グランディア3


対応機種プレイステーション2
発売日2005/08/04
価格7980円
発売元スクウェアエニックス

(c)1997 1999 2000 2005 SQUARE ENIX / GAME ARTS
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セガハードで発売され絶大な人気を誇ったグランディアの最新作がプレイステーション2で再び登場。
DVD-ROM2枚組の大容量で描かれる新たなグランディアの世界。
シリーズ直系新作としては5年振りとなる本作だけに、期待も高まるところだ。

システム重視に作られた外伝作「グランディアエクストリーム」の内容をも取り込み、まさにシリーズ集大成たる仰々しさである。

映画監督やアニメ演出家を起用して作られた物語を彩るムービー映像のクオリティはかなり高く、
見せ方、キャラの表情、動きなど細部に至るまで完璧な出来で、映像作品を見ているかのような錯覚に陥るほどだ。
このレベルのものを見てしまうと、ゲーム畑の人間がこさえたムービーは子供だましに見えてしまう。
イベントのほぼ全ては、このデモ映像で描かれていて、見応え十分な濃さである。
大半はリアルタイムポリゴンでやっているようだが、一部ムービーも交えている。
が、パッと見ただけではムービーかリアルタイムか分からないほど差が無い。
これは、ムービー映像の質をリアルタイムポリゴンに落としているわけではなく、
本作のポリゴン造形のクオリティがそれだけ高いのである。

フィールドマップの描き込みも相当なもので、ちゃんと遠景までごまかさず表示している上に、
そこの空気感(砂漠であれば空気のよどみなど)までも感じさせるこだわりは、プレイステーション2では最高画質と断言出来る。

マップ切り替えは先読みや、建物内であれば、視点操作に制限を加えてデータ量を減らす等の工夫で体感的に待たされてる感覚を味わうことは殆ど無い。
戦闘も、「グランディアエクストリーム」で見せたように一瞬で移行する速さであり、
ディスクアクセスに関してはストレスを感じさせない文句なしの評価を与えられる。

戦闘システムは既に完成されていて本作でも大きな変化はないが、キャンセル攻撃を決めると敵が空中に浮かび上がり、
この状態で攻撃を当てることで通常より強力な空中技が発動するという新要素が加えられ、元々派手目な戦闘シーンにさらに花を添えている。

このように、このゲームはもの凄く高い水準の作品なのだが、主に進展の遅さなどによって、素直に熱中出来なかった。以下にその理由を述べる。

グランディアといえば、物語重視(勝負)の作品なのだが、プレイ時間に対して、イベントが入るまでのスパンが長く、
やれどもやれどもなかなか話が進まない。これではモチベーションが下がるというものだ。

原因としては、マップ上に配置されている敵シンボルの数が過剰気味で、攻略に時間がかかる点と、
マップの構造がわかりにくく迷いやすいこと。

戦闘に関しては、強力な敵や嫌らしい攻撃をしてくる敵を置いていたりするが、基本的にぬるいので、
結局、経験値稼ぎ、お金稼ぎのための作業でしかなく、実につまらない。
しかも、希に不運が重なって事故死により全滅してしまうことがあって、かなり前のセーブポイントからやり直しを強いられることが何回かあったのだが、これはただただ苦痛であった。

マナエッグやスキルの装着といったキャラクターカスタマイズはシンプルでありながら、なかなかの自由度を見せ、手軽にキャラ強化の楽しさを味わえる。
実のところ、システムやバランスそのものは、こりゃ酷いというほど悪くはなかったので、ただ単にゲームコンセプトとアプローチの仕方がちぐはぐだったのだろう。
多分、「エクストリーム」のようなゲーム内容であれば、ここまでけなさなかったはずだ。

マップに関しては、グラフィックの描き込みの弊害で、何がなにやら分からないという状況に陥ることがしばしばあり、
左下にレーダーマップが表示される配慮があるものの、わかりにくく当てにならないことの方が多く、
また、どうしてこんなにも迷うのか?というほど、現在位置を見失ってしまうぐらい目印が無く厄介な構造になっていたり、
歩ける場所と歩けない場所の区別も曖昧で、透明な壁に遮られることも少なくなかった。
加えて、立体的な構造なのに、カメラ操作が左右のみで上下方向に動かせないことが、さらに探索しづらいものにしてしまっている。
ゲームの大半が、このフィールド上の散策の不自由さからくるストレスで、目がすぐ疲れてしまうことも手伝ってとにかくしんどかった。

