アイドルマスター2


対応機種Xbox360
発売日2011/02/24
価格8800円
発売元バンダイナムコゲームス

(c)2011 NBGI / 窪岡俊之
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東京ゲームショウ2010にて概要が発表されると大ブーイングが巻き起こった、トップアイドル育成シミュレーションゲーム「アイドルマスター」の正当な続編だ。
ネット上では期待の反動から大炎上が起こり物議を醸した作品だが、実際の出来具合はどうだっただろうか。

ジャンルは変わらず「育成シミュレーション」の形をとっている。
規定ターン以内に課せられたノルマをクリアーするために、各種パラメータを効率よく上昇させていくというシステムの核となる部分はそのままだ。

前作でも指摘したのだが、相変わらずテンポが悪い。1ターン内に色々と詰め込み過ぎなのだ。期間は55ターン(約1年間)と変わらないのだが、プレイ時間がかなり長い。
2周目からは、一度見たイベントを飛ばしたり(既読スキップ機能がないので結局何度も見ることにはなるが)、オーディションのミニゲームをコンピュータに任せたり出来てだいぶ楽になるが、それでもくどすぎて、何周も遊ぶには結構辛い。
この辺は続編なのだから、もっと工夫が見られても良いと思う。

1年間、最終目的のトップアイドルになるために、延々と同じ作業を繰り返すのは単調になることを懸念してか、段階的に目標を設定したり、強制イベントの挿入が多い。
育成シミュレーションの肝は、目的に向かって与えられたターン内で、それを越えるため計画を練って攻略するところだ。
だから、なるべくゲーム中は余計な語りを入れてゲームを中断してほしくない。プレイヤーが興味あるのは、選んだコマンドに対する結果だけであって、それ以外は余計モンと言っても過言ではない。
なのに、ゲームの流れを無視した強制イベントが多いし、直前まで予告を全くせずイベントシーンを見せるためだけに、強制的に特定のコマンドを選ばせてターン消費させられたりする。

今回もプロデューサーレベルがあり、周回プレイを重ねることでレベルが上がり、やれることが増えていく辺り、育成シミュレーションゲームの“繰り返しプレイして自身の上達を実感する”楽しさはわかっているようだが、まとまりの悪いゲームになっている。

一作目は元々アーケード向けに作られていたため、引き締まった作りにしなければならなかった。しかし今作ははなっから家庭用ゲーム向けに企画されたためか、あれもこれもと欲張った結果、ぜい肉の多さが目立ってしまっている。
まず、最初のゲーム導入部が長すぎる。何ターンもかけて、くだらないイベント仕立てにまでしてダラダラと操作方法を説明しなくて良い。特に説明役のキャラクタをわざわざフルボイスで喋らせて起用する必要があったのかすら疑問。

ゲームシステムも、内容が肥大化した割に、プレイヤーが介入出来ることはたいした変わっておらず、目的が散漫としている。
全国をまわってファンの人数を増やすだけでなく、リリースした楽曲をたくさん売ってランキング上位へチャートインを狙うという2つのことを気にしなければならなくなった。
特にCDの売上枚数の仕組みが非常に分かりづらい。何度も説明書を読み直した。いわゆるハマリ状態を回避するために、ブレーク、リバイバル(落ちた売り上げを爆発的に回復させる)といった抜け穴も用意されているが、発生したかどうかをゲーム中で全く知らせてくれないのは困ったものだ。
地方各地のファンの人数や関心度(CDの売り上げに影響を及ぼすらしいが効果がイマイチわかりづらい)、他にもアイドルユニットの団結度など、パラメータが一気に増えて、複雑なゲームになってしまった。
それぞれの要素が絡み合って新しい面白さを出しているのなら良いものの、どちらかというと、ただ管理しなければならないパラメータが増えただけで、煩雑になった印象しか無い。従って1と比べて、なんか疲れるゲームという印象しか受けなかった。

プロデュースする人数が3人固定というのは賛否が分かれるところだろうが、個人的にはそれ自体はさほど気にならなかった。前作では1人だけだったのが、繰り返しプレイすることでプロデュースできる人数が増えていくクリア後のおまけ的な要素だったからだ(しかも人数を増やすとその分難しくなる)。ただ確実に言えるのはゲームとしての遊びの部分が狭まってしまったことだ。
それよりも、3人固定にしたことで、全体的なテンポが悪くなっているのがダメだと感じた。朝の挨拶など、3人分喋る部分がある。また、ゲーム全体のテンポを落としてまで、ユニットの団結力というパラメータを挟む意味があったのだろうか。

