ファイアーエムブレム 聖魔の光石

対応機種ゲームボーイアドバンス
発売日2004/10/07
価格4800円
発売元任天堂

(c)2004 Nintendo / INTELLIGENT SYSTEMS
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任天堂の看板タイトルである人気シミュレーションRPG、
ファイアーエムブレムのGBA3作目。

GBAにプラットフォームを移してからというもの
1年に1本という、かなりのハイペースで新作を発売してきた。
それまで本シリーズはS.RPGという制作に時間のかかるジャンルということもあって、
続編まで2〜3年、もしくはそれ以上待たされるのは当たり前であり、
人気の割になかなか新作が出ない状況が続いていたことから考えると
異常なペースである。

さて、元々GBA1作目の「封印の剣」では、携帯ゲーム機であることや久々の新作であることを配慮してか
かなりライトな、間口の広い(クセのない)キャラクターデザインだったが、
2作目「劣化の剣」の流れも受けて、どんどん大人びたデザインになっていき
いよいよ本作では、SFCの「聖戦の系譜」ばりな路線になってしまった。
これは、当初GBA1作目からシリーズに入った若い購買層が歳を取り、
旧作時代からのファンも考慮すると、この手の作風が最も求められていることから来る物では無いかと
思われるし、適切な判断といえる。

作中に難しい漢字が出た場合、前2作ではルビを振るというフォローがあったが
本作では全く無い。そして、小難しい単語も頻繁に使われるようになった。
チュートリアルでの説明文も難しい言葉で簡潔に解説していることも多く
完全に低年齢層を切り捨てたと言える。

本作でもプログラム部分での大きな差異は無く、目立った変更点は見受けられない。
これは既にGBA1作目「封印の剣」の時点で高いポテンシャルとインターフェースを構築しているから
敢えて変える必要は無いのだが変化を求められるのも事実で、
本作では作風に合わせ、ウィンドウデザインやグラフィックを全体的に渋みのある色遣いに
変更している。
根本的な要素は何も変わってないから、パッと見ただけでは変化がわかりにくいのが苦しいが
実際はかなり画面全体から受ける雰囲気が違う。
(GBA2作目「烈火の剣」ではこの手の部分はそのままだった)
でも、個人的には前のウィンドウデザインの方がカラフルで良かったと思う。

どうも、かなり差別化を意識しているのか音楽に関しても、
お馴染みの曲(テーマソング等)を除けば、全て新曲に置き換えられており
相変わらずGBAとは思えないほど音質が高く、音色の使い方もSFC末期のRPGを彷彿とさせる
厚味のある重厚なサウンドが多いのだが
全体的にそればっかりで前作までと比べるとメロディーラインが弱くイマイチ耳に残らない。

他にも、細かな部分での手入れも目立つ。
タイトル前のデモ画面の構成も変更し
最初に任天堂とインテリジェントシステムズのロゴを表示させたり、
(ただ、あのいつもならプロローグを語る場でキャラゲーのような軽いノリのデモはイカンと思うが)
支援会話の状況が分かりやすく参照出来るようになるなど、
他にも本当に些細な操作周りの仕様を改善している点は非常に好感が持てる。

内容に関しても概ね大きな変更点は無いが、幾つかの新要素が加わっている。
つたない知識をたどると、全体としてFCのファイアーエムブレム外伝に酷似しているようだ。

まず、新たな敵として魔物が登場。
スケルトン、ゾンビ、蜘蛛、ケルベロス、ドラゴン…
とまぁ、ファンタジー世界で思いつく大体の代表的モンスターは登場する。
意外かもしれないが、本シリーズは中世ファンタジーが舞台でありながら
異形のモンスターが出てくることは前述のFC版外伝を除いて殆ど無い(終盤のボスなどにはいたけど)
この魔物群もそれぞれに人間職と同様に長所と短所が設定されているが
実際戦ってみないと、その強さが見極められない点で驚異的な相手ではある。
だが、魔物と戦う機会は本筋では思ったほど無く、脇道での戦闘マップぐらいである。

また、ステージとステージの合間にワールドマップを自由に移動出来るシーンが導入された。
ここでは一度クリアした町に戻ってそこにあるお店でアイテムを買い揃えたり、
道中に魔物のシンボルが表示されているところでは、そこを通ろうとすると強制的に戦闘になる。
任意で、自ターンの好きな時に撤退が出来るのだが、
それならばわざわざ強制的に戦闘画面に切り替えさせるのではなく、マップ上で選択形式にしてくれた方が良かったように思う。

