ファイアーエムブレム if


対応機種ニンテンドー3DS
発売日2015/06/25
価格4700円
発売元任天堂

(c)2015 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS
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根強いファンを持つ人気シミュレーションRPG「ファイアーエムブレム」の3DS版第二弾。
「白夜王国」「暗夜王国」という2つのパッケージに分けた販売形態は大いに物議をかもした。

本作には、3つの物語があり、いわゆるプロローグを終えた段階で、どのシナリオに進むかを選択する。
ただし、パッケージ1つに最初から全てが入っているのではなく、このうちの1つだけが入っている。
パッケージ版の場合は、「白夜王国」か「暗夜王国」のどちらか遊びたい方を選んで購入する。
ダウンロード版の場合は、シナリオ選択時に「白夜王国」か「暗夜王国」のうちどちらか1つを選べる権利が価格の中に含まれている。

別のシナリオを遊びたい場合は、また新しくパッケージを購入する必要はなく、インターネット経由で追加コンテンツを購入する形でプレイできる(2000円)。
最初に3つの物語があると書いたが、3つ目のシナリオは発売日以降に有料ダウンロードコンテンツの形で配信される。

売り切り型が基本のコンシューマーゲームの世界で、このような課金コンテンツありきの複雑な売り方は、結構な反発を招いたようだ。
個人的には、このへんには良いも悪いも意見するようなことはない。

というのも、今回のケースは、価値観や見方次第で印象が変わってくるためだ。
「白夜王国」と「暗夜王国」が2本のゲームソフトであるという考え方で見れば、このうちの1本を購入していれば、もう一方は2000円で購入できるのはお得感がある。
対して、1本のゲームであるべき内容をわざわざ分割して販売していると言う価値観であれば、このようなやり方に嫌悪感を持たれても仕方がないと言える。

過去、似たような売り方をしているゲームは存在している。
任天堂「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」(GBカラー専用)は、「大地の章」「時空の章」が同日発売され、それぞれゲーム内容が異なる。
SCE「BLOOD」(PS2)は、上下巻が同日に別売で発売された。
「ファイアーエムブレム if」の場合は、前者の「ゼルダの伝説 ふしぎの木の実」に非常に近い。
「ゼルダ」の時は、追加コンテンツみたいな概念が全くない時代だったので、両方遊びたい場合は2本分買うしかなかった。
GBカラーのソフトであったため価格が安かったこと(3800円)、ゼルダシリーズ自体のプレミア感(新作が待ち望まれていた)もあって、批判的な声が上がることはなかった。

最も気になるであろう1つのシナリオのボリュームについてだが、普通にプレイしてクリアまでは(戦闘アニメなど一切カットせずにやって)大体30時間を超える程度はある。
マップやキャラの使い回しが若干あるにせよ、プレイ時間から換算してこれらを1本にまとめているべきだ!というのはちょっと暴論かなと思う。

「白夜王国」は、シリーズ未経験者や初心者向けに配慮した内容になっている。
前作「覚醒」と同様に、LV上げ用のマップで経験値稼ぎができたり、本筋のマップ構成もシンプルで正攻法な作りで、安心してプレイできる。

「暗夜王国」は、シリーズファン向けの内容。
経験値稼ぎ用のマップはなく、本編のステージマップも凝ったギミックとトリッキーな仕掛けでプレイヤーを苦しめる。
個人的には経験値稼ぎの要素もバッサリ切ってしまうのはやり過ぎだとは感じた(差別化をはかりたくてやったのだろうが)。

具体的なゲーム内容だが、前作「ファイアーエムブレム 覚醒」をベースにさらなるブラッシュアップを加えたもので、3年待った割には新鮮さは少ない。
とはいえ、拠点を視覚化して自由にカスタマイズできたりする「マイキャッスル」や、バトルシステムのテコ入れなど、かなり手間が掛かっている雰囲気はある。

これまでシリーズのお決まり事だった部分を敢えて崩している。
例えば、武器の耐久値の廃止や、新武器と新ユニットを登場させたことで、お馴染みの3すくみの仕組みが変わったりなど。
ルールがかっちりと完成されたシリーズなので、こういった変更には不安を覚えるのだが、しっかりといい位置に着地していて中々良く出来ている。
武器の耐久値(回数制)をなくしたことで、性能の良い武器を使い放題になってしまうんじゃないかという懸念が生まれたが、いわゆる万能武器というものが出来ないように良く考えられている。
強い武器は、使った後に一時的に能力値が下がってしまうなど、それぞれに一長一短が付けられており、持たせる武器や使う武器を選ぶ葛藤を楽しめる部分はきちんと残っている。
(ただし、杖だけは耐久値が残されており、規定回数使うと壊れてなくなってしまう)

