ファイナルファンタジー10


対応機種プレイステーション2(HDD対応)
発売日2001/07/19
価格8800円
発売元スクウェア

(c)2001 SQUARE
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プレイステーション2に舞台を移し、あらゆる部分が大幅に進化した超大作RPG「ファイナルファンタジー」シリーズ10作目。
完成度を探っていく。

前書きしておくべき点として、主要制作スタッフは、FF8を作った人間で構成されている。
そのため、ゲーム全体のテイストやゲームに対する考え方はFF8に近いものがあり、FF8の正当進化系といった内容になっている。

プレイステーション1時代では、おそらくやりたかっただろうけど出来なかったことをプレイステーション2というハード技術を使って、軽々と成し遂げている。

まず、フィールドがフルポリゴンで描かれている。
前作まではプリレンダの1枚絵で表現されていた。これはこれで緻密なグラフィックだったが、奥行きや構造がわかりづらい、当然のことながら1枚絵だから、イベントシーン等でカメラワークを使った演出が出来ないなど問題点も多かった。
このへんの、ずっと抱え込んでいた問題点は、フィールドマップがフルポリゴンとなることで、そのほとんどが解消されている。

カメラワークは、予め設定された固定視点タイプ。せっかくフルポリゴン化したから、プレイヤーがカメラ操作出来る方向性も考えたと思われるが、都合の悪い部分もしっかり描画しなきゃいけなかったり、操作性が煩雑になるなど考慮した上で、固定視点タイプになったのだろう。

固定視点タイプの長所としては、カメラワークも演出の1つとして制御出来るため、都合の悪い部分を隠すことが出来るし、見せたい部分を重点的に、かつ、開発者の見せたいように見せることが出来る。
逆に欠点としては、プレイヤー側からすれば、画面上では3Dマッピングされているものの、カメラ操作に介入の余地が無いため、プレイヤーが見たいと思っている部分を自由に見ることが出来ない。
フルポリゴンになったといっても、遊ぶ側からとってみれば、実感しにくい。立体感や臨場感を感じさせるカメラワークにしていることで、ようやくフルポリゴンである恩恵を感じられる程度で、妙な押し付けがましさがある。

フィールドマップの仕様は、かなり思い切った作りになっている。

いわゆるワールドマップは廃止され、全て同じ縮尺のマップになっている。
また、ストーリーの進行にともなって、行動できる場所にかなりの制限が入っており、具体的には、後戻りができず、次の目的地へ向かってひたすら進めていくようになっており、プレイヤーの自由度を意図的に奪っている。
一応、ゲームを最後まで進めることで、飛空艇が手に入り、一度行った場所に自由に行き来出来るようにはなる。フラグ管理といった諸々の処理が面倒くさい、ゲームのコンセプト的に戻れるようにする意味が無いなど色々理由があったのだろう。
しかし、ここまで割り切った作りを大作RPGでやってしまうと、賛否両論巻き起こるのではないかと感じた。

また、フィールドマップの造形も、思い切ったものとなっている。

ほぼ殆どの場所が細い一本道で、たまに枝分かれしていても、行き止まりにはたいてい先に進めるためのフラグがあったり宝箱、イベントなどのギミックが置かれていて、ゲーム的に無駄な部分が一切省かれている。
ごく一部で、だだっ広いマップも存在しているが、何があるって言うわけでもないただ広い空間があるだけだ。

つまり、このゲームは、ストーリー重視のRPGで、これまで慣習的に行われていたものの、不要だと思われる部分を、バッサリ切り捨てているのだ。
例えば、迷路状のダンジョンマップや、無意味な構造をしたマップなど。

制作規模、製作期間的に制約が多く、そうせざるを得なかったという事情も大きいのだろう。

風景や景色が開放的であっても、マップの仕組み的には、どの場所も細い一本道であることが多く、作られた世界を“鑑賞”しているような感覚に近い。

これまで散々、マップの構造がわかりにくいという声があったのか、画面左上にレーダーマップが表示されるようになった。
プレイヤーの現在位置と、周辺のマップが記号的に表示されている。セーブポイントが白、建物の出入口などマップの切り替わる場所が緑色、次に向かうべき場所が赤いマーカーで示される。

