高機動幻想ガンパレードマーチ


対応機種プレイステーション
発売日2000/09/28
価格5800円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)2000 Sony Computer Entertainment / Alfa System
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老舗ゲームメーカー「アルファシステム」の企画・開発による、新感覚シミュレーションゲーム。
発売元のSCEが「売れないゲーム」と判断したことで、販促活動を一切行わなかったものの、プレイステーション専門誌「電撃プレイステーション」で大々的に取り上げられ、
それを中心に、ネット上での口コミ効果を受けて、非常に高い人気を得る、というコナミ「ときめきメモリアル」を彷彿とさせるゲームだ。

ゲーム内容は、簡単に書くと。
人類の天敵「幻獣」と戦う世界で、日本九州に迫る「幻獣」に対抗するため、日本政府は少年兵の投入を決定。
プレイヤーは速水厚志となり、学生生活を送りながら軍小隊に所属し、時に謎の人型戦車「士魂号複座型」に乗り込み、これまた謎多き敵「幻獣」と戦う。
1999年3月4日から5月10日までがゲームの舞台となる。この期間内に、幻獣との戦争を優位に導くために試行錯誤する。

このゲーム、勘違いされないために最初に前置きしておくと、
この後、割と厳しめのことも書くのだが、ゲーム自体はかなり面白い、というか凄い部類に位置する作品となっている。
なんというか、先に書いてしまうと、他にない唯一無二のゲームと言っていいのか、とにかくとんでもなくいろんな要素が凝っていて、練られてて、独特の「世界」が構築されている、というと
安っぽい言葉になってしまうが、画面の中に「世界」が形成されていると言っても過言ではない密度を持った(もたせた)作品となっている。
結構な意欲的要素を思い切ってドンッ!と作り込んできた弊害なのか、ゲームの非常に基本的な部分での欠点が多く見受けられたため、ちょっと厳し目なレビューにはなってしまった。
だが、それを覆すほどの魅力はあるということを前書きしておきたい。

ゲームとしては、学園モードと言われる学生生活を営むパートと、戦闘モードと言われる「幻獣戦」が不定期にやってきてウォーシミュレーションゲームが始まる2つのパートに分かれている。
この、日常と非日常(戦闘)が繰り返しやってくる様は、セガ「サクラ大戦」を思わせる。BGMを田中公平氏が作曲している点も共通しているし。
ただ、かっちりとしたストーリーが展開される「サクラ大戦」と違い、本作はメインストーリーらしいメインストーリーはなく、基本的にそこらへんは自分で作っていくという作りとなっているのが大幅に異なる点。

あえてジャンル分けするならば「育成シミュレーション」と言ったところだろうか。
通常の育成SLGだと育成対象が存在するが、このゲームは主人公を育成するのはもちろん、乗り込む機体の士魂号の調整も必要で、更には登場人物(NPC)一人一人にも自分と同じようにパラメータが存在し、
それは日々キャラクターのAIに基づいて成長していく。
それだけに限らず、各キャラクターにはそれぞれ友情値、愛情値という人間関係が存在し、それぞれの値が高いと仲が良く恋人同士になったり、逆に低いと仲が悪い状態になる。
つまり、NPC一人一人にも明確な意思が存在し、それに基づいて行動しているというわけだ。

つまるところ、プレイヤーは自分磨きだけしてればいいわけではなく、他人に干渉できる。干渉したら、干渉した結果が帰ってくる。
もっと言えば、幻獣戦を優位に展開するためには軍小隊1個分を一番下の階級で新米パイロットに過ぎない速水厚志を通じて、方針を考えそれを実行できるように作戦会議を開いたりお偉方に陳情したりなどを行わなければならないということだ。
さらにこのゲームはそこで終わらないのが面白いところだ。
説明書やジャケットに強調するように書かれているのだが、「この世界で好きなように遊べば良い」としている。
おそらく開発者はこう考えたんだろう。ゲームのコンセプトが、幻獣との戦いを優位に進めていくように皆を導いていくというものだと、息苦しく肩が凝る(実際そのとおりだ)。
目的をそれに限定してしまうと、挫折する人も出てしまうだろうと。
そうではなくて、何でもできる何をやっても良い世界で自由に遊べるものを目指したのだろう。
実際、ゲームとして有利に働くかどうかは別として、主人公の速水厚志はパイロットになっているが、戦闘モードが苦手でやりたくなかったら部署変更を申請して整備班に異動して戦闘モードは結果を見るだけといった遊び方もできる。
毎朝学校へ登校して授業を受けなければいけないが、これをサボって別のことをしててもゲームは進むように出来ている。

自由なゲームというものが、特に舌が肥えたゲーマーにほど惹かれる要素というのは、スクウェア「ロマンシングサガ」でその後「サガシリーズ」としてシリーズ化に至るほどの大成功を収めたことからも、よく分かることかと思う。

ひたすらパラメータ上げに従事するものだった単調さが否めなかった育成SLGをベースに、色んな要素を詰め込んで「世界」を構築した結果、とんでもなく面白い「仮想世界」が出来上がったというのが、本作の特徴なのである。

ゲームとしては少々複雑な部類に入るのだが、その分手厚いチュートリアルが充実していて、実質一周目はチュートリアルと思ってプレイしたほうがいいかもしれない。
約2ヶ月間の半分弱位はチュートリアルと思っていいぐらいの作りとなっているが、これについてはチト長すぎる!