前作のダブル(デュアル)が、攻陣防陣という形にリニューアルした。
前作「覚醒」のダブル(デュアル)は、それ自体が戦略性に深く直結しているかというとイマイチなところがあった。
今回はそこら辺をしっかり練りこまれたことで、グッと面白くなった。

攻陣はユニットが隣接している状態のことで、隣に味方ユニットがいる状態で攻撃すると、その味方が必ず援護攻撃(前作で言うデュアルアタック)を行ってくれる。
防陣は前作で言うダブル状態(2つのユニットを重ねあわせる)にすることで、この状態では攻陣の支援は発生しないが、敵のデュアルアタック(援護攻撃)を完全に防いでくれる。

今作では、敵側も攻陣防陣の恩恵を受けるようになったため(前作では味方側のみだった)、敵のデュアルアタックを防止するために頭数を減らすか、逆に防陣で凌ぐかといった駆け引きが生まれて非常に面白い。

マップ上の新しい仕掛けだと竜脈というシステムが登場した。
竜脈のマスに止まりギミックを発動すると、マップ上に様々なイベントが起こる。

川が干上がって陸地になるといった大幅な地形変化や、竜巻が発生して飛行系ユニットだけ移動が困難になるなど、とにかく多彩な仕掛けが満載で、中々発展性のし甲斐のあるものになっている。
竜脈は味方だけでなく敵も使ってくることがある。その場合はこちらも竜脈を使ってうまく反撃するといった駆け引きを要求される部分もあり、なかなか面白い。

「マイキャッスル」という拠点をカスタマイズして遊べる要素も登場した。
何もないフィールドに、武器屋、道具屋、闘技場といった施設をすきなように配置していき、自分だけの拠点を作れる!!というものだ。
当たり前のことかもしれないが、このフィールドを自由に歩き回って、時には主観視点にして眺め回す事ができたりして、非常に凝っている。

インターネットに接続して、他のプレイヤーの拠点に遊びに行ったり、あるいは、拠点で戦闘を行うことまで出来る(防衛戦)。
しかし、本編はあくまでS.RPGなので、こういったサブ的要素は軽視されがちだが、それでも正直言ってかなり手間がかかっていて頑張っていると感じた。

最後にストーリー周りについて。
DS「新・紋章の謎」から登場したマイユニットの概念だが、ようやくマイユニット=主人公になった。
ゲーム開始時に、頑張ってキャラクリエイトしたのに、本編シナリオにはさらに別にメインの主人公がいて、イマイチ立ち位置がはっきりしなかったが、今回はそういった面で煩雑さがなくなっていて良い。

今回、脚本に樹林伸氏(シナリオ原案)を起用して、かなり力を入れていたようだ。
だが、ストーリーの出来映えとしては、可もなく不可もなくといった仕上がりで、イマイチ魅力的でない。
「白夜王国」「暗夜王国」の両方とも体験したが、展開が強引なところがあったり、2つのシナリオだけでは真相がはっきりしないところもあったりする。
そもそも「ファイアーエムブレム」というゲームに適したストーリーを描くことが、なかなかに難しいことになっていると言えないだろうか。
Wiiで「暁の女神」を出した後、DSでは「紋章の謎」のリメイクでお茶を濁していて、その後の「覚醒」では、結構ハチャメチャなストーリーになっていた。
このような状況下で、プロの作家に依頼して出てきたのが可もなく不可もない無難なレベルというのは、ある意味凄いことなのかもしれない。

前作の「覚醒」をベースに、とても引き締まった作品へと仕上がっているのだが、2種類のパッケージに分けて売ろうとしたことなどが足を引っ張っていたように感じた。
未だに販売形態には肯定も否定も無いのだが、個人的な意見を述べさせてもらうなら「少なくともファイアーエムブレムでやることじゃねぇよなぁ」という印象はある。
そこで結論。

順当にパワーアップを遂げた作品。無理して両方やる必要はなし。





[2015/07/08]
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