フロントミッションエボルヴ


対応機種プレイステーション3/Xbox360
発売日2010/09/16
価格7800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / DOUBLE HELIX GAMES
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「ヴァンツァー」と呼ばれるロボットを扱った、シミュレーションRPGでおなじみ「フロントミッション」シリーズの最新作が久々に登場。
ジャンルはS.RPGではなく、サード・パーソン・シューティングで、開発は海外ゲームメーカーのダブルヘリックスゲームズに発注している。

これまでもこのシリーズは、ロボットアクションに挑戦してみたり、意欲的な面があったが、本作を敢えてシューターゲームにした理由に呆れてしまった。
要するに、グローバル路線でやっていくためだけの理由でシューター路線にしたのであって、それ以外のことは何一つ考えていないのである。
後付の理由で、アクションの苦手な旧来のシリーズファンにもクリアできるようなゲームバランスを取る配慮をしたという言い訳はしているが、まず海外ありきでゲーム制作を行っている。

まず、理由が薄っぺらいし、その流れで世界で売れるためには外国の会社につくらせないと駄目だという考えもあまりに安直すぎてがっかり。推測が入っているが、もし当たっていたらとてもヒットメーカーとは思えないほどの凋落ぶりだ。
わずかかもしれないがフロントミッションは国内のファンも新作を待ち望んでいたはずの作品だ。そのファンをないがしろにしてどうする。
イベントムービーの声が英語だけって言うのにも、向こうに媚び過ぎな感触を持ってしまい、好きになれなかった。あまりに、日本人のプレイヤーを軽視しすぎじゃないか?

ゲームは、アメリカの会社が作ったので、プログラムやインターフェイスなど手触り感は、非常に洋ゲー色が強い。企画周りは日本人がやっているようだが、ゲーム制作に関わっているのなら、もっと和製ゲームの良いところを取り入れるなどしなかったのだろうか。
どうにも、作りが全体的に荒っぽくって、違和感を感じる。これが洋ゲーだとしたら、ここまでケチはつけなかったのだが(同じ手法で任天堂も結構な数手がけているが、あっちのやり方がかなり上手い)。

ゲーム内容は、ストーリーに沿ってゲームをクリアーしていくキャンペーンモードと、ネットワークにつないで多人数で対戦できるマルチプレイモードが用意されている。
ここのレビューでは、マルチプレイは未プレイなので割愛。キャンペーンモードをクリアした段階での感想を書く。

いわゆる良くあるサード・パーソン・シューティングというよりは、操作の複雑さなどもあり、ロボットアクションに近い印象を受けた。
自機の装備品をセットアップすることも出来て、自分好みの機体にいじくることが出来る。そんなのめんどくせーよ!って人には遠距離用、近距離用といったセット品を選ぶだけで自動で強化してくれる機能も付いている。
パーツの種類はかなり多くあり、自由度が非常に高い。近距離武器としては、格闘武器、マシンガン、ショットガンなど、遠距離武器にはミサイル、ライフルで狙撃したりなど。
バックパックには、機動力を高めるものや、回復機能を備えたもの、電子妨害出来る物など多種多様で、色んな性能のヴァンツァーを作り出すことが出来る。スキルを付けることでさらなるパワーアップも可能となっている。
この辺は本来、シミュレーションRPGだった「フロントミッション」のシステムを上手く3Dアクションに落とし込めている。だが、このシリーズを知らない人に取っては、とっかかりが煩雑でシビアかもしれない。知っている人ならすぐに入り込める。

しかし、ゲーム自体の出来上がりは大味で、ロボットアクションにする必要性はなかったんじゃ?と思えた。ミサイルのロックオン機能が優秀だし、格闘武器も強力で、ダッシュで近づいてぶん殴っているだけでザコキャラのほとんどはあっさりと倒せてしまう。
地形が、せっかくカバーしながら戦うような設計にしているように思えるのだが、ゲーム調整がフリーダムすぎて、力押しで先へ進めてしまう。それは悪いことではないのだが、駆け引きの面白さがほとんど無く作業的で、派手さだけはあるが、裏をかえせば薄っぺらいゲームということだ。つまりは、飽き易いと言える。

