性のブームを取り戻すべく、タイムスケジュールを組んでいるのだろうが(ゲーム版の発売の速さがそれを物語っている)、前のような勢いは感じられない。

今回のアニメ版は、前回のストーリーは「無かった」ことにされているようだ(全く見ていないのでわからないが)。そして当然、今作の世界設定は、新作アニメの方に合わせられている。
もはやアニメ版の感想になってしまうのだろうが、キャストが変わりすぎである。風の噂にそういう批評は聞いていたが、まさかここまでメイン級のキャラクターが変更されているとは思わなかった。
イメージを一新したかったのだろう。しかし、まだ5年前に放映終了したばかりのアニメである。いたずらにこういう部分を変えてしまうのは業界ではタブーではないのか。
10年20年経っていて、諸事情でどうしても変えざるを得ない場合なら納得もゆくが、たかが5年である。
個人的には、ロイ・マスタングの声が変わっていたのが痛かった。

前にスクウェアエニックスがプレイステーション2で同作を出していた時は「3Dアクションゲーム」だった。今回は「アドベンチャーゲーム」になっている。
ゲーム的にスケールダウンしたと言わざるを得ない。ゲーム内容は褒められるほど完成度が高かったわけではないが、結構原作の内容とマッチしていたと思うのだが。

フルボイスで喋り、バックログを参照出来るなど基本的な機能は搭載されている。しかしやはり、このゲームの売りは、トゥーンシェード処理された3Dキャラクターが立ち絵の代わりに採用されている点だろう。
この手法は一昔前なら失笑されるものだったが、グラフィックやモーションにさしたる違和感もなく、表情豊かにスムースに動いてくれる。
(ちなみに、昔コナミがまだ技術力が未熟な頃に勇み足で「ときめきメモリアル3」でこの手法を使って、ブランドを潰してしまったのは有名な話である)

操作はWiiリモコンのみを使う。要所要所にミニゲームが挿入されるが、リモコンのみという制約のなか、種類も決して少なくなく中身も頑張っていると思う。
極力簡略化された操作性で、ストレスを溜めることはなかった。が、アイコンをクリックするだけでなく、十字キーでメニュー画面をスライド出来ても良かったと思う。

Aボタンとリモコン操作だけでほぼ全ての操作をできる設計は評価したいが、右上の「メニュー」開くアイコンが邪魔だった。
常に表示してくれるのはゲームに不慣れな人間に対して便利な作りなのだが、Bボタンを押せば開くのなら、不必要とも思う。

なにより、邪魔だと感じさせるのが、通常一枚絵の背景を、臨場感を出したいのか拡大して表示し、画面端にリモコンを持って行くとスクロールするようにしている作りだ。
おかげで背景画が安っぽくなってしまってる。
画面上の気になるところは、クリックして調べるという古風なアドベンチャー要素を強めたいがための結果だったのだろうが、うざったい仕様になってしまっている。

フィールド画面を作ってわざわざ「歩かせる」必要はなかろう。他のデジタルノベルのように、行きたいところにリモコンを合わせてクリックだけで十分だ。

アドベンチャーパートは、割と古いタイプのもので、きちっとフラグを立てて進めていくゲームだ。合間にミニゲームが挿入される。
いわゆるギャルゲーのように、制限時間が設定されており、早く攻略するとご褒美が手に入ったりする。
しかし、この制限時間はじゃまくさかった。せかされているようで、楽しく遊べないのである。
最悪なのが、制限時間内に攻略出来なかった場合ゲームオーバーとなる箇所で、やり直しが非常に面倒だった。
好感度をあげるゲームでもないのだし、ゲームを進ませることや、積極的な探索に集中させるべき。

ロード時間も早い方で、待たされ感が無いのも良い。

…と、システム面だけを見ていくと良く出来ているゲームと思われるかもしれないが、肝心の中身がイマイチ弱いのである。
ゲーム的においしそうな単発のシナリオが数本入っているだけで、一本の作品として見てみると、締まりが無く中身が薄い。
ファンが喜びそうなシチュエーションを入れてみた…今時これで商売になると思っているようではこの会社はかなり認識が甘い。
やっぱりゲームとして出す以上、いくらくだらないスケールの小さいものでもいい、起承転結がメリハリ良く成り立っていなくては、商品として成立しないのである。
それこそ、この程度のお遊び的内容なら、OVAのおまけエピソードレベルで良いとファンにまで馬鹿にされるだろう。

今は原作物ゲームでなくとも、たとえばセガ「龍が如く」、任天堂「ファイアーエムブレム 暁の女神」のように、人物相関図や世界設定を解説してくれるメニュー項目があるなか、今作では、一切フォローが無い。
ファン向けゲームだから…では通用しない。本編で解説役を入れるなど、知識に乏しいプレイヤーに対する配慮は今や必須である。

また、シナリオの都合で操作キャラクターが頻繁に入れ替わるのも、ゲームへの没入度を低め、シナリオを読解しづらいものにしている。

ところどころ入るミニゲームも、Wiiリモコンのみでは「頑張っている」というだけであって、それ単体でゲーム性として勝負出来るほどの作り込みは無い。

そしてこのゲーム最大の不満点は、ストーリー上キリの良いところでゲームが終了し、続編のコマーシャルムービーが流れる。いわゆる二部構成のゲームであることだ。
説明書を開いてみると、しっかりその点が説明されている。が、パッケージや公式サイトを見てみると、そのような記述が無い。これは詐欺だろう。

原作物ゲームは何でもかんでも「アドベンチャー」にしてしまう辺り、まだこの会社は、この手のゲームを作り慣れて無いんだろう(手間のかからなさそうなジャンルにして荒稼ぎを狙っているという線もある)。
ガンダムでおなじみのバンダイナムコゲームスや、ゲーム屋の振りして、意外と昔から版権ゲームをコツコツ作ってうまい立ち回りを覚えたコナミのやり方を勉強すると良い。
少なくとも、いつまでも「アドベンチャーゲーム」での売り方は通用しない。よっぽど内容が良くなければ。そこで結論。

安直なゲーム作りは身を滅ぼす。駄作。





[2009/08/14]
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