フラジール 〜さよなら月の廃墟〜


対応機種Wii
発売日2009/01/22
価格6800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2009 NBGI / TRY-CRESCENDO
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Wiiリモコンを懐中電灯に見立て、一人廃墟を探索する、完全新作ゲームが、この「フラジール」である。
開発は、「トラスティベル」を生み出した、トライクレッシェンドである。

ジャンルを廃墟探索RPGとさも新機軸を打ち出しているが、なんてことはない、「バイオハザード」などに代表されるホラーアドベンチャーである。
グラフィックはアニメ調だし、ストーリーもホラー系ではないのだが、演出で無理に恐怖感をあおっている印象がある。

RPGとジャンルに書かれてあるとおり、レベルアップやお金といった要素も組み込まれているのだが、はっきりって蛇足である。
武器は、銃器ではなく、竹刀や弓といったものだが、破損率が設定されており、使い続けているといつか壊れてしまう。「バイオハザード」で言う、いわゆる弾切れ状態である。
ショップの概念もあり、お金を消費して回復アイテムや武器を購入出来るが、基本的にRPGのように敵と積極的に戦って経験値を稼ぐといった楽しみは薄いと言えるし、アプローチの仕方が下手だ。
敵とはほとんど戦わなくてもステータス不足で進めなくなるということは無いので、結局、要所要所のボス戦で、アクション苦手な人がクリア出来るようにという救済措置のつもりなのだと思う。

ビジュアルはなかなか綺麗だ。さすがにプレイステーション3やXbox360のゲームには負けるが、どのテレビで見ても写り込みが綺麗に見える。
綺麗さだけではない、グラフィックのセンスも良い。こういう綺麗さは、ただ高性能マシンを使えば出来ることではない。デザイナーの技量が高くなければ実現出来ないことだ。
廃墟が舞台ということで、崩れかかった壁や壊れたオブジェなどの作り込みが凝っていて、ただ見て回っているだけでも面白い。

マップも結構広いし、バリエーションも決して少なくはないが、マップパーツの使い回しが非常に目立つ。
同じ風景がずっと続いたり、見覚えのあるパーツ構成が何回も見受けられると、この手のゲームでは興ざめしてしまう。

操作性は、サードパーソンシューティングのスタイルに近い。ヌンチャクのスティックで移動、リモコンで視点操作である。
従来だと、ただリモコンのアイコンが表示されているだけだが、本作では、リモコンの差ししめしている方向に懐中電灯を向ける。この応用がうまい。若干精度が悪いのが気になったが…(画面の奥を見たいのに、手前に反応してしまうなど)。
また、懐中電灯を使った下手なゲーム性を持たせなかった点も評価したい。こういう売りを一つ付けると、それをもっと広げようと欲が出るものだが、あまりそれ(懐中電灯の光)をゲーム性に絡めなかったことで、くどさがなく、いいバランスに仕上がったと思う。
その代わり、ゲーム画面は全体的に暗めに設定されていて、懐中電灯のライトを向けないと視界がわからないようになっている。
ただ、この手法は、テレビ側の明度調整を上げられると通用しないのが弱点だ。

アクションのプログラムは残念ながら、あまり褒められたものではない。出来が悪いので、遊びたいと思わない。この点、カプコン「バイオハザード」は、沢山のごまかしと得意のアクションプログラミングを駆使して、非常に良い(というより、万人に受ける)操作性を生み出していた。
もし、アクション、アドベンチャーいずれかの完成度が著しく低かった場合、あそこまで成功しなかったろう。このゲームを遊ぶと、切に感じる。

イベントシーンでの字幕は、この手のゲームではほとんど見かけない、縦書きのスタイルを取っている。
それ自体は良い、文字に陰影や縁取りを付けないので、同じ色合い(このゲームのフォントカラーは白)が重なると、まったく文字が読めなくなってしまうことだ。
全体的に暗がりのゲームだから大丈夫と思ったのだろうが、かなりの場面で、文字がかぶって読めないことが目立った。

メニューインターフェイスはあまり良くない。
まず、メニューの呼び出しが、リモコンの十字キーを押すのだが、キーそれぞれにアイテム、ステータスといったショートカットが割り振られている。メインメニューという概念は無い。
このショートカット機能が実に惜しかった。あらかじめ割り振られているのではなく、こういう物は、自分でカスタマイズしたいのである。
結局最後までどのキーがどのコマンドのショートカットなのかなじめずに終わってしまった。
また、右キーだけは、アイテムの消費画面へと移行する。回復アイテムはここでしか使えなかったりする。メニュー画面のアイテムリストから使えても良いだろう。不便。

メニュー画面内の操作にしても、リモコンでカーソルをあわせて操作することを主軸においているのだが、このゲームの発売時期を考えるとちと稚拙な作りだ。
なんていうか、Wii立ち上げ期のゲームのレベル。それこそWii「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」と発売時期が近い感じのクオリティである。もうちょっと練り込んで欲しい。

ストーリーは、語り不足の感は否めない。
拾ったアイテムの中には、元の所有者の過去の断片がかいま見えるというシステムがあるが、本編だけじゃあまりに物足りないから後付で付け足した気さえするほど。

過剰とも言えるほどセーブポイントが多く、セーブポイントに触れるとヒットポイントが全回復する。
そのためか、アクションゲームとしてのバランスはかなり低い位置にあり、緊張感が無いだらだらとしたプレイになりがちになる。
せっかく持てるアイテムに制限を持たせたりしても、セーブポイントでアイテムボックスに楽に収容出来てしまうので、この要素もあって無いものになってしまっている。

ただ、ロード時間は早い。この会社(トライクレッシェンド)のゲームは、ディスクアクセスに関しては凄く良い仕事をする。

持てるアイテムの数に制限があったり、アクション自体の難易度が低く、プレイ時間も、そこいらのホラーアドベンチャーとほぼ同レベルの平均的な出来。
画期的、斬新さを前面に出すにしては、あまりにお粗末な内容だ。ただ、発想や企画は良い。しかし、作り込みが足りない。最近のWii用タイトルに良く見られる光景だ。そこで結論。

平々凡々なホラーアドベンチャー。RPG要素に釣られて買っちゃ駄目だ!





[2009/01/25]
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