ファイナルファンタジー10-2


対応機種プレイステーション2
発売日2003/03/13
価格7800円
発売元スクウェア

(c)2003 SQUARE
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ファイナルファンタジーシリーズでは初となる、世界観とキャラクターを継承した新作「ファイナルファンタジー10-2」。
前作ではヒロインだった伝説の大召喚士ユウナが、スフィアハンター「カモメ団」となり、リュック、パインの女性3人トリオで世界を飛び回ってお宝を探していく大冒険活劇だ。

この作品のリリースに際して、巷では物議をかもしたものだ。

結論から述べていくと、制作の経緯としては、会社の業績不振によるところが大きいと言うのは間違いない。
スクウェアは、2001年に坂口博信の夢だった映画製作事業(2001年9月に公開されたフルCG映画「ファイナルファンタジー スピリッツウィズイン」)が大コケして、大損失となった。
加えて、同年「ファイナルファンタジー10」が発売されるも、ハードスペックの進歩によって、ゲーム制作が高コスト体質になったことで、スクウェアの屋台骨となって収益を上げるのも厳しい構造になってしまっていた。

これまでは、ファイナルファンタジーで稼いだお金で、人材育成や新ブランドの立ち上げ、実験作品の制作といったことを行う余裕があった。
しかし、ゲーム機の性能が向上するにつれて、開発費の高騰が問題となり、こういった仕組みを維持していくことが困難となった。

そこで、経営改革を行い、開発者の声が強すぎる社風を一新し、利益重視の体質へと転換させることとなった。
このゲームは、これまで芸術作品といった趣の強くあったFFシリーズ(及びスクウェア作品)とは異なり、確実に利益を得るための商業的要素が強く出た内容になっている。

そのためにまず、前作と同一の世界を舞台とし、フィールドマップや登場キャラクターといった素材、モデリングを出来る限り流用し、プログラム周りも改良して使いまわすといったコストを抑えた作り方をしている。
また、主題歌をエイベックスの倖田來未とタイアップするなど、一般層へ売るための話題作りも欠かさなかった。
これまでのFFシリーズの主題歌というのは、作品ありきで作られていたが、売れ筋のJ-POPを(作風と合ってないとしても)当てはめるというやり方からも、商業的要素の強さが伺える。

主役は、前作ではお淑やかだったヒロイン、ユウナ、同じくメインキャラの一人だったリュックと、新キャラクターのパインの女の子3人が、元気にはしゃぎ回る痛快コメディ路線に変わっている。
映画「チャーリーズエンジェル」に似てると話題になったが、明らかに意識してやっているのだろう。

平和になった世界をどうやって描くのか考えた場合、細かい設定を簡単に無視できて(ノリでなかったことに出来る)、各地でサブイベント(エピソード)を展開させるにも、軽いノリでなんでもやれる作風の方が、はっきりいって都合が良い。

重厚でシリアスだった前作とは一転して、ドタバタコメディーになったことで、キャラクタや設定の改変に賛否両論巻き起こった。
だが、今作は、設定や脚本に強い思想設計のようなものはなく、利益を上げるために都合の良いキャラに変えただけであり、(言い方は悪いが)陳腐な三流映画のようなシナリオも、おそらく狙ってやっているものだ。
「チャーリーズエンジェル」を意識してるっていうのは、その辺にもあらわれていて、何も考えずに目の前で起こる日常風景を楽しむというのが、このゲームの意図するところとなっている。

個人的には、露出度の高いコスチュームを着たユウナの姿を見た時に、昔売れたアイドルが服を脱いで裸を売るといったよくある話とかぶって見えてしまった(にしても、身体売るには早すぎな気がするが!?)。

こういう制作手法を、批判しているような書き方になってしまったが、それ自体を否定するつもりはない。
要は、ゲーム自体が面白ければ良いわけで、そこさえしっかりしてれば、何も問題はない。

肝心のゲームが、急場しのぎで作ったせいなのか、イマイチになってしまっている。ファイナルファンタジーという名前がなければ、悪くはないのだが、大作RPGの冠を付けて発売するには荷が重いといった代物だ。

従来のファイナルファンタジーシリーズのように、本編のストーリーだけで楽しませるのは、手間がかかってとてもじゃないが無理らしく、
本編ストーリーの分量やスケールは小さいものとなっているが、かわりにサブイベントやサブゲームを充実させている。

イベントコンプリート率というものがあり、100%にしてクリアすると真のエンディングが見られるといった仕組みにしたようだ。
そのため、全体的に周回プレイを前提とした作りになっていて、データを引き継いでプレイできる「強くてニューゲーム」の機能が付けられている。

サブイベントを極めることで、真のエンディングが見られるという仕組み自体は悪くない。
前作のFF10では、隠しボスや最強武器集めといったやりこみ要素が存在していたが、それらは本筋とはどこか乖離しており、自己満足の範疇を抜け切れないものだった。
端的に言うと、やりたいと思わせるものがなくて、動機付けが弱かった。

