ファイナルファンタジー4 THE AFTER YEARS 月の帰還


対応機種Wii(Wii Ware)
発売日2009/07/21
価格800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 SQUARE ENIX / Matrix
戻る

ケータイアプリで配信されていた、「ファイナルファンタジー4」の世界観を引き継いだ作品が、このたびWii Wareでも配信された。
毎週追加シナリオが有料で配信される趣の変わった作りである。

本編と銘打って販売されているが、ストーリーの全容はわからず、導入部といった段階でスタッフロールが流れる。
プレイ時間もスムースに行って3時間30分程度と、ロールプレイングゲームとしては短い。行動範囲も制限されている。

毎週、新しいシナリオが追加されていくが、それは1本300円で、物語の結末部分に至っては800円の課金を求められる。
ご想像の通りだろうが、全部遊んで本来想定されている一本分のタイトルの内容と言っていい。
こういった追加課金コンテンツは、今の時代珍しくもないが、好きな人だけ買えば良いという風潮で落ち着いていた。
だが、この作品に関して言えば、はっきり言えるのが、切り売り商売であることだ。

有料ダウンロードコンテンツを、このような販売に利用することは、うすうす懸念していたことではあるが、とうとうスクウェアエニックスがやらかしてしまった。
本体として売り出されている、Wii Wareのこれは、導入編というか体験版レベルの商品と言っていい(察しがいい人は気づいていると思うが、価格の安さはそのためである)。

公式サイトでは、自分の好きなキャラクターを自由に選んで遊んでもらいたいと言う記述であるが、これはうまい方便である。

ケータイアプリ版より、お得にしているとはいえ、どうにも納得いかない。
これを買うと決めた時点で、ゲームの全てを遊びたい(コンプリートとまでは行かないが、本筋ストーリーを全部見るぐらいはせめて遊びたい)という欲求があるわけで、
それならば、パッケージタイトルとしてDS辺りにでも出せば良かったのではないかと思う。
なんだかんだ言っても、まだまだパッケージの方が売れている。有料分を全部購入しても値段的にもそれほど変わらないわけだし。

本編のゲーム内容全てがまだ明らかになっていない段階でレビューをするのは不適当とも思うが、これ以降のものは「追加コンテンツ」として位置づけているので、現段階での感想を書く。

「ファイナルファンタジー4」のキャラクターや世界観を引き継いだ、新しいストーリーが展開される。
なんだかんだで、「ファイナルファンタジー4」は、沢山の機種に移植され、リメイク版まで作られる人気作品になっている。
そこに便乗した本作品なのだが、たいていこういった後付けで作られたシナリオというものは、失敗してしまうことが多い。

個人的にも、オリジナル版で壮大に盛り上がった話が綺麗に収まったのだから、またほじくり返すことも無かろうと言う思いである。

ゲームシステムは、SFC「ファイナルファンタジー4」を踏襲した物で、ドット絵のキャラクターがマス目にそって歩き、戦闘についても奇をてらった要素の無いオーソドックスな内容だ。
昔のRPGにありがちな妙な理不尽さも引き継いでおり、なんというか、良くも悪くも古風なロールプレイングゲームと言える。
元が携帯ゲームなので、凝ったことが出来なかったという事情もあるだろう。

しかし、ただ工夫も何もない昔のゲームと言われるのは辛いのか、いくつか新システムも用意している。
まず、バンドシステム。簡単に言えば、連携攻撃である。「クロノトリガー」のアレみたいなものだ。
これは勝手に覚えるのではなく、そのほとんどを自分で戦闘コマンドを組み合わせて探すことになる。
ちょっと敷居が高い気もするが、本編が物足りないのでこれぐらい手探り感を与えてもいいと思う。

月の満ち欠けによる、コマンドの強化、弱体はなんだかごちゃごちゃした感じで余計モンって感じしかしなかった。
宿屋に泊まったりテントでやすむなど日をまたぐ行為をすると、月の満ち欠けが変わり、戦闘コマンドの威力に影響を及ぼすというものだ。
これは敵にも影響するので、魔法攻撃が強い敵には、魔法が弱くなる月の時に戦えば有利になるというような、戦略性を持たせたかったのだろうが、どちらかというと本来のバランスを壊しているだけにしか思えない。

グラフィックは、ケータイアプリの物をそのまま引き延ばした感じで、正直荒い。また、画面全体が妙にちらついている(シャープ過ぎる)が、慣れるとそれほど気にはならない。
というか、こういった面を安直に安っぽいなどと非難するのはお門違いだろう。敢えて、古めのテイストで作られた作品なのだから。

それだけに、プレイヤーの想像力にまかせた昔気質のイベントシーンが熱い。安っぽいエフェクトとテキストだけのイベントでも、ツボを押さえているので、逆にプレイヤーの気持ちを駆り立てる。
テカテカのムービーシーンで、上辺だけ豪華にするばかりが全てではないことを思い知らせてくれる。

しかし、「ファイナルファンタジー4」の後日談という設定が、ゲーム展開をちんけなものにしてしまい、スケールの小ささや適当な使い回しが残念な印象を与える。

ゲームバランスは粗っぽく、あまり良く無い。元々オリジナル版では、気持ち良く進められる爽快感のある絶妙なバランス調整だったが、本作ではいきなり敵が強くなったり、回復のためのMPが尽きてどん詰まりになったりする。
分割してシナリオを販売しているので、スケール感が無いのも苦しい。

なんだかんだで古いタイプのロールプレイングが好きな人には楽しめる内容だけに、販売方法や開発に手をかけてないことが非常に惜しい。
素直にDSで全部入れた物を、少し見た目も良くして出した方が断然良かったと思うのだが。

いくら低予算とはいえ、プログラムや視覚的な面にはもっと手を入れて欲しかった。そこで結論。

見た目に比べ熱いものが込められた作品。販売方法に難あり。





[2009/07/22]
戻る

inserted by FC2 system