対応機種 | ニンテンドー3DS |
発売日 | 2013/06/13 |
価格 | 5490円(カード)/5000円(ダウンロード) |
発売元 | スクウェアエニックス |
テレビアニメ、アーケード、そしてゲームと、大規模なメディアミックスを行なっている「超速変形ジャイロゼッター」。
ここではニンテンドー3DS向けに開発された「超速変形ジャイロゼッター アルバロスの翼」について取り上げる。
どういうゲームなのか一言で書くと、ポケモンタイプのロールプレイングゲームだ。
ゲームデザインも育成、収集、対戦をメインテーマにおいており、ポケモンと酷似している。
ゲーム版を語る前に、「ジャイロゼッター」という作品について避けて通れないのでそちらを先に簡単に説明する。
実在する車がロボットに変形して戦う近未来を舞台にしたロボットアニメである。
ターゲットは小学生向けで、キャラクターデザインや世界観、ストーリー展開も低年齢層向けにデザインされている。
おそらくレベルファイブ「イナズマイレブン」辺りの成功を夢見て企画されたプロジェクトだと思われるが、金をかけている割にチグハグな点が目立っている。
国内有名車メーカーとコラボしており、実在する車が沢山登場する。
それがバトル時にはロボットに変形する、というコンセプトは凝っていて面白いのだが、こういうものはどちらかというと子供よりも大人のほうが喜びそうな内容だ。
メカデザインは、この会社お得意の人海戦術で作られている。
種類が多すぎるせいか、なんとなく没個性的で印象に残らない。バランス型、防御型、回復型みたいに大まかに見た目で性能がわかるように作られているし、メカ1体1体のフォルムもちゃんとみていけば、きちんと印象的なシンボルが施されているのだが、
そこまでじっくり見なければ機体デザインの見分けがつかないというのは、愛着を持ちにくいということであり、致命的な欠点といえる。
ゲーム版では具体的にどうなっているのかというと、フィールドはフルポリゴンで、屋外では車に変形して道路を走り、ダンジョンではロボットに変形して探索する。町ではロボから降りて情報収集と言った感じだ。
フィールド・ダンジョンではいつでも車とロボットへの変形が自在で、制限はない。性能的には機動性が異なるぐらいで、戦闘に入ると自動的にロボットに変形する。
シンボルエンカウント式で、ザコ戦では「ポケットモンスター」と同じ手順で、敵を弱らせてからイビルバスター(モンスターボールのようなもの)を使うことで、その敵(無人ロボ)を自分のものにできる。ベースで乗り換えたり売り払ったりできる。
ロボットには個体ごとにLVがあり、使い込むことで経験値が溜まって成長する。一定のレベルに達すると新しい技を習得するが、戦闘時に使えるのはそのうちの4つのみで、技は戦闘以外なら自由に付け替えることができる。
また、ロボごとに属性が設定されており、得意とする攻撃や苦手とする攻撃が存在する。性能的には主に攻撃型、回復型、防御型に分けられる。
3vs3のパーティバトルで、対人戦を意識したシステムも多く採用されている。
MPの概念がなく、「ためる(防御ではない)」ことで、ギア(MPコストのようなもの)をアップ出来て、強力な技を使用する際に必要(消費)とする。ギアが高い状態だと、技の性能も上がるようになっている。
アクティブターン制を導入しており(順番が回ってきたら時間は止まる)、素早さも大きなウエイトを占めている。
ゲーム自体は、端的に言うと、RPGを得意とするメーカーだけあってか、既存のゲームからの組み合わせが目立ってオリジナリティの無さは気になるが、悪くない仕上がりである。
むしろ、バトルシステムに関しては下手な本格派を気取ったシリアスRPGより、綺麗にまとまっていて面白いとも言えるかもしれない。
低年齢層向けのゲームということもあってか、難易度が低く苦労するところはないが、サブイベントの強敵相手では、頭をひねるような難しさも秘めており、決して侮れない作りになっている。
このように、商品としては無難に仕上げてきたという感じで、水準としては悪くないのだが、独自性に乏しく、今作ならではといった魅力がない。
特に、育成系RPGということで、このへんは厳しく指摘するが、育成対象がメカというのが、正直な所燃えない。
経験値を稼ぐだけで掛け値なしに強くなっていくというところに、やはり違和感を覚えてしまう。人間や動物であれば、訓練を重ねることで上達するということで理にかなっているのだが。
ロボットを扱うのであればやはり、各部位の改造によるカスタマイズ性が欲しい。若年層向けということで、そういう要素は敢えて避けたのだろうが、実にもったいない話だ。
このゲームでは、Zカード(アクセサリ)を装備させたり、パイロットが1つだけ装備できるドライバースキルによって、カスタマイズ性を出している。これもそこそこ自由度があって悪くないのだが、メカを題材に持ってきたなら改造システムのほうを組み込んで欲しかったものだ。
他に目立った不満点としては、ゲーム自体のボリュームがすくない。20時間以内でクリアしてしまう。ダンジョンなどの数も全然物足りない。
早送りモードが搭載されているとはいえ、冗長なエフェクトでテンポの悪い戦闘シーンも指摘しなければならない。
また、ロボット同士が戦うということで、戦闘時のパラメーターなどを聞きなれない固有名詞に置き換えられてしまうのもつらい所だ。
最後になるが、インターフェイスの作りがちと甘い(特に戦闘シーンのコマンド選択)。
子供向けを狙ったこのゲームのような作品は、大成功するか大失敗するかのどちらかにはっきり分かれる。手堅く作られているが、この作品にしかみられないような独自要素がない以上、成功するとは考えづらい。
何より、育成系RPGで重要な、理屈抜きで夢中にさせるような何かがなく、薄っぺらさが漂っているのが残念でならない。
ストーリー性も強く、イベントでグイグイ引っ張っていく部分もあるが、子供向け路線を意識してるせいで刺激が足りないのも厳しい。そこで結論。
対象年齢は子供よりも大きなお友達向け。ゲームとしてはそこそこ。