アイドルマスター


対応機種Xbox360
発売日2007/01/25
価格6800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2003 2007 NBGI / 窪岡俊之
戻る

アーケードで稼動していた大型筐体「アイドルマスター」が満を持してXbox360へ移植!!
アイドル候補生にプロデューサーという形で関わり、世界一のトップアイドルを目指し、レッスンにオーディションにと努力する育成シミュレーションゲーム。

アイドルを育成するという題材のゲームは、以前PCエンジンで発売されていたNECアベニュー「誕生 デビュー」と思い切りダブってしまうが、ゲームシステムは独特のものを採用している。

この手の育成シミュレーションゲームは、行動コマンドの選択によって増減する対象の女の子の各種パラメータを管理し、一定期間内に決められたノルマを満たしたキャラクターを作り上げていく地味なゲームだ。
一時期、「卒業 グラデュエーション」や「プリンセスメーカー」のヒットで流行っていたが、ストイックなゲーム性が仇となり次第に飽きられていったジャンルである。

何を今更こんなゲームを...と思ったのだが、アーケードゲームということもあり、客を引き止めるための要素がふんだんに練り込まれており、また、ゲームとして破綻していたら商売にならないので、非常に良く考えられたゲームになっている。

ゲームの概要は、52ターン以内(一年間)に100万人のファンを獲得する。必ずしも達成する必要はない。条件が満たなくともバッドエンドという括りにはなるが、それなりのエンディングが流れる。また、条件を満たしてもすぐエンディングになるわけではなく、期間内にどこまでファンを増やせるかというスコアアタック的な遊び方が出来る。

プレイヤーがやることは、持ち歌と衣装の設定。これはRPGで言うところの装備品に該当する。設定した歌や衣装に合わせてパラメータが変動する。
そして、具体的な活動。営業、レッスン、オーディション、休養の4つから1つを選びターンを消費する。
オーディションを受けて、ファンの人数を増やしていくのだが、そのためにはユニットの能力値(ボーカル、ダンス、ビジュアル)が育っていなければ合格が難しい。
この能力値はレッスンを選択することで上げることが出来る。レッスンはミニゲーム形式で、プレイヤーが上手にこなさなければ、パラメーターも伸びていかない。
基本的に失敗しても基礎能力値が下がることはない。ただし、ゲーム上で警告されたタイミングで新曲をリリースしないなどのひねくれた行動をとれば例外的に下がってしまうことはある。

パラメータが高いからといってかならずしもオーディションに受かるわけではないのが面白いところだ。
オーディションもミニゲーム形式で進行するのだが、このミニゲームでの審査員へのアピールの仕方が下手くそだと、いくら能力が高くてもオーディションには受からないのだ。
XboxLiveにつないでいれば、アーケード版と同じようにここで対人戦を行うことが出来る。

対人戦を重きをおいていることもあって、どのタイミングでどの能力をアピールするかという駆け引きがとても大きなウエイトを占めている。アーケードゲームらしからぬシステムの複雑さも見せる。
オーディションでは思い出を消費して思い出アピールといういわゆるハッタリを最大3回まで使うことが出来る。スロットの目押しに成功すると各アピール値が大きく上昇する。反対に失敗するとアピール値が下がる。
思い出は、営業コマンドで見られるイベントで、正しい選択肢を選ぶことで増やすことが出来る。が、失敗すると何も手に入らない。休養は、女の子のテンション(スタミナ)を回復させるもので、このコマンドで発生するイベントもある。
ゲームの基本的な流れはこういった感じになっていて、オーディションや営業ばかりやっていると基礎能力が上がらない。しかしレッスンだけやっていても、オーディションのハッタリの前では勝てない。このもどかしさが実にうまい塩味を出していると感じた。

なんだか難しそうなゲームだが、要領を掴めば、設定されたノルマをクリアすることは難しくない。

それだと一回クリアすれば、熱心な人でも対象キャラ分(10人)クリアすれば飽きられるじゃないか…と思う人もいるだろう。
そのへんもしっかり対策が取られていて、プレイヤー自身にプロデューサーレベルというものを設定しており、周回を重ねるごとにレベルアップし、やれることが増えていく。
最初はソロユニットしか選べないのが、最大3人組のユニットをプロデュースすることが出来るようになる。メリットもあるが、3人分のパラメータ管理を求められるため、難易度もその分上がっていく。

