逆転裁判


対応機種ゲームボーイアドバンス
発売日2001/10/12
価格4800円
発売元カプコン

(c)2001 CAPCOM
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主人公は弁護士となり、毎回不利な状況に追い込まれた無実の被告人の弁護を引き受け、裁判でそれを立証するゲームである。
これを法廷バトルアドベンチャーと呼んでいるが、具体的にはオーソドックスなコマンド選択型アドベンチャーゲームと言える(インターフェイスはかなり今風にアレンジされているが)。

まず、ゲームタイトルとロゴが非常に良く出来ている。簡潔でありながらゲームコンセプトがはっきり伝わる名称と大きな文字ででかでかと「逆転裁判」と記されたロゴはそれだけで強烈なインパクトを与える。
これを、従来の探偵アドベンチャーのように、長々と殺人事件の名称をつけていたら、「ああまたこれか」と思われたに違いない。

ゲームじたいは、最初にも書いたがコマンド型アドベンチャーで、特別新しいことはしていない。フラグを立てて事件の証拠を集めていく探偵パートと、強いて目新しい所といえば、法廷パートでその事件の真相を自らの手で解き明かしていく部分。
アイディアで勝負している作品なので、いわゆるやり込み要素のような保険はない。これは物足りなさを感じるかもしれないが、今時のゲームにしては無駄がなくすっきりしていて良い。
また、ゲームの印象としては法廷バトルばかり目につき、推理が難しいんじゃ…という先入観を持たれるかもしれない。これに関しても、しっかり考えられていて、プレイヤーにほとんど答えを見せちゃってる状態で、さあどれだ?と迫ってくる作りなので、難易度は低い。
なのに面白い。それは、プレイヤーがわかりきっていることがゲーム上では誰もが気づかない状態で進んでいく。そこをプレイヤーがズバッと仰々しく指摘してやる。ツッコミを入れるたびに画面上には声付きで大きく目立つ文字で「異議あり!」「待った!」などとこれまた大げさな演出が入る。これでカタルシスが得られないはずがない。
こっちは実はあまりたいしたことをしてないんだけど、ゲーム中ではそれが凄いことかのように表現される。つまり、徹底したプレイヤー=お客様志向である。

法廷パートでは、関係者の証言を聞いて、そのなかから矛盾を探し出して指摘する。ここではコマンド総当りは出来ず、5回間違えるとゲームオーバーとなる。が、いくら間違えても良い場面もあり、やはり難易度は高くない。普通にやっていればまずゲームオーバーはないだろう。

エピソードが4つしかない。そのうち最初のエピソードはチュートリアルも兼ねているのですぐに終わってしまう。つまり実質3つしか無い。ボリュームに物足りなさを感じるかもしれないが、なんだかんだでスムースに遊んでも10時間近くはかかる。
また、そのかわりストーリーの出来が非常にいい。情報・ヒントの与え方と真相が適度に意外性を持たせていてついつい先が気になってしまう。なにより登場人物のキャラクターが個性的で良く出来ている。名前もキャラの特徴と合わせており、かつ、印象に残りやすいネーミングにしている配慮がある。

助手となって色々手助けしてくれるヒロイン役のねーちゃんがかわいいところも抜け目がない。巫女風の服を着せて独特の髪型の風貌はそれだけで個性的で、現実世界を舞台にしながら漫画的なケレン味があり(これはこのキャラだけではないのだが)、ただ格好を奇抜にしただけでなく、霊媒師として主人公の窮地を助ける。
最初の主人公の上司を助手役として使っていたら間違いなくこのゲームの魅力を数段落としただろう。なぜなら、ただ仕事の出来るどこにでもいそうなねーちゃんだからだ。
頭の切れるゲームというものは、こういう所も計算高く抜け目なく作ってくる。

演出周りの作りも力が入っていて、特にキャラクタの立ち絵のアニメパターンの豊富さは特筆に値する。これは2D格闘ゲームを作ってきたカプコンの強みで、キャラパターンが多いだけでなく、活き活きとした動かし方をわかっているから到達できたクオリティである。
他の会社が似たようなゲームを思いついてもここまでのものは作れないだろう。特に法廷パートではこのキャラパターンの豊富さが特に活かされていて、図星をつかれてギクッとしたり、はたまた勝ち誇った表情をしてみたり、とにかく画面上のキャラクタが生き生きとしているのである。
他にもこの法廷パートでは、画面がただスクロールするだけの演出も立体感を出してみたり、かなり凝った作りで、プレイヤーの目をひきつけるツボを押さえていて、はっきりいって感心しきりであった。

規模の小さいゲームだけに、とにかく丁寧な作り込みが目立つ内容で、誰でも楽しめる間口の広さも相まって、かなり好感の持てるゲームであった。
気になった点といえば、メッセージ送りが出来ないところと出来るところがあり統一感がないことと、セーブが一つしか出来ないことぐらいだろうか。そこで結論。

これは良質で新しいアドベンチャーゲームだ。迷わず遊べ!!





[2010/11/04]
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