だが、カメラワークの設定がこなれていないのか、現在位置や方角を見失うことが多く、レーダーマップを見ていてもなお、混乱するところが多数存在している。
なぜ混乱するかというと、カメラが突然、別方向からのカットに何の脈絡なく切り替わる箇所が多くあるためだ。
スティック操作でキャラクタを動かすが、視点が浮ついた動きをすることで、同期が取れずに思ったように動かせなくなる場面も多い。
視点が切り替わっても、スティックを傾け続けている限り、操作キャラは、向きを変えずに同じ方向に走り続けるという措置を取ってるが、この操作感が何となく気持ち悪い。
カメラが突然切り替わっても、進行方向を見失わないためにやっていることだと思われるが、これのせいでレスポンスがなんとなく硬い印象を受ける。
RPGじゃなかったら、放り出しているほど致命的なものだ。

レーダーマップの表示の仕方がわかりづらく、当てにならない場所も結構残っている。高低差の表し方とか、どうも開発終盤に追加したっぽいのか、決まり事が曖昧なところが目立つ。
そもそも、ここまで単純化したマップだと、レーダーマップはなくても困らないと言う気もしないでもないが、やはりないと不便だと感じる場面も多く見られた。

イベントシーンについて触れる。

一番大きく進歩した点として、キャラクターがフルボイスで喋るようになったこと。
もう一つが、フィールドがフルポリゴンになったことで、カメラワークによる演出が可能になった点があげられる。

他にも、モーションキャプチャーを使ったきめ細やかなキャラクタの動き、フェイシャルモーションと呼ばれる、顔の表情、目の動きなど細かい仕草まできちんと表現されているところ。
まだどことなくぎこちなさは気になるが、他社より一歩抜きん出た映像美術のクオリティの高さは、さすがスクウェアと言わしめる素晴らしさを出している。

ほとんどのシーンは、リアルタイムで見せていくようになったが、結局凝ったスペクタクルシーンやリアルタイム演算で見せるのが難しいシーンは、ムービーに頼ってしまっている。
全部リアルタイムで表現するのは無理だとしても、明らかにムービーシーンのキャラモデリングは、通常時とは質感まで違ってしまっていて、その違和感を縮めようという努力がなかったのは残念だった。
この会社の方針として、統一感よりも、出来る限りハイクオリティのものを見せたいという考えがあるのだろう。

また、フルボイスということでFFシリーズでは初めて声優を起用して、声を当てている。
この辺りも、本職の有名声優だけを使うのは避けて、あえて俳優畑の人間を抜擢するといった冒険を行なっている。
特に主人公とヒロインをあえて声優でない人間にしたというのは、相当苦労したと思われる。
理由としては多分単純で、オタクアニメっぽい空気にしたくなかったということだろう。茨の道に進んだことで、演技指導など大変だっただろうことが伺える。

続けて、ストーリーについても触れる。

前回、FF8のヒロインだったリノアの評判が良くなかった反動なのか、今回のヒロイン、ユウナはちょっと男に媚び過ぎな印象が?

ストーリーラインも、現在と過去が交差していくという骨子はFF8を踏襲している。

キャラクタがしゃべるようになったせいで、これまで文章だけでやっていて違和感がなかったことも、声を当てて見せていくことで、滑りがちな部分が見受けられた。

後、主人公の名前を変えることが出来るという伝統は意固地に通さなくても良かった気が?
FFシリーズは、主人公=プレイヤーという図式は崩壊しているのだから、変なこだわりはバッサリ捨てたほうが違和感がない。
ここをこだわったことで、今回フルボイスになったために、主人公を「キミ」と呼ぶようにしたり、劇中一回も主人公の名前が出てこないようになっている。無駄に苦労している印象だ。

最後に細かいことになるが、声付きになったことで、セリフがカプコン「バイオハザード」シリーズのように、映画の字幕的な表示の仕方に変わった。
声のついてない町の住人といった重要でない台詞においても、このような表示に統一された。
ゲームのインターフェイス的な見方からすると、工夫がなくなり、退化したと言える。

退化した理由としては、ボイス付きが前提のインターフェイスになってしまったことと、字幕表示の形式にしたことで、たくさんの文字が表示できなくなってしまったこと(表示しづらくなってしまったこと)。
この形式にしてしまうと、テキストに頼った表現が難しくなる。色々模索した結果だとは思うが、ゲームに最適なインターフェイスを今後も追求して欲しい所だ。