実際、2周目の特典がすごく充実しており、速水以外の4人のそれぞれ役割の異なるキャラから一人を選択するという「まさか2周目が本番?」と言わんばかりの内容になっている。
それ以外だと、キャラクタの一部のセリフにボイスがつくようになるとか。これは、流石にやりすぎ。1周目から喋らせてよかったろう。耳障りな人向けにコンフィグでボイスオンオフの項目を用意すればよかったわけだし。
というか、2周目の特典にしておくにはもったいないほど、声優が豪華過ぎる!!一部の台詞にしか音声を入れられなかったことから2周目にしたのかもしれないが、なんにせよこれはもったいなさすぎ!!

ちなみに、2周目では1周目に当たるチュートリアルの部分がカットされて、スタートからいきなり本編が始まる。
また、選べる4人のキャラは、ポジションが全く異なる4人で、普通に遊んでいても、立場の違う全く異なる展開が待っている。そのうちの一人、芝村は速水とほぼ同様のパイロット職で始まるが、速水より優位な状態で遊べる2周目向きのキャラだ。

それにしても、違うキャラで遊んでも、ゲームが遊べるような仕組みづくりがなされているというのは、驚きである。

主に学園モードについて語ってきたが、もう一つの戦闘モードについて。
こちらは、「幻獣戦」と称して、本当に学園モード中に唐突に始まる。
何の前触れもなくいきなり始まるということは、こちらの準備が満足に整わない状態でもお構いなく発生するということである。
つまり、学園モード中、常に戦闘が発生する緊張感を持って(持たされて)プレイしなければならないということだ。
これはこれで独特の緊張感が伴っていて悪くはないのだが、どちらかというと、前もって交戦時間を教えてくれたほうが、もっと良かったように思う。
今から24時間後に交戦予定とか、12時間後に交戦するとか、あるいは1時間後でも良い、いきなり招集命令がかかって、いきなり戦闘じゃあ、さすがに理不尽感が強い。
それよりかは、交戦時刻を知らされている方が、一拍あって、ある程度準備時間も取れるし、これもこれで独特の緊張感が得られる。また、理不尽感を軽減できるように感じる。

戦闘モードはレーダーマップのような簡素な表示で行われる。見た目が貧弱ではあるが、PS1の性能を考えて、快適さを追求すると妥当な選択だろう。
逆に、ランダムで戦闘シーンをフルポリゴンのカットシーンで見せる演出が入っているが、クオリティは高いもののテンポが削がれる印象。
(飛ばしたり、オフにできるので何の問題もないことではあるが)

戦闘モードも、新しいことをやっていて、コマンドを入力しながら動かすのではなく、ターンはじめに先行入力して動かしていく。
例えば、移動、向きを変える、攻撃といった感じで、コマンドを先読みして入力し、その上で適切な行動が求められる。
自軍でも自分以外の機体は動かすことが出来ず、NPCが勝手に操作する。連携をとって動く場合は、NPCの行動も把握する必要があるのだ。

システムを理解しても、序盤を除くと難易度が比較的高めで、コツを習得しなければ、太刀打ちならないバランスになっている。
ここらへん、もうちょっと、中盤辺りまでは難易度をマイルド調整してほしかったかな?と感じる。
システムも独特なので、他のゲームで培ってきた経験や知識が使えない。うーむ、これはちょっと敷居を高くしすぎた感がある。
周回プレイに耐えうる、歯ごたえのあるバランスを目指した結果なのだと思うが、初回プレイ時にここまで厳しいと、コントローラを投げ出すプレイヤーが出る気がしてならない(実際自分も投げそうになった)。

世界観やストーリー描写について。
一見メインストーリーがないため、ストーリーらしいストーリーは無いように思われがちだが、NPCとの会話の中に断片的に謎が語られたり、設定が語られる作りになっており、これらを自発的に探すのが面白い。
テキストの質が全般的に高く、たまに挿入されるNPCとのイベントシーンが、心にグッとくる。ただ、テキストが膨大なせいなのか、誤字や記述ミスかな?とおぼしき記述が多く見られたのは残念ではある。
また、九州の熊本が舞台になっているのは、開発元のアルファシステムが熊本にあることから来ているのは間違いないだろう。
なぜ熊本?と突っ込みたくなる中、しっかり熊本の郷土と絡めた設定が用意され、説得力を高めている。

プレイ時間について。
個人的に最も痛かったのはこの部分だ。このゲームは一日の終わりにセーブできるのだが、一日が比較的長めで、状況にもよるのだが普通にやっていたら30分位、幻獣戦が入ってくるともっとプレイ時間は伸びる。
ワンプレイが30分から一時間近くかかってしまうというのは、さすがにちょっと辛い。
また、ゲームの期間は約2ヶ月ほどなのだが、このペースだと、1周するのにも20時間から30時間位は覚悟したほうがいい。
何周もプレイするのにはさすがにちょっと...というボリュームだ。「ときメモ」みたいに4〜5時間とまでは言わなくとも、せいぜい10時間を目安に1周を終われるようにしてほしかった。

あと、キャラクタがCGで描かれたオープニングムービーはいらなかった。本編と似ても似つかぬ別人になってしまっていて、本編をやった後じゃないと誰が誰だかわからない有様。
ムービーをなくしたら、ムービーの分の容量をもっと自由に使えたのにと感じた。

それから、バグの多さも気になった所だ。

厳し目な事も書いてしまったが、とにかく凄い熱量を持った作品であることに間違いはなく、「人を選ぶ」ことは残念ながら確かだが、その敷居を越えるとかなり楽しめるものになっていることは間違いない。

システムが難解なのは否めないが、自由度の高さと濃い世界観に魅了される傑作!





[2018/09/08]
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