このシリーズではおなじみの部位破壊が今一つ機能してない印象を受けた。両腕を破壊すれば腕に装備していた武器が使えなくなり、足を破壊されれば移動速度が遅くなるなどあるが、結局は実質的なHPである胴体をいかにやられないようにするかが全てになっている。自分の足が破壊されればかなり痛いがそれ以外は影響が余り無い感じ。
寧ろ、相手も胴体をピンポイントで狙ってくることが多い。胴体のみ自動回復(一定時間ダメージを受けなければ体力が自動回復する)する。

周りの速度をゆっくりにして、敵を倒しやすくする救済システムが入っているが、ゲージの溜まりが今一つ悪いので、使い勝手が悪い。
ボス戦が全般的に厳しい。多対1であることがほとんどで、相手は勿論のこと高いヒットポイントで、なかなか倒れない。終盤のボス戦は厳しすぎると思う。かなりこのゲームに慣れないと倒せないと思う。
どうも、上記システムを使って倒すことが前提に作られている節がある。しかし、肝心の使いどころも分かりにくいという困りものだ。

ヴァンツァーから降りて生身の状態で進むステージも用意されている。こちらは一般的なサード・パーソン・シューティングに近い。
ただ、こっちも全体的に作りが甘く、カバーアクション(壁に張り付いて隠れながら敵を銃撃する)がないし、そもそもテイクダウン(近づいて銃で殴る)が強力すぎて、ほとんどそれだけやってれば先へ進めてしまうほどひどい。
相手は殴ってこないし、回復アイテムを良く落とすので、こういったごり押しが有効になってしまっている。

2つのパートを欲張って作るから、このような散漫なゲームになってしまうのだろう。ま、人間パートはおまけ程度に作ったのだろうが。ただ、操作まで変わってしまうのは勘弁して欲しかった。覚えるのがしんどいのである。
これでも頑張ったのだろうが、もっと統一性を持たせて欲しかった。

最大の不満点は、攻撃を食らった時のエフェクトが無いことだ。普通のゲームだと、派手なSEと画面が真っ赤になる演出が入るが、このゲームでは一切なし。
つまり、自分でHPのゲージを見ながら、状況を確認しなくてはならない。こればっかりは、何とかして欲しかった。シューターゲームの基本的な演出技法なので(ダメージを受ける=危険な場所と認識させる)、ここを外しては駄目だろう。

グラフィックはそこそこ綺麗(30fpsにしてはイマイチな気がするが)だが、画面が見辛く、目が疲れやすい。一日ちょっと触っただけでひどい眼精疲労に襲われてしまった。
特に、文字フォントが白色で、たまに背景色とかぶってしまうことがあり、非常に読みづらい。縁取りをつけるぐらいやって欲しい。
また、いまどきカメラ操作をノーマルとリバースに切り替えられないのにも閉口。このゲームはノーマル操作なのだが、自分はリバース派なので非常に苦労した。

ロード処理も長い。ポーズしたときにすらロードしに行くのはストレス。

実制作は海外だが、ゲーム内容に関しては日本人が担当しているのだろう。ムービーシーンの入り方とか、シナリオとかは和製ゲームっぽい。具体的に書くなら、ストーリーはこの会社特有の青臭さがあるし、ゲームの途中で冗長なイベントムービーが良く入り、テンポを悪くしている。
ヴァンツァーの設定とか、ぶっちゃけ面倒くさいし、しかし、新しいパーツを買って強化していかないと、厳しくなっていくゲームバランス。和製ゲームらしい、かったるいボス戦闘。洋ゲーのお気楽お手軽さが無い。変に国産ゲームの面倒くさい部分だけを持ってきてしまっている。
なんだか、国産ゲームと国外ゲームの悪いところばかり合体してしまった感じだ。この会社はアクションゲームを作るセンスが無いのだから、基本的にこの手のゲームに関わっちゃダメだ。

本場のシューターゲームはこんなに厳しい取っ付き悪いゲームではない。このゲームはシステム面でだいぶ難易度を上げている(ゲームそのものが難しいというわけではない)。このゲームだけを遊んで、海外では人気の銃で撃ち合うゲームなんてやっぱり…と判断しないで欲しい。そこで結論。

駄目なコラボレーションの典型。





[2010/09/20]
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