シナリオは、ちと抽象的、観念的な要素が増えてきて、悪い言い方をすれば独り善がりさが目立ってきた感じがする。

それから、ムービーシーンありきでシナリオが組まれている節が見られる。
そうじゃなかったとしても、実際の製作過程や真相はどうあれ、そう見えてしまうことが問題なのである。
プリレンダムービーとリアルタイムレンダの二段構えで見せていく手法を譲らないのは構わないのだが、ゲームとして、RPGとして考えると、統一感や整合性がとれてない制作手法がずっと踏襲されているのは、あまりいいやり方とはいえない。

プラットフォームが変わったこの段階で、制作手法の見直しや良いやり方を提示するぐらいはファイナルファンタジーというビッグタイトルなのだから、やって欲しかった。未だにFF7時代の方法を踏襲したままだったのはガッカリとも言える。

バトルパートについて語る。

内部の人間でガチガチに固めるFFシリーズにしては珍しく、「アークザラッド」「フロントミッション」等作ってきた土田俊郎(元ジークラフト、元メサイヤ系)をバトルパートのメインスタッフに据えている。
そのため、今回のバトルに関しては、いつものFFシリーズとは手触り感がかなり異なっている。

FF4から連綿と続いてきたアクティブタイムバトルを廃止して、素早さの高いキャラクタから順番に行動するアクティブターン制を採用。

ゲームバランスは、詰め将棋的な色合いが強く、序盤から中盤こそそこまでストイックではないが、一手間違えると全滅してしまうような、極端なパラメータバランスを取っている。
各パーティメンバーは、明確な個性分けがされており、その個性を活かした戦い方を求められる。
戦闘に参加できる人数は3人だが、キャラクタを使い分けることが大きなポイントとなっているため控えメンバーと好きなタイミングで入れ替えることが可能となっている。

全体的に、RPGでありながらシミュレーションRPG的な考え方が根底にあり、頭を使って戦わなければならない局面が非常に多い。簡潔に言い換えるなら、RPGとして見れば難易度が高めである。
パーティメンバー全員が育っているのが前提のバランスでありながら、S.RPG的思考でルールが組まれているため、戦闘に参加して何か行動しなければ経験値が入らないというのは、面倒くさいだけだったので、やめて欲しかった。
素直に、不参加のメンバーも経験値が入るようにして欲しかった。わざわざ使わないキャラも参加させて経験値を取得させる手間がテンポを阻害していて、ゲーム進行をだるいものにしてしまっている。

スフィア盤という成長システムが面白い。
FF10では、ただレベルアップしてキャラクターが成長するのではなく、スフィア盤を使って強化していく。
スフィア盤は、一種のすごろくのようなもので、「ちからが3アップ」「HPが200アップ」というマスがあり、通過する際に、マス目の効果を取得するアイテムを使うことで、それらの能力を手に入れることができる。
キャラクターは経験値を溜めてレベルアップすると、上がったレベルを消費して、消費した分だけスフィア盤のマス目を移動できる。
こうやってスフィア盤でコマを進めて、キャラクターを強くしていく。

各キャラクターのスタート位置が決められており、キャラクタが育ちきる終盤まで開発者のほぼ意図した通りの育成しか出来ないが、キャラを強くするタイミングを自分で決められるというのは煩雑さを残す作業ではあるが、面白い。
一応、中盤以降になると、他の仲間がいる場所にワープできるアイテムが手に入ったり、自由度が格段に高まってくる。ただ、普通に遊ぶ分には、思っていたほどの自由度はない。
逆を言うと、定められたとおりに育てることで、迷うことがないという利点もある。

このスフィア盤という成長システムは、カスタマイズ性が強く、革命とも言える面白さを誇っている。

しかしいっぽうで、装備品のシステムは、踏み込みが浅い感じがした。

装備品は武器と防具の2つあり、キャラごとに専用装備がある。
装備品自体に数値が変動したりする効果はなくて、セットできるアビリティの枠(1枠から最大4枠)と、手に入れた時点であらかじめ付いているアビリティがあり、そのアビリティの効果がそのまま装備品の性能となる。
例えば、アビリティの種類には「防御力10%アップ」「HP10%アップ」「状態異常防御」といったものがあり、入手した時点で、なんらかのアビリティが大体1個はついている。

