幻想水滸伝 紡がれし百年の時


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2012/02/09
価格5980円(UMD)/5480円(PlayStation Store)
発売元KONAMI

(c)2012 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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前作「幻想水滸伝ティアクライス」から約3年ぶりとなる、シリーズ最新作。

この会社は、どうにもRPGを作るのが未だに苦手らしく、なんというかあらゆる部分でトンチンカンな出来になってしまっている。
3作目以降の迷走っぷりを見るに、シリーズ一作目、二作目が奇跡としか言い様がないクオリティといっても過言ではない。
このように、まるでさっぱり作れないというわけでもなく、稀に突き抜けたRPGを作ってくるから困ったものだ。

ゲームとしてはもう「運命に導かれた108人が仲間になる」以外はまるで関係ない、別物になっており、「幻想水滸伝」の冠をかぶせる必然性を感じない内容である。

ストーリー重視のシリーズだが、それにしたって、イベントシーンが多すぎる。もはやストーリーをなぞるだけで、ゲーム(RPG)としてプレイする部分がほとんどないといっても言い過ぎではない。
イベントはフルボイスとまではいかないが、大半のシーンを声付きで喋ってくれる。また、PSPの性能だと人物のポリゴンが弱いということで、バストアップ絵が表示される。
おかげで、どちらかというと、ギャルゲーのビジュアルノベルの合間に、出来の悪いRPGパートがくっついている感じで、なんとも本末転倒な有様になってしまっている。

そのストーリーも面白いかというと、これがまた「うーん」と首をひねらざるを得ない。
タイムトラベルものなのだが、とにかく過去改変の解決方法を多用しすぎ。これだけ多用されると、説得力・緊張感がなくなる。話に重みがなくなるのだ。
脚本の中身も、あまりに強引で、都合のよい展開ばかりが目立ち、とにかくしらけてしまう。
今回も戦争ものではなく、ファンタジー色の強い物語になっており、なんというか「テイルズオブ」シリーズ(いわゆるライトファンタジー)とかにノリが近い。

あと、今回も主人公は喋るんだけど、だからこそもう「主人公=プレイヤー」の図式に意固地にこだわらなくてもいいと思う。
相変わらずゲーム開始時に名前入力させられるが、声の入ったイベントで、主人公の名前が入った台詞を別の台詞に差し替えられたり、飛ばして読ませたり、非常に違和感が大きい。
それに合わせる形で、拠点の名前とかももういちいちプレイヤーに決めさせるんじゃなくて、勝手に決めてもらったほうが、色々と都合が良くなっていいのではないだろうか。

唯一の売り文句であった「108人が仲間になる」要素も、事実上破綻しており守られているとは決して言いがたい。
というのも、どこかに落ちている故人の形見から技を引き継ぐという形で「仲間になった」という処理をしているからだ(こういう強引な解釈はシリーズ初だとおもう)。
つまり、ゲーム上では一切姿を見せず出てくることはない。しかも、(全員集めたわけではないが)エンディングを見た限りでは、故人扱いの仲間がおそらくかなり多い。

今回は1人1人に声優が付いているし、108人分のキャラクターを作るのが大変だったという事情もあるだろう。
じっさい、これまでの作品でも、108人全員を戦闘に参加させられるわけではなかった。
ところが今回は、ただでさえ自由に入れ替えて戦わせられるメンバーが少ないのに、出会う人は非戦闘系の人ばかり。
おまけに仲間を集めて拠点が便利になるというような楽しさも驚くほど全く無いので、ぜんぜん「仲間を集める」シチュエーションを生かせていないのだ。
それどころか、108人という人数ばかりにこだわったせいで、むやみやたらと登場人物が多い煩雑な印象さえ与える。
結局「幻想水滸伝」という名前と設定に引きづられ、持ち味を全く活かせないまま作られていったと言える。

1本のRPGとしては、戦いに参加させられるメンバーの数はまだ多すぎるぐらいで不満はない。技を引き継ぐという形で数合わせしていることも別段気にならない。
しかし、「幻想水滸伝」シリーズとしては、やっちゃいけない領域に足を突っ込んじゃったな…と感じる。

ゲームシステム、仕様などについて触れる。

まず、マップ関係。ワールドマップと町は、地図上からアイコン表示された場所を選択して行き先を決定する選択式。
かわって、街道やダンジョンマップは、フルポリゴンの三人称視点を採用している。また、エンカウントはシンボル方式となっている。
このフィールドマップのグラフィックは、(PSPとしては)なかなか頑張っていて綺麗である。ただし、人物画はアップなどにされるとさすがに弱い(イベントでは並べてバストアップ絵が表示されることもあってなおさら厳しい)。
ただ、この方式を採用してて即思ったのが、RPG1本分のボリュームを満足に作れるのか?ということだ。
案の定、凝ったダンジョンらしいダンジョンは数えるほどしか無いし、それ以外の小マップは、驚くほど狭くあっさりしている。やっぱりな…という感じだ。