団結力が低いと、仲間内で喧嘩になったりする。団結力は、朝の挨拶やオーディション前、一日の終わりに発生するイベントでユニットを盛り上げる選択肢を選ぶことで上昇する。
低い状態だと前述のように空気が悪くなるが、慣れてくると正解の選択肢がわかっているので、間違えることがない。なので実質あって無いようなパラメーターである。
あって無いようなパラメータに関するイベントが、間の悪いタイミングで何度も入ってテンポを悪くする。バッサリ無くしても良かったぐらいだ。

前作では、営業(という名目の女の子とのデートイベント)で思い出ポイントが手に入った。オーディションでこれを消費して思い出アピール(大幅にアピールポイントを増加させる)という必殺技を使うことが出来た。
今回は消費型ではなく思い出レベルとなり、一種のステータス化した。1回のオーディションで思い出レベルの数だけ使うことが出来る。
ボーカル、ダンス、ビジュアルの基礎能力値ももちろん大切だが、必殺技である思い出レベルはそれ以上に大きなウエイトを占めている。思い出レベルは簡単には上がらないので営業コマンドがより重要なものとなった。

個人的には、デートイベントに頼らなくとも、一作目の、営業、レッスン、オーディションの関係性とバランスがかなり良く出来ていたので、ゲームとしても面白かったからこの路線変更は安直で残念な面もある。
が、多くのプレイヤーがデートイベントの楽しさを求めていたのなら、仕方のないことだと思う。PSP版はイベント強化、DS版ではそもそも「アドベンチャーゲーム化」したほどなので、それだけギャルゲー色の強いものを求められていたのだろう。

オーディションは、前作ではアーケードの移植だったので、オンライン対戦にも対応させていたが、今回は非対応で1人用のミニゲームになっている。
一言で言ってしまえば、ただの「音ゲー」なのだが、色んな要素を盛りこんで無駄にごちゃごちゃとしている。というか、ボタン押しに忙しくてとてもじゃないが審査員の台詞とか全部見てられない。もっとすっきりさせても良かったろう。
前述の思い出アピールなど、いかにハイスコアをたたき出すか!?という駆け引きを持たせようとしている努力は伝わってくるのだが、これがさっぱり面白くない。
オーディションにも種類があって、他の出演者と1vs1で直接対決するフェスというのがあるのだが、ここでは思い出アピールで相手を妨害したり出来る。だが、能力差による違いもあるが、突き詰めると思い出アピールを使った潰し合いになりやすく、思い出レベルが高いほうが有利になりやすい。
なにより、前作の時のような駆け引きの熱さが全くない。演出が派手で華やかさはあるが、ゲームとしては「音ゲー」以上のものはない。この程度でオンライン対戦が出来ても全く嬉しくもないので、無くても良い。

プロデュースできる女の子は9人。ほとんどが一作目から登場しているキャラクターだ。強いて言うなら、PSP版でライバルキャラとして出てきた2人が新たに入っている。しかし2のために作られた完全な新キャラは存在しない。
このうち前作のキャラのうち4人がライバルユニットの役割を持つことになったので、登場はするものの選ぶことは出来ない。ステージエディットで選んで自由に歌わせたりは出来る。

これに対して「リストラ騒動」が起こった。ゲーム上で全く顔を見せないわけではないが、いわゆるおしながき(攻略対象)に出てこないのである。反発が起こって当然だ。
容量とかコストなど色々な事情があったのだろうが、全キャラ入れても新キャラを入れれないんじゃ新鮮味がないし、削って新キャラを入れると今回のような面倒なことが起こる。

だからこの手のゲームの続編を出す場合、基本的にキャラクタは一新させたほうが良い。人気のある女の子を総取っかえして、新キャラを出すとなると、性格や設定、モデリングやモーションまで作らなければならない。大変な手間となる。
そうやって手塩にかけて新しいキャラを作っても人気が出るかわからないリスクの高いことはしたくなかったんだろう。
だが今回は変に横着して失敗した感じだ。新キャラの人数も最初に選ぶキャラが3人に対して2人という微妙さだ。ここは頑張ってもう1人ひねり出すべきだっただろう。