この装備品を「改造」することで、強化することが出来る。
但し、強化できるのは、セットできるアビリティの枠が空いているものだけで、枠が空いていない、或いは「改造」で、アビリティの枠をいっぱいにしてしまったものは、改造できない。
「改造」するときに、アイテムを消費して好きなアビリティを付けることが出来るのだが、求められるアイテムが貴重なものだったりして、イマイチ改造しづらい。

あと、怒涛のように装備品が手に入るのだが、不要な装備品は売るか捨てるかしか出来ない。
どうせなら、この邪魔で使いものにならない装備品を「合成」して強化出来るようにして欲しかった。
それから、「改造」システムがある割に、強化できる上限が厳しすぎて、ちょっと凝ろうとしたらすぐ限界に達してしまう。
なんとも勿体無いシステムに落ちぶれてしまっている感じだ。

最後に、インターフェイス周りについて。

さすが、スクウェアのファイナルファンタジーだけあって、ユーザインターフェイスはすこぶる快適で、非常に良く出来ている。
特に感心させられるのがロード周りで、いつ読み込みに行っているのかわからないほど、快適にプログラムされている。
戦闘シーンの切り替わりも早くて、イベントで戦闘に入る時なんかは、擬似的だがシームレスに戦闘に移行するような工夫も見られ、かなり頑張っている。

文句のつけようのない高いクオリティではあるのだが、細かい粗も目立って見えるため、いくつか指摘する。

スフィア盤の操作性がちょっと良く無い。
盤上を操作する際に、たいていは思った方にカーソルが動くのだが、スフィア盤自体が曲線的な作りで、十字キーの操作に適さない構造をしているため、思ったように動かない時もあってストレスを感じることが多かった。

細かいことだが戦闘シーンのカーソル操作。
ターゲットを選ぶときの操作に統一感がない。
戦闘時のカメラ位置によって、ターゲットを選ぶ操作が変わってしまう。
極力、敵味方の位置に合わせて十字キーで動かしたとおりにカーソルが動くようにしたつもりなのだろうが、それでもトンチンカンな動作をすることが多くて、最後まで慣れることが出来なかった。
FF8やFF9の時は、ターゲット選択のウィンドウパネルを出すことが出来て、ウィンドウ単位で操作できるように対応していたが、できれば今回も同じような操作性にして欲しかった。
このへんの、お粗末さは、ちょっとファイナルファンタジーらしくない。

イベントシーンのスキップが出来ない。ボス戦で負けて再戦するとき長いイベントシーンをその都度見ないとならないのは辛い。

召喚獣の召喚シーンは、相変わらずスキップ機能がないが、コンフィグで短縮バージョンに切り替えることが出来るように対処されている。
ここまでするなら、素直にスキップ出来るようにすればいいと思うのだが、どうしても譲れないのものがあるのだろうと思う。

FF8で成功したカードゲーム(ミニゲーム)の二番煎じを狙ったつもりだろう、ブリッツボールのミニゲームは、直接的に本編に還元するものがなくて、遊ぶ気になれなかった。

挑戦的な要素が多いこともあり、長くなってしまった。

個人的に、FF7、FF8スタッフの作るRPGは、キャラありきで、キャラ重視で、見せたいもの作りたいことに対しての作り込みは凄いのだが、一方で、細かい配慮に欠ける部分が目立ち独りよがりさが鼻について好きになれないところが多い。
だが、ストーリー重視のRPGはどうあるべきか?シナリオプロットはどうあるべきか?バトルは?バランスは?ということも深く考えこまれてて、その辺はやはり一線級のスタッフが集まって作られた超大作RPGと感じさせるクオリティを発揮している。

特に今回は、FF8ではっちゃけすぎて反省したのか、パーティメンバーの入れ替わりは極限まで減らされ、煩わしさがなくなったり、宝箱が復活したことで探索する楽しさが出たり、思い切った作りをしていながらも、基本をはずさないような努力も見られる。

PS2で一発目のタイトルということもあり、物足りない部分やもっと作りこんで欲しかったところ、練り込み不足だと感じる部分も数多く残っているのだが、一発目でこのクオリティを叩きだした事自体がやはり凄いと言わざるをえないだろう。そこで結論。

これぞ次世代RPG。PS2の性能を遺憾なく発揮したお手本的ゲーム。





[2004/05/08-2014/01/16]
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