幻想水滸伝3


対応機種プレイステーション2
発売日2002/07/11
価格6800円
発売元コナミ

(c)1995 2002 KONAMI / Konami Computer Entertainment Tokyo
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コナミは、企業拡大に伴ってビジネスライクなメーカーに変貌していったわけだが、その割を食ってしまったのが元来生業としていたゲームソフトたちである。
そんな“大人の事情”に潰されていった人気シリーズは少なくない。そして、この幻想水滸伝にもそんな魔の手が忍び寄ってしまったのである。

プレイステーション2で出すということで、色々新しい挑戦をしたいのはわかるが、どーもシリーズの味を分かってない人間が作っているせいか、かろうじて幻想水滸伝っぽさがあるだけで、中身自体はほとんど別物。
冷静に見ても、ゲーム全体の出来もおせじにも良いとは言えない水準で、クリアするまでの数十時間、かなりの苦痛を味わった。

全編ドット絵による流れるようなテンポの良さがウリであった、旧作とは正反対に、フルポリゴンで描かれたフィールドマップに変化に乏しい退屈で冗長なイベントシーン。
加えて、短いとは言えないマップ切り替えのディスクアクセス…。
全体的に一年前に出たスクウェア「ファイナルファンタジー10」にだいぶ影響を受けているようだが、見様見真似の物真似レベル。
マップをフルポリゴンで作ってるためか、量産出来ない苦しさからか、フラグ立てのために同じ場所の行ったり来たりがとにかく多く、非常に苦痛。

まずマップは結構綺麗ではある…が、キャラクター周りは苦しいと言わざるを得ない。特にFF10や同社「メタルギアソリッド2」なんかを見てしまってると尚更つらい。
せめて、SCE「ワイルドアームズ Advanced3rd」ぐらいは頑張って欲しかった。
また、一番問題なのが、カメラワークの動きのひどさで、プレイヤーに寄りすぎな上に、随分とお節介な動きをするせいで、かなり迷うし、障害物に引っ掛かる。
右上にレーダーマップを付けていることで、かろうじて居場所を把握出来る程度で、場所場所でカメラ位置に統一感もまるでなくバラバラで、混乱することもしばしば。
とても老舗ゲームメーカーの仕事とは思えない駄目っぷり。

新しい試みとして、3人の主人公を選んで多面的にシナリオを追っていくトリニティサイトシステムがある。
チュンソフト「街」のように、それぞれのシナリオが絡み合っている構造は、意欲的ではあるが、これがゲーム全体の実に2/3を占め、
同じ時間軸を一つの出来事に対して、3回も行ったり来たりして見ていくのは、正直言ってかなり辛い。
こういうのは、RPGには不向きだろう。せめてSCE「ワイルドアームズ」シリーズのようにプロローグ的な扱いに留めて欲しい。
主人公キャラが喋るようになったこともあり、よりシナリオの主張が強くなっていて、これならばRPGではなく、幻想水滸外伝でやったテキストアドベンチャーのほうが健全と思えるほどだ。
それに、このシステムはどちらかというと、少ない分量でボリュームを出そうという苦肉の策っちゅう印象が否めない。
やはりRPGは、その都度新しい土地に踏み込み冒険していくことに楽しみを覚えるものである。
それをシナリオの進行上という都合で、同じ場所を何度も舞台にされてしまうのは退屈で仕方が無い。

システムもかなり頭でっかちな複雑さで、煩雑、面倒といった部類。メニュー周りのインターフェースは改良の余地あり。あれは分かり辛いし、操作しづらい。
スキルシステムは、それ自体はなかなかキャラクタに特色を付ける要素としては面白いものだが、
なにせ、S.RPG並にいるパーティキャラを管理するのは至難。おまけに、この辺の仕組みが不便すぎてやる気になれない。
まぁ、特定の店でしかスキル成長が出来ないのは許そう。しかし、魔法系、肉弾系の二つにまでスキルカテゴリを分けたのは失敗だった。
この2つは、同じ場所で調整が出来ず、キャラごとに向き不向きのスキルもあったりで、その辺の操作の配慮の無さも問題なのだが、この辺を凝ろうと思ったら、異常に時間がかかってしまう。
本当にちょっとした気遣い一つで印象がガラリと変わることなのである。その点で、非常に惜しい。

戦闘システムも、なかなか新しいことをやっている。
簡単に例えると「グランディア」のシステムの自由度を奪って理不尽にした感じ。
魔法に詠唱時間があったり、戦闘フィールドを駆け回って敵と戦うっていうところはまったく「グランディア」と一緒。
ただ、こっちはターン制なので、いまいち融通が利かないし、行動順がわかりにくく、ダメージ計算やパラメータバランスも大味すぎて真面目にやる気になれない。
加えて、6人パーティのコマンド入力の面倒さに対する解決策として打ち出したつもりだろう、2人一組になって戦うバディシステムも、どちらかというとコマンド入力の融通が利かなくなった不利さが目立ちストレスになっている。
敵の数は少なく使い回しが多く、一昔前のPCゲームのようないい加減な戦闘エフェクト(しかもどれも結構長め)といい、この辺の出来の悪さにはガッカリするばかりだ。
難易度もいい加減で、運に任せるような滅茶苦茶さがあり、一部のイベント戦闘では、そのシビアさからイライラさせられることも決して少なくなかった。

シリーズ恒例になっている、戦争イベントは、地形効果や位置取りによって、多少は駆け引きの面白さが生まれたが、相変わらずインチキ臭いところやS.RPGとしては「んな阿呆な!」と首をかしげたくなる箇所も残っており、今一歩。
そもそもRPGで、ここまで本格的にS.RPG的なものを入れようとするのはナンセンスな気がしないでもないのだが。
(個人的には一作目ぐらい軽い作りの方が好きだった)

108人の仲間集めは健在だが、そもそも今回は舞台が狭いので、それだけの大人数を散らばすほどの許容量が無く、突然仲間が増えたりと、なんだか集める楽しみが薄れ、形骸化してしまったようにも思う。

アドバタイズムービーではセルアニメーションなのに、本編ではすべてポリゴンキャラなのもどうかねぇ。最初のアニメ映像はなんだったんだっちゅう感じだ。

結局は、PS2用ゲームソフトの予行演習を兼ねた作品であって、それに人気シリーズの幻想水滸伝の名前を乗っけただけのものなんだろう。
その事情はわからんでもないが、しかし1990年前後のあのコナミの勢いはどこにいってしまったのか…。ださいBGM。三流の技術力に、巷の大作ゲームにさっぱり追い付いてこれてないゲーム内容の駄目さ加減。
金儲け主義も悪いとは言わないが、今一度ゲーム作りの原点に立ち返ってはどうか?

人気シリーズの続編とは名ばかりの別物実験作。当然オススメは出来ない。





[2006/02/18]
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