ファイナルファンタジークリスタルクロニクルクリスタルベアラー


対応機種Wii
発売日2009/11/12
価格6990円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 SQUARE ENIX
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クリスタルクロニクルの世界観をベースにした、これまでとは異なるアクションアドベンチャーとなる本作。
Wii初期から発表され、期待度も高いゲームだ。

このシリーズは、多人数の協力プレイを重視したアクション・ロールプレイングであったが、今回は一人用で3Dアクションを楽しむ全然毛色の違うゲームになっている。
グラフィックデザインも一新され、等身が上がりリアルチックなものとなり、ここまで別物ならばわざわざシリーズの看板を背負う必要は無いのではないかと、批判の声も多く見えた。

個人的には、いつまでも同じ物を作り続けるよりかは、こうやって新しい物に挑戦するシリーズ作品が出てもいいと思う。
新しいことにチャレンジしなければ、やがてそれはマンネリになり、みんなに飽きられてしまう。
なんでもかんでも新規タイトルでやれば良いと言う物ではない。クリスタルクロニクルシリーズの固定概念が出来てきたなか、この路線変更は良いスパイスを与えている。

主人公は、重力を操る超能力者で、なんでも出来て、とっても強いという設定である。
リモコンでターゲットをロックして振れば、それが振った方向に飛んでいく。
敵と戦うときも、直接攻撃するアクションは無く、そこら辺に落ちている岩などを敵に向かってぶつけて倒していく。

この辺のシステムが、同社「聖剣伝説4」に非常に似ている。
変に立体感を出そうとしてかえってわかりづらくなっているセンスのないマップ構造といい、同じスタッフが作っているんじゃないかと疑ってしまう。

この会社のアクションゲームは、変にRPG要素を強くしてしまって、いつもうざったい印象を受けるのだが、今回はその辺りの要素が薄くしており、煩わしさがなくて良い(勿論アイテム集めの要素は残っているので凝って遊ぶことも出来る)。
3Dアクションだがジャンプが出来ない。ジャンプアクション出来る場面は限られている。また、構造的に落とし穴などもあるが、落ちても主人公の超能力で元に戻るので実質無いと思っていい。
敵が出現するゲートを閉じることでハートゲージがアップするアイテムが手にはいるなど、ゲーム内容が「ゼルダの伝説」シリーズに近い印象を受けた。

任天堂ホームページからみれる「社長が聞く」に取り上げられたが、その中で「アクションが苦手な人でもクリアが出来るように工夫した」というむねの開発理念が詳しく語られている。
その言葉通り、このゲームは原則的に、努力しないでもゲームクリア出来るゲームである。
たとえば、ボスキャラクターとの戦いで負けてしまっても、その場ですぐ復活出来て、相手の体力は減ったままの状態で始まったり、厳しいミニゲームは「諦める」コマンドが選べたりするのである。

「そんなゲーム面白く無いじゃないか」と思われるかもしれないが、クリア出来ないとなまじ主人公がヒーローという設定なので悔しいし、クリアするともらえる勲章がもらえない。

このゲームには任天堂「大乱闘スマッシュブラザーズX」のクリアゲッターに酷似した勲章システムがあり、これを集める必要はないが、ゲーム内のミニゲームをクリアしたり上手にプレイしたりすると勲章がどんどん集まるのだ。
目の前にモンスターが出現するフィールドがあっても、それを無視して進めても構わない。子供から「かくれんぼして遊ぼう」と誘われたり、老人から「釣りをやってみないか?」と聞かれても、気に入らなければやらなくても良い。
簡単にクリア出来ることで、ゲーム性の無いゲームと思われがちだが、それは正反対で、自発的に遊ぼうと思えば思うほどゲーム性は非常に強くなる。
ストーリーだけを追おうとすれば、それはこの会社のよくあるムービーゲーという印象しか受けないだろう。

従来の勝ち負けの結果を押しつけるばかりがゲームではないのである。本編はサブゲーム的なゲームが多く展開するので、単なるミニゲーム集と揶揄されるかもしれないが、個々のゲームのレベルはわりとしっかり出来ているので、完成度は高い。
ただ、Wiiリモコンを振るばかりのミニゲームが多いのが残念。個人的には、ゲーム開始直後のFPSが一番面白かった。

この割り切った作りは「アトラクションアドベンチャー」という定義にしっくり来る。
また、何もしなくていいという懐の広いゲームデザインは、さすが「ロマンシングサガ」を制作してきた人間が音頭を取っているだけのことはあるなと思う。

しかしそれだけに、ラストバトルの厳しさだけはその理念に反していて残念だった。

ヌンチャク+リモコンのインターフェイスは非常に良く、メニュー画面もコマンド操作を簡略化させるなどして、遊びやすく工夫をしている。
色々アクションが多く難しそうなゲームに見えるが、操作性は至ってシンプルで、すんなりと入っていけるのも特徴的。
ただ、リモコンを振る操作が多いので、ポインタを見失うことが良くあるのが残念。

グラフィックはハイレゾでWiiのゲームとしてはかなりクオリティが高い。
イベントムービーもリアルタイム処理で作られているが、一部で圧縮ムービーを使っている。このときだけワイド表示になるので違和感がある。
どうせなら全部リアルタイムで頑張って欲しかった。

フィールドマップは基本的につながっており、シームレスに読み込んで表示している。
マップ切り替えで画面が暗転したりしない。とても臨場感がある。
ロード時間もかなり早く、町中のノンプレイヤーキャラが自然に走り回っていたり(不自然さもあるが)、プログラムレベルはかなり高い。

このシリーズは、音楽なんかも抑揚が無く抑えめのものばかりで退屈で好きになれなかったのだが、今回はパンクで刺激的なBGM路線になっており、非常に良い(作風にBGMを合わせたとも言える)。

惜しむらくは、本編のシナリオムービーや登場キャラクタたちに魅力が無く、面白く無いということだ。
世界観も複雑で、このシリーズを理解していないと、序盤から固有名詞(種族)がバンバン出るので、付いていくのが非常に大変である。

大作にふさわしいクオリティを伴ったゲームと言えるが、クセが強く人を選ぶ難点を併せ持っているのも確か。そこで結論。

能動的な人であればあるほど面白い。





[2009/11/14]
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