半熟英雄対3D


対応機種プレイステーション2
発売日2003/06/28
価格6800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2003 SQUARE ENIX
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「半熟英雄」は、FFシリーズの召喚獣のルーツにもなった
ゲームとして楽しませることよりも笑わせることに重点を置いた
リアルタイムシミュレーションゲームである。

FC、SFCと発売され、しばらく続編が出ることはなかった(出る可能性すら無かった)ところで
長い年月を経て、PS2用ゲームとしてシリーズ3作目が発売されることとなった。

このシリーズは、ゲームそのものの作りは実にいい加減で、むしろ、ふんだんに取り入れられた
自社ネタのパロディやブラックジョークに笑って楽しむゲームである。

ゲームシステムは、SFC版とほぼ同じで、
ストーリーパートの舞台で喜劇を見ている部分もそのままなところには
懐かしささえ覚えてくるほどだ。

ただし、本作は、あまりにもそこに拘りすぎて足下をすくわれている印象がある。

あまりにも昔のゲームっぽすぎるのだ。
ゲームとしての進化はまったくなく、新鮮さや面白味が無い。
逆にインターフェースの古くささや不親切さがきわだち、
しかし、ゲームバランス自体は良い意味でのいい加減さを無くし、
生真面目になってしまったせいで息の詰まるつまらなさ。
(ゲームとしての楽な抜け穴がふさがれ、難攻不落な城や、耐久力の高いボスなどがしんどい)

ただ一つ違う点は、グラフィックが今風に綺麗に描かれているだけ。
一部キャラを除きフルボイスで喋ったり、
アニメーションムービーをタツノコプロに外注させ、
主題歌をささきいさおに歌わせ、こずえ鈴をナレーションに迎える豪華さはあるのに、
肝心のゲームパートが足を引っ張ってしまっている。

最近のゲームらしく、展開も冗長でテンポが鈍く、ストレスが溜まりやすい。
特にフィールドマップへの切り替えが今時有り得ないほど長いロード時間で待たされる。
イベントシーンが全般長いのを分かっているのか早送りが出来るのだが(喋るところでは早口になる懲りよう)
そもそも見せる時間を短くする工夫をまず先にして欲しい。
特に酷いのが、エッグモンスターを召喚するシーンで、頻繁に見ることになる物なのに
スキップ前提の長さ。困った物だ。

SFC版ではドラクエでお馴染みのすぎやまこういちが音楽を担当していた。
彼のドラクエとは違う軽妙なサウンドは非常にこのゲームとマッチしていた。
しかし今回はFFの植松伸夫にやらせている。
この人もコンポーサーとしての力量は決して低くない(むしろ高い方である)。
だが、本作に限って言えば、出来は良いとは言えない。
ましてや、前作がすぎやまこういちであることを比べてしまうと、グレードダウンも甚だしい。

とにかく全体的に遊んでいて気持ちの良くない感触を味わう構造で
いくらゲームとしてはいい加減なシリーズとはいっても、
贅沢な環境で制作したソフトである。そこらへんもしっかり作って欲しかった。

切り札という戦闘アイテムを使えるようにするためには、
「開発」という手順を踏まなくてはならなくて、ゲーム中で得られるヒントを元に
自分で作らなくてはならない。
また、仲間にした将軍や一度見たエッグモンスターが記録される図鑑機能が新たに用意された。
このように、ゲームとしても幅を出そうと言う努力の跡が見られるが、
根本的な部分が昔のままで、ゲームとしての自由度が無いために、やる気にならない。
ゆえに、ただ単にこれらは煩わしい要素にしかなっていない。

先にも述べたが、このゲームには多数の有名人が登場する。
大抵こういうものは話題作りのためでしかなく、余計なものだったりするのだが、
わりと本作では使い方が上手で、うまく機能している。
とくに、お笑い芸人「鉄拳」の役回りが絶妙で、彼がいるかいないかで
ゲームの面白さが10倍は違ったといっても言い過ぎではないほど存在感のあるキャラだった。

それ以外のステージは敵側のキャラ描写が薄く、ただ出てくるだけという淡泊さ。
ストーリープロットも単調で、ゲーム終盤にならないと盛り上がってこない。

相変わらず、マップ上全ての城を制圧しないとボスと戦えないというプロセスはそのままで、
しかし展開の冗長さや、息の詰まるバランスに飽き飽きするばかり。
ゲーム後半になると、陣取り合戦が無くなりすぐにボスと戦えるのだが、
断然この方がテンポも良くストレスも溜まらず良かった。
そもそも、この陣取り合戦を面白くする工夫をもっとすべきだった。

こちら側は2Dのペラペラなキャラクターで、敵キャラは3Dという
2Dvs3Dという構図は面白いのだが、いかんせん3Dの技術力におぼれてしまったのは
このゲームそのものではないのか?という突っ込みをしたくなる内容。

笑いの質というのも、全体として勢いが落ちていて(ゲーム側で失速させている節もあり)
決して全部がつまらないというわけではないが、面白い箇所は終盤に固まっているというのも
煮え切らないものを感じた。
ムービーシーンの挿入というのは、全体の整合性から言って歓迎出来るものは少ないのだが、
本作に限っては上手く活用していて、その点は良かったと思う。

ただ、もう少しゲームパートを練り込んで楽しめるように作って欲しかった。

お笑いのセンスは健在だが、ゲームとしては半人前。





[2004/05/11-2005/02/09]
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