幻想水滸伝ティアクライス


対応機種ニンテンドーDS
発売日2008/12/18
価格5500円
発売元KONAMI

(c)2008 KONAMI / Konami Digital Entertainment
戻る

水滸伝をモチーフにした人気ロールプレイング、「幻想水滸伝」新作がニンテンドーDSで発売。
星に定められた108人が集い強大な悪と戦う物語性や、快適に練り込まれたゲームシステムといった、基本的な要素は全て継承し、さらなる改良が加えられている。

容量の制限があるなかで、アニメーションムービーの挿入や、イベントボイスの分量がかなり多く、非常に頑張っている。戦闘シーンでも良く喋る。
起用された声優も、わりかし豪華な顔ぶれをそろえており、その方面での頑張りも評価出来る。
そうでありながら、ゲームとしてのプレイボリュームも30時間程度と、納得いくものを作り上げており、申し分ない作りだ。

グラフィックは、マップが一枚絵でキャラクタがポリゴンである。スクウェア「ファイナルファンタジー7」と同じ形式である。
マップの出入り口にはアイコンが表示されるところも「ファイナルファンタジー7インターナショナル」を参考にした感じだ。

戦闘画面はフルポリゴンで描画されている。テクスチャーのクオリティもなかなかのもので、綺麗である。

ただ、キャラクタ造形に関しては、中途半端にデフォルメをかけられているので、残念な出来と言わざるを得ない。
フィールドでは小さすぎて、誰が誰だかわかりにくいし、戦闘画面では、不自然さが際だってしまって、どっちつかずになってしまっている。

ゲームシステムは、従来のシリーズよりも、さらにオーソドックスなスタイルに変更されており、
回数制だった魔法が、MP消費制に変わったり、武器も強化するタイプから、防具と同様に付け替えるものに変わった。
どちらも、より取っつきが良くなる変更が加えられたと見ていいと思う。
パーティメンバーも6人だったものから、4人に減っているのも、テンポが良くなっていいものと思う。

インターフェイスデザインは、全てコマンドはアイコンを使っているが、わかりづらいので、文字で表記して欲しかった。
また、キーレスポンスも、コマンド入力の挙動が曖昧で、操縦性に難が見受けられるのも気になった。
アイコンのコマンドについては、DSの画面サイズも考えて設計されたのだと思う。見栄えもいいし。しかしインターフェイスの完成度に関しては劣ってしまっている。

タッチペン操作にも対応しているが、正直言って操作性はかなり悪い。

このシリーズは、個人的にはキャラクターゲームだと思っている。キャラを売りにして商売してるような感じだ。
そういう面だけで見ると、会話時に立ち絵が表示され、キャラごとの表情も豊富であったり、ボイスも多く収録されているなど、コナミもやっとわかってきた感じだ(正味6作目にして、ようやくわかって来られても遅すぎるのだけど)
同社「クイズマジックアカデミー」での成功もあってか、この手の路線の、登場キャラの魅力の出し方のツボも手堅く押さえてきていて、高い評価を与えられる。

また、このシリーズは「ドラゴンクエスト」同様、主人公は喋らせなかったが、今回はガンガン喋る。勿論ボイス付きだ。
この方針転換は、成功だと思う。主人公だけ喋らせないゲームというのは、作る方が難しい。本当は喋らない方が理想的ではあるのだけど、出来ないのなら喋らせて、全体的なクオリティを高める方向に持って行った方が良い。
ようは、ゲームのキャラクターに上手に感情移入させれば成功なのである。

もう一つの売りでもある、ストーリーについては、今回はかなり毛色を変えており、ファンタジー色が強い路線になっている。
いわゆる、パラレルワールドを主題に持ってきたものになっているのだが、水滸伝とはテーマがかけ離れすぎてるし、もっとシリーズ恒例の知略を練ったシナリオ展開が見たかった。この内容じゃ軍師がいていないようなものだし…。

ゲームバランスは、相変わらずテンポが良く、引っかかることなくスイスイと進めることが出来る。
「幻想水滸伝」と言えば、戦闘シーンの処理の速さが特徴的だが、今作も例に漏れず、テンポ良く戦闘シーンが展開し、イライラすることが少ない。
フルポリゴンということもあって、カメラも派手にガンガン動くし、かつ、くどすぎない絶妙な位置。ま、この辺は、評価の高い初期の頃の作品とまんまおんなじ作りなんですけど。

しかし、ダンジョンマップがやたら広いことや、一部敵キャラクターの高い攻撃力やヒットポイントなど、気になる面も多い。

容量の都合もあってか、あまり舞台も広くなく、ストーリーもこじんまりと終わってしまうのも残念。

サブイベントであるクエスト周りのシステムは面白いのだが、数が少ない。頑張ってもっと沢山入れて欲しかった。
また、クエストの関係か、日数のシステムが採用されている。
いわゆるワールドマップは、地図上から行き先を選択するタイプのものなのだが、移動する際に日数が経過する。派遣クエストの関係で入れた要素だと思うのだが、違和感バリバリである。
ぶっちゃけ、無くてもいい。

一枚絵のフィールドマップは、立体感が出る反面、従来型のダンジョンマップなどには向いておらず、広さを出したいがために、似た地形が延々と続くつまらないものになっている。
このマップの大きさや構成なら、下画面だけじゃなくて、イメージ画を表示させてるだけの上画面にもマップを表示させれば、不快感を感じずに遊べたように思う。

全体的に丁寧な作りで、プログラムレベルもわりかし高い。音楽も相変わらずいいし、シリーズの長所をどんどん取り入れている。
凄く良いゲーム…になるはずなのだが、今一歩押しが足りない。
新しい試みとして、Wi-Fiに対応し、育てたキャラクタを貸し借りしてクエストに挑めたりするが、正直いらないだろう。使い方もわかりづらいし。

結局、かなめであるシナリオ展開やバトルシステムに良い印象を持てなかったからなのだろう。
しかし、奇をてらったゲームシステムばかりで勝負してくる近年のロールプレイングゲームと違い、シンプルさと遊びやすさを追求した本作に存在意義は少なからずあった。そこで結論。

今一度、基本に立ち返ってみては?





[2009/01/12]
戻る

inserted by FC2 system