難しいモードをやりたがる人は限られるという懸念もあったのだろう。見返りもたくさん用意されている。
オーディション合格後に見られるステージ(カメラ)演出を自由に決められることが出来て、歌はパートごとに誰が歌うか細かい部分まで設定できる。
ユニットの組み合わせに制限はないので、まさに自分だけのユニットとステージ演出を作り上げることが出来るのだ。

女の子のグラフィックは、トゥーンシェードを使ってかなり綺麗に描かれている。特に表情や仕草が非常に細かく作られていて、アニメ絵を自然に立体化している。
2Dの立ち絵では不可能な、キャラクターの衣装の着せ替えも、ポリゴンでは簡単に出来る。
このゲームの売りの一つである、舞台上で自分が決めたステージ衣装を着て、実際に設定した歌を歌って踊る!このパートも、キャラクターをポリゴンで表現しなければ実現できなかったことだ。
わざわざ3D化した利点をこれでもか!というほどぞんぶんに発揮している。

キャラクターデザインに窪岡俊之を起用しているのを見て、やる前はギャルゲーの割に地味なデザインの人を使っている印象を受けたが、どうにもこれが、ポリゴン化を前提にしていたようで、原画と比べても違和感が少ない。

何故かナムコは、3Dのギャルゲーを作りたがっていて、数年前に「ゆめりあ」という美少女アドベンチャーを作っていたが、これが何故か女の子を3Dで描いていて、失笑を買ったものだった。
当時はまだトゥーンシェードの技術が確立していなかったためなのだが、ここにきてようやく技術と時代が追いついたという感じだ。

恐ろしく複雑かつシビアで取っ付きづらいゲームなのだが、パラメータ管理をそれほど気にする必要がないなど、煩雑さを極力排除し、無駄を省いているので、いったん理解してしまえばしっかり楽しめる。

なにより、このゲームで人を惹きつける要素というのは、ふんだんに盛り込まれたご褒美だろう。
まず、営業イベントなどで挿入されるイベントシーンがギャルゲー的で、対象プレイヤーのツボをしっかり突いてくるしたたかさを見せる。非常に短いイベントシーンでも、感情移入度を高めようとする。
そして、このゲーム最大の売りなのが、16曲に及ぶアイドルソングを自由に設定し、実際に選んだ女の子がそれを歌い、設定したステージ衣装を着て(アクセサリまで付けられる)、舞台で踊る。やりこめば、細かいカメラワークまで決めることが出来る点だ。
この、ゲーム上ではご褒美でしか無いパートに、恐らく相当な労力を使っているに違いない。自由度の高さが半端ないのだ。

Xbox360版では、新キャラや新曲、ステージ衣装が追加されサービス精神旺盛な作りとなっている。しかし、欠点として、気に入らない結果(オーディションに落ちるなど)になってしまったらリセットしてやり直せるというゲーム的には大きな矛盾を抱えたまま発売された。
これは移植する際にどう処理するかおおいに悩んだ点だろう。
アーケード版ではプレイ終了ごとにカードにデータをセーブしていて、いわゆるオートセーブ方式だった。だから、やり直しがきかないのだ。
今回の家庭用でも、とうぜんオートセーブにすることは出来たはずだし、ゲーム途中でリセットしたらペナルティを与えることも出来ただろう。が、これは敢えてやらなかったと捉えてしまっていいだろう。

細かい不満点としては、アーケード版の移植ということもあってか、インターフェイスに少々荒っぽい点が見られる、場面転換の演出が冗長で飛ばせない箇所が多い、ステージ映像や写真の保存出来る枚数が少ないなど。
また、何周もプレイするゲームにしては、1周がやや長く、繰り返し遊ぶにはちょっと辛いことが挙げられる。

ゲームをプレイすること行為自体も、モノを作り出している=一種の創造する作業をしていると言える。このゲームは、シビアなゲームシステムを女の子の可愛さで払拭した、創造する作業の面白さを最大限に引き出した作品といえよう。そこで結論。

クリエイトする楽しさが凝縮された作品。





[2011/04/15]
戻る

inserted by FC2 system