.hack//G.U. Vol.1 再誕


対応機種プレイステーション2
発売日2006/05/18
価格6800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2006 NBGI / CyberConnect2 / .hack Conglomerate
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架空のオンラインゲーム「THE WORLD」で展開される一風変わったストーリーが高い独創性を見せた、.hackの壮大なメディアミックスプロジェクトが再始動。
4月より始まったテレビアニメ版とともに、ゲームでも.hack。今回も全3巻構成の分割方式で、本作はそれの一作目。

ディスク2枚組で、2枚目の方は、物語の謎をひもとく映像が収録されたディスク内容で、Vol.2、Vol.3のデータを持ってくる事で、シナリオの核心に迫る内容を見る事が出来るという、面白い仕掛けを付けている。
つーか、改造ツールで先にバラされないか?これ。ものすごく危険な行為だと思うのだが。

ちなみに、初期段階では、前作のストーリーがダイジェスト収録されており、未経験者を置いてきぼりにさせない配慮がなされている。

今回は、ゲーム1本でも、それなりのボリュームとお話的にも、ひとつのエピソードが形成され、これはセガ「シャイニングフォース3」の3部作に近いものがある。
だから、いくらディスク2枚組とはいえ、6800円はちょっと高い。もっと安くできないのか。

前作で指摘した、ストーリーの希薄さは払拭され、進行の柱となりグイグイ引っ張っていく。
ともすれば、見ている時間ばかりのムービー鑑賞ゲームと批判されかねないが、ストーリー性を全面に押し出すことは、ゲーム性を押し出すことと表裏一体なので、難しいところだ。
ただこのゲームの場合、ゲームをゲーム(オンラインゲーム)と自身で言い切っているのである。そこまでRPG制にこだわる必要は無いと思う。
ログアウトして、(仮想世界の)ネットサーフィンをしているのも、「ゲーム」といえるのだから。

「The World」外のネット上の描写も、かなり凝っており、情報も膨大で、だいぶ架空の世界を画面上ででっちあげることに成功していると思う。
メールの返信や、掲示板の書き込みなどのアクションの自由度が増え、そういうコミュニケーションの楽しみも味わえる。
しかし、これによって増減する好感度のパラメータが、ゲーム上でどういう影響を与えているのかが、わかりづらく、雰囲気的なものにとどまっているのは残念。

グラフィックのクオリティもかなり高く、中堅企業(失礼)とは思えない完成度だ。ファイナルファンタジー12のように、多数のキャラが画面上を動き回っているのだが、結構きつそうな処理をしていながら、処理落ちが一切ないのは凄い。
ちなみに、前作からそうだったが、この町中にいる人たち全員に、話しかけ、アイテムをトレード(交換)したりと働きかける事が出来て、きちんとした個を持っている。
FF12では、台詞を持った人は少なく、ただそこにいるだけで干渉出来ないエキストラが多く徘徊していた寂しさがあったが、そういうはったりがこっちでは無い分、高く評価出来る。

イベントムービーは、トゥーンシェードで、独特の綺麗さである。表情的に若干違和感を残すところや、ごまかしているところも目立つ事は目立つが、それでも良くできている方と思う。
コナミ「ANUBIS」では、人物描写のみセルアニメに妥協していたが、やっと技術的に再現可能なレベルまで来たのではないだろうか?

「ANUBIS」と言えば、随分とキャラデザイン(テイスト)がそれに似てるなーなんて思ってたら、モロパクリのバトルモードが入ってたり。節操ねぇなぁー。
前述の、ディスク2のダイジェスト映像の、編集の仕方もだいぶ似てるし、かなり影響されてるようだ。好きなのはわかるけど、ここまで露骨なのはどうよ?

まぁ、RPG部分は相変わらずの出来だ。改善されたとはいえ、相変わらずごちゃごちゃうっとうしいなぁーってな感じは抜けてない。
その割に、ちょっと戦うと、すぐに適正レベルを抜いてしまうので、簡単になってしまう。逆に、レベル差の影響が激しく、適正レベルじゃないと極端につらいってのもどうかと。
戦闘システムは、ガードアクションやコンボ攻撃が追加され、よりアクション性が高まっている。ただ、本作はあくまで、RPGの戦闘にアクション性を付与したのであって、そこらへんを勘違いしちゃいけない。
序盤は、仲間との連携で倒すような立ち回りが有利に働くが、後半になると妙に攻撃範囲の広い武器が使えるようになってインチキな戦い方ができるようになるせいで、完全崩壊。
攻撃魔法の存在感が薄れてしまってるのもねぇ。

この「.hack」。どうも、北米での受けが意外に良かったようで。そっちのお客様を逃さないための媚びっぷりが鼻につく。
町中をバイクで滑走できるとか、無駄に派手なバトルシーンとか、そっちの方々に受けの良さそうなアリーナバトルとか。
「ANUBIS」ネタの拝借も、どうやらそこから来ている気がする。
結局、日本人が向こうの人向けに作ると、適当にパンクで、さりげなく和のテイストを入れて、適当に豪快で、それでいてわずらわしさがない(=考えなくていい)薄っぺらなゲームになるんだよなぁ。
主人公も、元々はもっと無口でひねくれてた設定のはずなのに、なんだかぶっきらぼうな江戸っ子みたいな性格だし。まぁ、主役だから喋らせないと話が進まないってのもわかるけどねえ。

しかし、キャラクタの等身が上がった事により、ディテールがアップしたのは良い。おかげで、芸術性も高まっている。
すでに放映中の、アニメ版と一部伏線がリンクしているが、アニメ見て興味持った人間とゲームから入った人間両方が納得するには、この辺が丁度良かっただろう。
アニメから入った人間のことを考えると、難易度を低くしておくのは悪くないことだと思うし、だから、バランス調整を手抜きしていいという理由にはならないが。

ストーリーは、某少年漫画雑誌の「友情、努力、勝利」を地でいくノリは、明朗、快活ではっきりしていて実にいい。
そもそも、ゲームのストーリーと、少年漫画のシナリオ構築の方法論は近い位置にあり、相性がいいのだ。
PKを軸に据えた、適当にいい加減で、適当に真剣な、ストーリー展開は、なかなか高い水準にあると言える。
キャラクタの描き込みもしっかりされているし、ただ強制力が強く、好きに寄り道させてもらえないのは残念ではある。

RPGを期待して買うのはナンセンス。設定受けした人は是非。





[2006/05/20]
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