また、プレイヤーに立ちはだかる最強のライバルとして、男性イケメンアイドルユニットの存在が発表され、大きな話題となった。
これがまた、わざわざ男である必然性が全くない場違いな存在で、寧ろ違和感すら覚えるほどで、かといってシナリオでその溝を埋めきれているわけでもない。存在意義の全くない代物になってしまっている。
だが、彼ら専用の楽曲やダンスステージがしっかり用意されているほど力が入っており、恐らく女性向けに関連グッズで商売でもしたかったんじゃないかと思う。

メーカーとしては、「アイドルマスター」が当たったので、一般向けになんとか売り出したかったのだろう。それはまるで、丁度10年前コナミが「ときめきメモリアル3」でやろうとしたこととダブって見えてしまったのは自分だけだろうか。
主題歌にZARDだの、セルアニメではなくトゥーンレンダリングを使った無難なグラフィックスで主要購買層にそっぽを向かれブームにまでなったブランドの一つが終わってしまった。コナミにはこういう苦い思い出があったので、「ラブプラス」を生み出したプロデューサーは「ラブプラスでは男の子は絶対に出さない」などと本作を明らかに意識した発言をしていた。

主に2000年以降、ゲーム開発には大きなお金が動くようになった。そのため、現場の開発者やアーティストの一存ではゲームの方向性を決定できなくなっている。ビッグタイトルであればあるほどその傾向は強くなる。会社の業績を左右するためだ。
だから、上層部からゲームを売り込むためのテコ入れが入る。そういう大人の事情が重なりあって、今回の迷走が起こってしまったのだと思う。
それだけではない。恐らく、制作に関わったスタッフも「アイドルマスター」のどこが受けたのか分析が足りてない節も見られる。だから、なんか気合い入ってるのはわかるんだけど、やってみるとつまらない今回のようなゲームが出来上がる。

一方で、キャラクターの服飾デザインや、イベントシーンのモーションは凝っており、非常に表情豊かだ。
特にダンスステージは、最大5人まで同時に舞台に出すことが出来て、60フレームの滑らかさで踊って歌ってくれる。歌える楽曲やステージにかなり制限があるものの、ここはこのゲーム最大の売りだろう。
舞台の数も大幅に増えており、映像面に関してだけは、努力の甲斐があったのか、地味にグレードアップしている。
Xbox360版では本編でオーディションに合格した時でないと観賞出来ず、ステージ映像の保存できる数も1つと不便だったが、今回はステージエディットのモードが用意されていて好きな時に好きなように設定して観賞出来るうえに保存ファイルもかなり多く用意されているので快適になっている。

このシリーズの目玉の一つであるアイドルソングだが、相変わらずクオリティは高いのだが、前作ほどインパクトを残す突き抜けたものが無く、パンチが足りない印象がある。
どうにも大衆向けを意識したせいか、全体的に歌詞に違和感がある。狙い過ぎて外していたり、実際のアイドルソングのようなノリをそのまま持ってきていたり、何というか、以前はもっとこう浸れるような曲が多かった気がするのだが。

そんなわけで、会社の期待を背負い込むほどの大作ソフトとして作られた「アイドルマスター2」で、面白くなるはずだったのだが、なんか力をいれるところを間違えた感が否めない残念なゲームになってしまっている。
女の子の仕草やステージ映像といった見た目の部分は確実にクオリティアップしている(相当気合いが入っていたんだろう)。が、それ以外の部分がちぐはぐな出来栄えでなんとも期待はずれになってしまっている。
システム周りは煩雑かつバランスも良くなくて、仰々しいわりに面白さがない。シナリオに力が入っているが、ところどころ展開が強引だったりメッセージに誤字脱字が目立つのも残念なところだ。テキスト自体も饒舌で全体的に品位を落としてる感じで感情移入を妨げている。

コナミ「ときめきメモリアル」は一度大きな失敗をしたものの、その血脈は「ラブプラス」の成功を生み出した。バンダイナムコゲームスは今後このシリーズをどのように展開させていくか非常に楽しみだ。そこで結論。

失敗から学べるものはたくさんある。





[2011/06/02]
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