要するに、最近の有名どころのゲームで言うところの
タクティクスオウガやファイナルファンタジータクティクスに非常に近い。
残念なのはワールドマップがもの凄く狭いと言うこと。

このシステムによって、好きな時に好きなだけキャラクターを育成することが出来るようになり
かなりプレイヤーに寄った親切な作りになったと言える。
しかし残念なのは、武器が耐久性なので補充する際の資金稼ぎに効率の良い
闘技場にもマップクリア後でも入れるようにして欲しかったのと、
一度目的地に入ってしまうと、FFT同様そこで編成中に記録してしまうとワールドマップに戻れなくなる点。
プレイヤーに優しい作りに準ずるのならば、一度挑んだけれども難しくてクリア出来ない人を救済する意味でも
ワールドマップに戻って十分に対策を練るというプレイスタイルも受け入れるべきではなかったのかと思う。
保険セーブを取るという回避策もあることにはあるが、それでは十分な配慮が出来ていないとも思える。
因みに、戦闘前の編成画面で武器屋があって買うことが出来るが通常より割高なのと汎用製品しか無いので
これもフォローには至っていない。

クラス周りの自由化。
かけだし戦士や新米兵士といった、戦いに於いてのズブの素人も若干名メンバーにいて
苦労しながら手塩にかけて育て上げるといった楽しみも味わえる。
また、上級職へチェンジする場合、2種類の中から好きな職業を選ぶという物になっていて
これにより同じ職業の人間でも上級職によって個性化が図られて、
職業が被ることが殆ど無くなった。
自分でキャラクターの色づけが出来るので、より育成周りの楽しさは増したといえる。

様々な新要素が加わって、ゴテゴテした印象を受けたのだが
これらの要素をやらずとも良いと言うところがミソで、
前2作同様のプレイ感覚で、ひたすら先のステージへ進むように遊んでも十分楽しめる。

対象購買層の底上げに伴って、ずいぶんとストーリーの比重も強まった。
敵側の描写や回想シーンも頻繁に挿入され、携帯ゲーム機としては
ちょっと場違いという感じもするが、これぐらいの物が求められているのだろう。
全体的に世界観もハードで、この手の物を求めている人には満足が行くと思う。
(個人的にはもう少しマイルドなノリの方が好きなのだが)

また、前作で頻繁に入った一枚絵は全く無くなった。
別にあっても無くてもどうでもいい程度の物だったが、気持ちグレードダウンしているとも言える。

そして本作最大の不満点として挙げたいのが、ゲーム半ばでのストーリー分岐である。
恐らくそこに至るまでを前作と同じくチュートリアルステージという位置づけで作ったのだろうが
その割に難易度の高めなステージも割り込んでいたり、物語も結構進行していっている。
男女2人の主人公を選択するのだが、最後の方になると合流して
概ね(主人公が違うだけで)展開が一緒というのが凄く気になった。
しかしその合流前のシナリオはばっさり切り分けられていて、
両方遊ばないと全容が明らかにならない。
だが、両方遊ぶにはプレイヤーへの負担が大きすぎるように感じた。
どうせならくっつけて遊ばせた方がボリューム感もあったろうし、やり直す徒労感も味わわずに済んだという物だ。

ゲームそのものに関しては相変わらずバランスもしっかり取れていて
凄く出来がいい。
当たり前のことが全く出来ないゲームも多い中で、当たり前のことがごく自然に出来ているのは
実は凄いことだと思う。

しかし、内容そのものについてはGBA3作では、大きな違いが無い。
故に、このうちの一本だけやっておけば十分とも言える。
あとは作風やキャラクターデザインが好みだったかどうかという個人的な物に撚るだろう。
それに、細かな改善点はありつつも、基本的なスタンスは変わらないので
(GBAの性能上仕方ない部分もあるのだが)悪いところで直せないところはそのままである。

次はGC版だが、GBAでのFEは恐らくこれが最後。
順当にいってGC版のあとはNDSでシリーズ展開するのだろうが
どのような進化を遂げるのか楽しみである。





[2004/10/18-2005/01/06]
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