それに、操作性も悪い。
視点がプレイヤーに寄り過ぎていて、視界が悪い。また、カメラワークがとんでもなく悪いうえに、カメラの回り込みが、止まった状態でRボタンという不便さである。
操作の割り振りは、モンハン式(アナログパッドで移動、十字キーで視点操作)で、動かしづらいのも気になる所だ。このあたり、何も考えないで決めたんだと思う。
RPGで、特にボタンがふさがっているわけでもないんだから、L,Rボタンで横方向に回転するぐらいで丁度よいのだが。

マップの造形も下手くそで、狭く入り組んだ道が多く障害物に引っかかりやすい。レーダーマップを付けてくれているが、似たような景色が多く道に迷いやすい。敵との当たり判定が異様に広いのも駄目だ。

総合すると、シンボルエンカウントになったことで、好きなときに戦闘ができるようになった点は進歩したが、フィールドマップは三人称視点を採用したことで、ダンジョン以外での探索要素が一切なくなってしまいRPGとしては物足りなくなってしまった。
そしてそのフィールドマップ自体も、容量や制作の手間の都合で、大掛かりなものが作れず、かなりつまらない、ボリュームのないものになってしまっている。
おまけに、こういった仕様になったせいで、拠点も(ワールドマップや町同様に)コマンド選択式なので、仲間を集めても、集めた実感が沸かないし、仲間が増えたからって拠点が大きくなったりもない。これは大減点といえる。

戦闘システムについて。
6人パーティ制であることと、アクティブターン制になっていることが、特徴として挙げられるところだろう。
バトルシステムに関しては、色々と新しくしたかったのはわかるのだが、それらが裏目に出てしまっていて、妙に複雑でぐっちゃぐっちゃでめっちゃくっちゃなシステムになってしまっている。

いくつか代表例を出すと、気力のシステム。戦闘中は気力を消費して戦う。必殺技など効果の大きい行動は、より多くの気力を必要とする。
けれど、ターンが回ってきた時に一定量回復するので、よほど消費量の大きいコマンドを連発したりしなければ、なくなって困るってことがまずない。というかなくなっても最悪「たたかう」「防御」は選べるので困らない。
もう一つ。戦闘中は一切消費アイテムを使うことができない。回復は薬師のコマンドで行う。これのせいで、戦闘中の工夫の余地がより一層なくなり、突き詰めると、薬師を最低1人連れてきて、適切なタイミングで回復させ、それ以外のキャラはひたすら威力の高い攻撃を出し続けるという戦略しか無い。
そもそも、戦闘バランスの付け方が大味すぎて、かなりつまらない。基本的にどっぷりぬるま湯で、相変わらずヌルいんだけど、ちゃんと装備やレベルが整ってないととんでもないダメージを与えてくる箇所がある。
なんか、「これちゃんと通してバランス取ろうとしたのか?」という疑問を覚えるぐらい適当な作りだ。だから、意図してヌルいのとはちょっと違う印象を受けた。

メニュー画面や戦闘画面のインターフェイスもあまりよくなくて、細かい部分での配慮不足も多く見られた。
(装備品の特殊効果がアイコンだけで何を意味しているかイマイチわからない、全体攻撃を食らった時当てた時、誰がどれぐらいダメージを当たったのかなど状況が把握しづらいなど)

他にも、装備品は鍛冶屋で鍛えることができるが、より強い装備品に付け替えることもできて、ぶっちゃけ、素材を探して強化するよりは、強い装備品に買い換えるほうが手っ取り早いし楽である。宝箱とかからいい装備品がドカドカ手に入るし。

ここで挙げたもの以外にも、連携とか技伝承とか奇をてらった要素が山ほどあるのだが、わざわざ取り上げるのが馬鹿馬鹿しくなるぐらい存在感も影響力も無いので、ここでは扱わないことにする。
ひとつ言えるのは、せっかく頑張って練り込んできただろうに、ほとんど意味がない要素に成り下がっているということだ。

あとは、RPGとして不満を感じたのは、いちいち本拠地に戻らないとHP回復ができないこと(回復アイテムで回復自体は出来る)。しかも拠点に戻ってきたら夕方になっていて、「厨房」で夕食をとって一夜明かさないと外に出られないことだ。
他にも拠点に戻ってくることで、出かけてる間、職人が生産したアイテムを受け取ったり、色々できることがあるのだが、はっきりいって今作では、拠点の存在意義が殆ど無いというか全くない。
こういうふうにしたのも、おそらく意図的なもので、あまりに自分の基地に用事が無いものだから、戻ってくるように仕向けてやろうと言う配慮だと思うが、ただただ不便で面倒くさいだけだ。

クリア後に、前作「幻想水滸伝ティアクライス」をちょっとどんな感じだったか触ってみたのだが、まだあっちのほうがゲームとして成立している分、しっかりしていると感じた。
というか、まさかあれを遥かに下回る作品になってしまうとは、あんまりだ。思えばシリーズ恒例の戦争バトルもない。寂しい。ひたすら寂しい。そこで結論。

シリーズファンですらやる価値なし。おそらく次はないだろう。





[2012/02/13]
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