ICO


対応機種プレイステーション2
発売日2001/12/06
価格5800円
発売元ソニーコンピュータエンタテインメント

(c)2001 Sony Computer Entertainment
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角が生えた少年が、言葉すら通じないミステリアスな少女と一緒に、閉じ込められた謎の古城から脱出する3Dアクションアドベンチャー。
ICOはそのままイコと読む。

見下ろし型でカメラ固定のタイプ(右スティックである程度動かせて、R2でズームも可能)だが、マップもキャラクタも全てフルポリゴンで描かれていて、非常に綺麗である。特に光源の処理と色遣いが素晴らしい。
マップの造形もあまり関係ないところまで凝って作られており、しらけてしまうことがない。それでいて画面切り替えのアクセスがとても早いのが感心できる所だ。ようやくプレイステーション2の性能を引き出したゲームが出てきたと言える。

体力バーすら無く、他にもゲームとしてあってしかるべき要素も必要のないものはバッサリ切り捨てている。そのため、ゲーム性という観点からみると、ウリになるものがない。
これは商品として売り出すときに、非常に困ったことになる作品である。しかも、音楽やムービーもほとんど流れない。そこでメーカーは、不思議な世界観で女の子と手をつないで冒険する点を大きくアピールした。

操作形態やゲームシステムはシンプルに突き詰められていて、プレイヤーが覚えるべきことは少ない。ゲーム中に敵と戦ったりするが、負かしてやろうと言う意地悪さはなく、難易度はとても低い。
ゆえに、普段ゲームを遊ばない人でも楽しめるような間口の広さに出来上がっている。

唯一ゲーム的要素といえば、ところどころに用意されたパズル仕掛けの部屋を頭を使って切り開く場面だろう。
このゲームの謎解きは、オブジェクトが何を意味するか?ということを敢えて教えないので、そこに気付くか気づかないか?という方向での難しさがある。仕掛け自体に複雑さはない。
記号的表現を避けているので、作者の意図している部分に意外と気づきにくく、突っかかってしまうことが目立つ。

カメラワークや、マップの造形や仕掛けなど3Dアクションゲームとしての作りがこなれていない点が多々見受けられる。
操作は非常に簡単なのだが、鎖につかまって、そこから別の場所に飛び移るときの操作が、他と比べると妙に分かりづらい。
おまけに、高いところから落下するとゲームオーバーとなるため、鎖から飛び移る時に落ちてしまって、そのままゲームオーバーとなり、セーブポイントからやり直しというパターンがかなり多い。ジャンプアクションが厳しい場面では下に足場を配置するなど配慮が欲しかった。

この辺は、任天堂が作れば、もっとかっちりしたものを出せそうだが、同時に余計なゲーム性も付けそうで怖い。しかし、全体的に独創的なゲームデザインは荒削りながらもよく出来ていると言える。

また、これだけ凝ったゲームなのにCD-ROM媒体で作っている。そのため、マップやギミックの種類がやはり物足りない。プレイ時間は極端に短いわけではないが、どうせならもっと色々なものを見せて欲しかった。

プレイヤーや女の子(人間)のモーション、AIも、不自然さはなく良く出来ている。映像面での完成度は間違いなくトップクラスだろう。

芸術性の高い凝ったグラフィックスやアートワーク、利便性よりも没入感を追求したカメラワーク、マップデザインはたしかに素晴らしい。
だが、ゲームとしてみると、これといった見所もなく寧ろ一本のゲームとしては食い足りなさすら感じられる内容はさすがに寂しい。逆に言えば、開発初期から出来ることと出来ないことをはっきり見定め、これだけ綺麗にまとめたとも言えるが。

ゲームでありながら、ゲーム以外の部分で勝負を仕掛けている、変わり種のゲームだ。これは、ライトユーザー獲得に成功してきたSCEならではのゲームで、任天堂やセガのようなゲーム畑の会社では中々作れないタイプの作品だ。
そこで結論。

ずば抜けて魅力的な雰囲気が素晴らしいが、ゲーム自体は至って平凡。





[2011/04/23]
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