今回は、隠しエンディングを餌に、サブイベントを強制されているという印象を持たれる危険性はあるが、やり込んでゲームを極めることで、やりこんだ人だけが見られるご褒美があることで、やり込む意味が出たと思う。

しかし、肝心のゲーム自体が、正直出来がよろしくない。

いくらサブイベントが充実しているといっても、まず本編が楽しくないと、遊びたいと思わない。
肝心の本編が、気合いの入ったものにできないと適当な所でさじを投げて、サブイベントに任せきってしまったようなゲームになってしまっている。

10-2という題目どおり、ファンディスク的作品ならそれは間違いではない作りかもしれないが、ファンディスクにしては規模が大きく、おおっぴらに宣伝しすぎている。
ぶっちゃけ、オンラインゲーム化してしまったファイナルファンタジー11の代理的位置に存在しているといっても言い過ぎでない発売時期と宣伝量であり、期待もそれだけ寄せられている。

ゲーム序盤から飛空艇を所持しており、ほぼすべての場所に行くことが出来る。
FF10の世界はそれほど巨大なものではないが、目的を示されてない場所の探索は面倒だし、敵までエンカウントする。敵の配置もいい加減で、序盤から明らかに倒せないような強力な敵までごちゃ混ぜになって出てくる。
ミッション(イベント)が発生する場所をアイコンで示したりして欲しかった。メインストーリーの行き先だけ示されるのでは、興味を持たせるにはちょっと弱い。

おまけに、きつい物言いだが肝心のイベント内容が面白く無い。
全体的にミニゲーム染みたものが多くて、思った通りの成績が出ないとストレスが溜まる。つまらないフラグ立てみたいなものも多く、やっていて苦痛になってくる。
砂漠の宝探し、ブリッツボール、スフィアブレイクといった独立したミニゲームも多いのだが、手をかけて作っているのはわかるが、全部消化するには覚えることが多すぎて、負担が大きい。
次第に付き合ってられないという気持ちになってくる。

ミニゲームの量を増やすなら、各ゲームの難易度を下げる、ルールを単純化して取っ付き易くする、といった工夫をして欲しかった。

また、周回プレイを前提とするのなら、イベントムービーをスキップできる機能をもっと目立たせるべきだし、アビリティ、アイテム、お金まで引き継げるのに、なぜかLVだけ1に戻されるというのも、やる気を削がれる。
開発者のやりこんで欲しいという声はわかるのだが、特定のタイミングを逃したら見れないイベントや取れないアイテムといった条件のキツイものが多く、いくら周回プレイ前提のゲームとはいえ、あまりに厳しすぎる。
意識してやれば取りこぼさない程度が理想であって、何周もやることが当たり前のバランスの付け方になってしまっている。これではマニアック過ぎてついていけない。

結局、色々触ってみても、面白くなくて興味を持てないので、適当な所で切り上げて本編だけ進めてクリアーしてしまった。2周目をやりたいとは思わなかった。

フィールドは、FF10のプログラムを使いまわしており、カメラアングル、レーダーマップなどの問題点もほぼそのまま残っている。
方角を見失うことはかなり減ったが、まだ混乱するところが結構あった。キャラクタの操作性については、相変わらずぎこちないところがある。

後、×ボタンを押しっぱなしで、ジャンプしたり崖をよじ登ったりするアクションが追加された。
そのため、フィールドが複雑化してしまった。このアクションが導入されたことで、マップが平面的に終わらず立体的になって、3Dマップとしては前より断然面白くなったのだが、同時に構造がわかりにくくなるという問題が発生している。

戦闘シーンは、今回はFFおなじみのアクティブタイムバトルに戻っている。
前回のFF10のアクティブターン制は、尖っていてFFっぽくない等、色々問題はあるものの、斬新で目新しさがあり面白かったものだ。
それと比べると、今回は、良くも悪くもいつものFFのバトルシステムに戻っていて、無難に作ってきた感じだ。

バトルフィールドに敵と味方がバラバラに配置され、状況に応じて立ち位置が変わったりする。

他にも新しいルールが沢山採用されていて、軽く述べる。
コマンド入力順に動くのではなく各々が同時に動いて行動する、攻撃のタイミングを合わせることで攻撃がつながってダメージがアップする、
後ろから攻撃することでもダメージがアップする、行動準備中あるいはモーション中に攻撃するとモーションキャンセルすることが出来るなど。
ただATB制に戻しただけでなく、アクション性を取り入れたことで、より緻密でリアルなバトルになっている。

戦闘中でもターンを消費してジョブチェンジ出来るというのも新しい試みの一つだ。
ただリストから選ぶのではなく、リザルトプレートにドレスフィア(ジョブ)をセットして、キャラクタはリザルトプレートと、そこにセットされたドレスフィアを装備して戦闘に参加する。
自分のターンの時に、L1ボタンを押すとリザルトプレートが表示され、配置したジョブにチェンジすることが出来る。