カメラ操作の不満はまだあって、カメラが動くのが遅く移動しながらカメラ操作すると、進行方向にカメラを向けるのが追い付かず視界がとにかく悪い。
せめて、キャラ背面にカメラが即座に回り込む機能ぐらい入れて欲しい。
あと、せっかくマップグラフィックが綺麗なのだから、上下方向にも動かせると、空を見上げたりといった風景を楽しむことが出来ただろうに、実に勿体ない。

世界観の描き込みが淡泊で、ストーリー上最低限のものしか描かれておらず、映像の美しさと対照的に薄っぺらである。
このペラペラ感はフィールドマップにも表れており、FF11のような広大なマップを期待していたのだが、
そういうマップはごく一部しか無かった(それもたいした広くない)のはがっかりで、ほとんどが狭い一本道で構成されたものばかりで、
まさにレールの上をひたすら歩かされているというやらされ感を強く持たされる結果になってしまった。

ストーリーに関しては、一言でまとめると「無味乾燥」に尽きる。
大衆向けを無理に狙ったような、主題歌の挿入や声優ではなく俳優を起用するところなど。
自分としては、敢えて声優を使わない表現もありと思ってはいる。
実際、このゲームでやりたかったであろう意図は、節々で感じ取れる。確かにこういう雰囲気はプロの声優では出せない味だ。
しかし、声優としては素人である彼ら特有に見られる演技力の乏しさや力量不足な部分も同時に目立っており、満足度としては5〜6割といった辺り。

一作目が初期の宮崎アニメのようなところを高く評価されたせいか、どうも宮崎アニメを意識して作ったようだ。
そういうシーンが、いくつか見られた。恐らく、俳優を使ったのもその影響の一端だろう。
先にも述べたように、その物真似が本作でも成功しているかというと、そこには程遠い出来で、
変に一般向けを意識した、王道で薄いシナリオプロットと合わせて、面白味を感じられなかった。

主題歌の挿入に関しては、最近のゲームの流行りでもあり難しいところであるが、このシリーズでは別個にオーケストラでのテーマ曲が用意されているわけで、
無理矢理ねじ込んだようにしか感じられなかった。ゲームにありきたりなJ-POPは、どーも不釣り合いに思えてならないのだが如何な物か?

イベント映像は、ゲームとしてみると、余計なところまでムービー(デモ)にしてしまっているようにも思う。
RPGに於けるムービーというのは一種の見所の一つともなってしまっているが、本作においてはほぼ全てがそれなので、
ゲームのストーリーを見ているというよりは、映像作品を細切れに見ているという感じで、なんだか「ゼノサーガ」シリーズにも似たものがあるが、
物語的には盛り上がっていても、プレイヤーとしては置いてきぼりを食らったような格好で、話に入り込めない。
あと、文章だけで進行するところも一部あるが、文字送りまで勝手にされてしまうのが多いのはいただけない。
そこまで不必要にプレイヤーの介入を奪ってしまうのはどうか?

メニュー画面などのインターフェースが見辛いのもなんとか一工夫欲しかった。
他のRPG作品と比べて、指摘するほど見辛いというほどではないが、見やすければグッと質が上がり気持ちよく遊べただろうからこそ気になった項目でもある。
例えば戦闘では、もっとスピーディにコマンド決定が出来たりと、ここに気を使ってくれればだいぶ良くなったように感じたから敢えて書いた。

ゲームそのものは、各パートのがんばりがひしひしと伝わるほどの高い水準であるが、
通しで遊んでみると、びっくりするほど楽しめない。詰めが甘いのだ。
このシリーズ自体は、独創的なシステムが多く、なかなか面白味のある作品なので、今後も頑張って欲しい。

映像作品としては素晴らしいが、ゲームとしては微妙。





[2005/08/14]
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