小さな王様と約束の国 ファイナルファンタジークリスタルクロニクル


対応機種Wii(Wii Ware)
発売日2008/03/25
価格1500円
発売元スクウェアエニックス

(c)2008 SQUARE ENIX
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国造りRPGというファイナルファンタジーとしては異色のジャンルの本作は、WiiWareのサービス開始日に合わせて開発された。
WiiWareとは、要するに、Xbox360やプレイステーション3で既におこなわれている、ダウンロード販売専用タイトルのWii版である。
今まで、Wiiでもバーチャルコンソールという形で、レトロゲームを配信していたが、このたびオリジナル作品の配信もスタートした。

ダウンロードコンテンツということで、パッケージタイトルと違って、容量に厳しい制約がある。国造りRPGというゲーム内容もその制約から来ている。

プレイヤーが出来ることは一国の王様となり、国の発展と付近の魔物の親玉を撃破するための冒険者の育成である。
これだけを書くと、複雑そうなシミュレーションゲームを想像するかと思われるが、このゲームはこれでもかってほど至ってシンプルである。

王様は自分の城下町から出ることが出来ない。決められたスペースに、好きな建物を建てて、町を発展させる。
発展させるには城外にあるダンジョンに赴き、精霊石を集める必要がある。このために冒険者をつのって育成させるという要素がある。

このように国造りと言っても国盗り合戦を繰り広げる「信長の野望」や「三国志」みたいなゲームよりも、本質的には「シムシティ」に近い。
ただ、町の中を王様というプレイヤーキャラを操って、物事を決めていく感覚はきわめてロールプレイングゲーム的と言える。

この手のゲームに慣れてないユーザーに配慮したのか、出来ることに非常に制限がかけられており、自由度はきわめて低い。つまり、時間さえかければ確実にクリア出来る(1、2箇所工夫するところはあるが)。
冒険者がやられてしまったときのペナルティも甘く、死んでいなくなるのではなく数日療養して復帰という程度である。
精霊石を消費して建物を、お金を消費して装備品やアビリティ開発をおこなうが、基本的に資金難に陥ることはないので好きにやることができる。
本当に“そういうこと”を気にせずに遊べるゲームで、逆にそういう歯ごたえを期待しているプレイヤーには期待はずれのゲームとなってしまう(ただ2周目になると自由度が上がって面白くなるようだ)。

実はこのゲームが面白いのはそういう部分ではない。遊び手が関与出来ない部分で複数の様々な要素が自動的に進行しているという点だ。
たとえば冒険者が外で冒険をしてくる。この点についてプレイヤーは、おふれを出すという指示しか出せない。指示を受けるかどうかも冒険者のAIに託されている。
そのおふれに見合わないレベルであれば受けに来ず、勝手に自分に見合ったダンジョンに出かけていってしまう。
武器屋や防具屋などを建てた時も、自発的に手持ちのお金から装備品を購入し、冒険に出かける。
一日の行動は次の日の朝、大臣からの報告という形で、かなり細かい部分まで詳細を見ることが出来る。
敵との戦闘で受けたダメージ与えたダメージや取った行動の一つ一つまでも記載される徹底ぶりだ。

ゲームが進行すると、こちら側で任意にパーティを組ませることも出来るが、勝手にパーティを組んで出かけるようにもなる。

冒険者以外にも、町の住民も外を徘徊しており、話しかけたりも出来る。ただうろついているのではなく、お店に出かけたり、他の住人と井戸端会議をするために動いていたりと、必ず意味のある動きをしている。
ゲーム的に自由度は低く関与出来る部分は少ない物の、内部的な処理にかなり手間をかけているはずで、こういうAIを眺めているのが非常に楽しいゲームである。

で、やることが少ないのでは、せっかく町を歩けるように作っているのにすぐにスキップされてしまいもったいないということで、幸せ振りまきシステムというものが付いている。
これは町の住人や冒険者に話しかけることで幸せゲージが上昇し、ゲージが溜まった時に「幸せをふりまく」というコマンドを選んだ時、ゲージを消費する変わりに、町の住民が暮らしている家庭の友好度が上がったり、出かける前の冒険者に話しかけることで能力値が上昇するといった、わずかばかりゲームが優位に進むようになるシステムである。
実際さっさとスキップして日数を進めるよりも、町の様子を一日の終わりまでじっくり観察するほうが面白いものがある。愛着もわくというものだ。

見てるばっかりで面白くないと思われるかもしれないが、確かにそれは一理ある。
たとえば、探検したダンジョンのボスを倒したらそれが図鑑に記録されたり、珍しい宝を発見するという要素を付けて、入手したらお城に保管されるというものがあれば、もっと張り合いが出たかもしれない。
クリアしてもただ建てられる建物が増えるだけ、沢山の精霊石が手に入るだけでは、単調になってしまう。

一応、RPGチックなストーリーも要所要所に挿入されるが、後付と開発者自らが語っていることもあり、それを目的にプレイするものではない。そもそも、容量的に饒舌でボリュームのあるシナリオは用意出来ない。あくまでおまけ程度に考えるべきである。
また、ファイナルファンタジーにしては珍しく主人公が喋らない。

グラフィックは2003年にゲームキューブで発売された「ファイナルファンタジークリスタルクロニクル」のものを流用しているとのこと。
これは、単純に少人数開発とコストカットを目的としたもので、今回の開発で重点に置かれている。いわゆる苦肉の策であるが、WiiWareではオリジナリティの高い作品ということもあって、今回のこの開発体制は良質なモデルケースとして注目を浴びているようである。

流用とは聞こえが悪いかもしれないが、ゲームキューブ版の時点で相応のクオリティをはき出していたので、見劣りするなんてことは全然無い。しかし、このクリスタルクロニクルシリーズのデザインもなかなか上品だ。本編のナンバリングにも採用して欲しい気もする。

メニュー周りの操作性が若干悪いことが気になった。この辺の感触はかなり雑である。決して低くない水準のグラフィックで、好きにいじれるマップということもあって、やたらと処理落ちが目立つのも残念。ただ基本的にクオリティは高い。
そこで結論。

受動的にならざるを得なかったゲーム。一捻りすればもっと面白く化けたかも。





[2008/03/29]
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