鋼の錬金術師 翔べない天使


対応機種プレイステーション2
発売日2003/12/25
価格6800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2003 SQUARE ENIX / RACJIN / 荒川弘 / 毎日放送 / アニプレックス / ボンズ / 電通
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ガンガンで連載され、TBS系列でアニメ化し、人気急上昇中の「鋼の錬金術師」がゲームになった。
ガンガンはスクウェアエニックスの発行している月刊少年漫画誌で、
このゲーム化もメディアミックス戦略の一環として行われた物だろう。
漫画コンテンツが自前にあるということで、計画が立てやすく、アニメ放映開始3ヶ月というタイムリーな発売にこぎつけたわけだ。
恐らくそれだけ社内でこの漫画への期待感が高く、猛烈にプッシュかけているようだ。

また、原作物のゲーム化というのは近年特に決まり切ったメーカー以外手を出さないもので、
そこでゲームメーカーとしても高い開発力を誇るスクウェアエニックス直々による発売ということで
どのような内容になるのか、その面でも興味深いところでもある。

しかし、蓋を開けてみたら制作は外注投げっぱなしで、
原作物ゲームによくある、ゲームとしては半端物のクオリティである。
せっかくここまで綿密に積み上げてきた計画が、詰めの甘さでパーである。
発売時期を考えると、エンディングテーマ「消せない罪」を収録していたりと
評価出来るところも無くはないのだが、肝心のゲームがパッと見ただけでイマイチと分かる出来で
これにはガッカリせざるを得ない。

ゲーム内容としては、原作を知っていることが前提の作りで、
最初に大まかな概要は流れるが、次の場面ではすぐにいつものノリでオリジナルストーリーが展開する。
アニメーションムービーが随所に挿入されるのだが、これのクオリティがなかなか高い。
量も決して少なくなく、頑張っている節が感じられる。

ゲームシステムは、キングダムハーツのシステムを借りてきた感じで、
3Dアクションゲームでありながら、道具を使い分けたり経験値の概念があったりする。
これらの要素がちょっとうざったい。
アクション性が限りなく強いのだから、下手にRPGの要素は入れるべきではなかった。
特に回復アイテムを使う際に、いちいちレスポンスの良くないメニューに切り替えて使うというのは
その都度テンポを乱される。

プレイヤーはエドワード=エルリックを操作するのだが、アルフォンス=エルリックも一緒に戦ってくれる。
アルフォンスには簡単な指示を出せたりするのだが、今ひとつ的確な指示出しがしづらい。
また、贅沢を言うようだがアルフォンスも操作させてもらえると良かった。どうにも物足りない。

基本的にやることはエリア内の敵をひたすらたおしつづけて先に進んでいく。
敵の種類も極端に少なく、終始こればかりなので、はっきりいって飽きてしまう。
せっかく3Dアクションなのだから、もっと面白い仕掛けなどを用意すべきであった。
あと、場所によっては露骨に同じ場所を行ったり来たりさせられたりと
最近では珍しいプレイ時間引き延ばし工作もあって、単調さに拍車をかけている。

錬金術師ということで、漫画同様、オブジェを攻撃アイテムに錬成するという独自性もある。
これにより、飽きさせない工夫は見受けられるのだが、やはり淡々とした展開を払拭することは出来てはいない。
そして気になったのが、錬成する時に錬成ゲージを一々溜めなくてはならないのが単純に面倒。
溜めている時じゃないと、錬成出来る物も分からないので、どうにも全体的にダラダラしてしまっている。
錬成出来るアイテムは結構多く、飛び道具のブーメランや大砲などなかなかのバリエーションである。
しかし、アクションゲームとしての作りが甘いので、狙い撃ちがしづらかったり
操作性が悪く、それを駆使しないと倒せないボス戦などではストレスが溜まった。
この辺りの設定は非常にゲーム向きなので、かなめとなる部分をしっかり作り込めば化けただろうに惜しいところである。

ゲーム自体はそこそこのボリュームで、アクションゲームとしてはちょっと長すぎる気がする。
中盤以降、面白いダンジョンなども出てくるが、メリハリのある展開が無く全体としては退屈である。
マップも少し広すぎるように思う。グラフィックもさして綺麗ではなく、寧ろ安っぽい感じで面白く無い。
それに輪をかけて音楽も全然力が入って無く、エリア切り替えのロードもやや長い印象がある。

難易度は、錬成物を使って戦うことを考慮するとやや高い方で、レベルによって多少変動するが
普通にプレイしているとボス戦で多少苦労する。
中途半端にRPGの要素を入れているせいで、回復アイテムが無くなった時の飢餓感や緊張感が
どうも余計物という感じがする。
アクションゲームとしてみれば、ボス戦がやや単調で長い。

ムービー以外のイベントシーンは、ビジュアルノベルのように、キャラの立ち絵が表示され
その下に台詞が表示されていくという物。
イラストの枚数は少ないし一枚絵の挿入もなく、台詞も喋らないので、キャラクターゲームとして見た場合、寂しいものがある。
また、オリジナルストーリーとはいえ、無駄にダラダラ長いせいとイベント演出の淡泊さと合わせて
後に残る物が無く、あまり褒められた出来では無い。

結局、アクションがやりたかったのかRPGがしたかったのか、この辺りのコンセプトが絞り込めてない印象で
受けそうな要素をとりあえずねじ込んでみたという作りが、かえって足を引っ張っている。

原作人気にあぐらをかいただけの駄作。





[2004/01/10-2005/04/12]
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