スフィア盤のようにコマを動かして配置したジョブの位置に移動してチェンジするという仕組みになっている。そのため、セットしたジョブ全てにすぐチェンジ出来るのではなく、
遠くに配置したジョブに関しては、他のマス目を経由する必要がある。
この時、通過した道によっては、ステータスが上がったり、覚えてないアビリティを使えるようになるなど、その戦闘中に限り、特典を得られたりする。
また、1回の戦闘中に盤上の全てのジョブにチェンジすると、スペシャルドレスに着替えることが出来る。これは、いわゆる必殺技的存在で、FF10で言う召喚獣みたいなものである。

戦闘中にジョブチェンジすると、変身ムービーが入るのだが、映像自体は結構凝ってて面白いのだが、繰り返し見るには長すぎて辛い。
見せたがりのこの会社にしては珍しく、コンフィグで完全カット出来るようになっている。FF10の召喚シーンのようにショートバージョンにも出来る。
カット機能がついていなかったら、とてもじゃないが冗長すぎて、不満が爆発していただろう。懸命な判断と言える。

このように、戦闘中にジョブチェンジが出来て、当然キャラの衣装も変わるわけだが、それ以外にも結構キツそうな処理をしているが、きちんと軽快に動作している。
このへんのクオリティは、さすがと言わざるをえない。

進化したATBシステム、ジョブアビリティを習得させてアビリティを集めていく育成システムなど、凝った面白い仕組みを作ってきているのだが、本作においてはそこで止まってしまっている。
FF7でもそうだったのだが、面白いシステムを作っても、肝心の戦闘シーンのバランス調整がおざなりで、なんとなく単調になりがちで、結果的につまらないのである。
もちろん、やりこみ要素で強敵討伐といったところまで突き詰めていけば面白いと言う話になるだろうが、論点はそこじゃないと思う。

普通に遊んでいたら、試行錯誤して戦うという局面が非常に少なく、だらだら戦ってアビリティやジョブを集めるのは楽しいのだが、そこで満足して終わってしまっている。
肝心の戦闘自体は、ボタンを連打しているだけというところが殆どだ。

あと、仕組みが複雑化したことで、画面がごちゃついてしまって、取っ付きが悪くなってしまった節がある。
最初の数時間は、慣れるまでゲーム展開についていけなかった。

戦闘中のジョブチェンジで、ターンを消費せずすぐに動けるというのも、ちと甘い気が?

インターフェイス全般について語る。

メニュー画面については、すっきり見やすくレスポンスも良かったFF10だったが、UI担当が変わったのか、見栄え重視の設計になっていて、快適性という面で言えば、質が落ちた。
メニューの切り替えで、いちいち細かい演出が入るようになったため、カーソル操作にもたつきがあって、引っかかるような表示、操作がどうにも好きになれなかった。
沢山の(時には不要な)情報を表示しようとして、画面が重い。メニュー画面で現在地の他に、右下に世界地図まで表示する必要はないだろう。変にごちゃごちゃしてて、見づらい。
ちとこのへんの手触りが、いつものFFっぽくない。

ディスクアクセスは、長くはないが、前作が快適だったのに対し、並程度に落ちた感じだ。このへんはもっと頑張って欲しかった。

それから、前作では、テキストが映画の字幕形式の表示になっていたが、今回は声無しのテキストの表示は、FF7、FF8の時のような話者の近くにウィンドウ表示する形式に戻っている。
やはり、声無しの台詞まで字幕形式で表示することに違和感があったのだろう。退化した部分が元に戻ったという感じだ。

音楽は、植松伸夫が外れたことで、テイストが大幅に変わってしまったが、戦闘シーンのBGMとファンファーレがなくなったところに強い違和感を覚えた。逆を言えば、それ以外では気になるところはなかった。
ファンファーレを廃止したみたいな、シリーズの伝統をなくすことにはあまりこだわりを持たないのだが、通常のザコ戦闘のBGMが、どうしてこれを採用したのだろうというほどノれないものになってしまっている。
FF10のザコ戦闘も評判が悪かったらしいが、個人的にはきらいじゃない。しかし今回のザコ戦闘のBGMは、はっきり「ひどい」と思えるようなものだった。一番聞く機会の多い音楽なのだから、もっといいものを流して欲しい。

冷たい物言いばかりになってしまった。
総合的にまとめると、決して出来が悪いわけじゃない。使い回しが多いと言っても、バトルパートは1から組み直されてるし、サブゲームなど作りこまれてるところはちゃんと作られていて、手抜きと一蹴するようなものではない。
しかし、良い物を作ろうというこころざしから大きくはずれ、資金回収が主目的というあざとさが透けて見える無難な、悪く言えば中途半端さが目立つ作品になってしまっている。

ゲーム会社といっても営利企業なのだから、金儲けを考えるのは当然なのだが、スケジュール的に厳しかったのか、事情があって良いスタッフを集められなかったのか、今ひとつどこを切り取っても光るものが足りなくて、
どうにも、名前負けしてしまっているゲームに感じてしまった。そこで結論。

先走らず、じっくり磨けば良いゲームになったかもしれない。





[2004/05/08-2014/01/20]
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