インフィニットアンディスカバリー


対応機種Xbox360
発売日2008/09/11
価格7800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2008 SQUARE ENIX / Microsoft / tri-Ace
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アクション要素の強いロールプレイングを得意とするトライエース制作による、Xbox360用に開発された完全新作RPGである。
当初はマイクロソフトの元で開発していたが、RPGに強いスクウェアエニックスが発売元となり、ゲーム制作に関わることになった。

シナリオライターに「ロードス島戦記」の水野良を迎え、トライエースでも第一線で活躍しているクリエイターが参加しており、大作ということもあって豪華布陣で作られているが、
なぜかキャラクターデザイナーのみ新人である。新人だからという色眼鏡で見ているわけではないが、少なくとも上がってきたCGはなんだかケバい。

ゲームジャンルとしては、「ファイナルファンタジー12」「ローグギャラクシー」のようなシームレスバトルだ。
敵との戦いで、画面は切り替わらず、その場で戦う。本作は、アクション性が強く、複雑なゲームシステムを採用することで、タイトなバランスになっている。
とはいえ、適当にやっていてもエンディング到達なら出来るバランスだが。

戦闘は「スターオーシャン」シリーズのシステムを、そのままシームレスバトルに組み込んだような感じで、非常に動きがめまぐるしい。
メニュー画面を開いてアイテムを使用したいなどの場合も、絶えず常に時間が流れており、それが一つの売りとして紹介されている。
つまりは、基本的にはじっくり考えて行動することが出来ないのである。「ファイナルファンタジー12」で言えば、ウェイトモードが無い状態と言えば良い。

インターフェイスが決して良いとは言えない。特にメニュー画面などのコマンドの文字や、画面下部に表示されている各キャラのHPやMPの表示が非常に小さい。
誰もが、ハイビジョンの大画面テレビで遊ぶわけではないのである。スクウェアエニックスは、以前Xbox360用に発売した「プロジェクトシルフィード」でも同じような過ちを犯していた。
画面を広く使いたいのだろうが、文字が大きくて得をすることはあっても、小さくて得をすることは、ほとんど無いと思っている。

仲間を間接的に操作(命令)出来るコネクトシステムや、この会社ではおなじみのアイテムクリエーションなど、ちょっと手広く作りすぎた感がある。
どちらも、かなり作り込んでいるようだが、実際ほとんど活用しなくても、ゲーム進行に差し障りは無い内容となっている。

コネクトシステムは、このゲームは主人公しか操作出来ないが、仲間に特定の特技を使って欲しい場合に指示出来るシステムである。
弓矢など遠隔攻撃を持つキャラに、遠くの物を狙撃したい場合に指示を出し、自分で狙撃するといった格好である。
他にも、魔物を操らせたり、召喚させたり、多彩な用途があるのだが、実際の所、これも使う機会はほとんど無い。

悪質なギミックが多かったり、一々次やることがわからなくなったり、ストレスが溜まるところが多い。
セーブポイントの配置も考えて置いたという感じがせず、不親切な印象がある。

ゲーム開始直後に、システムを色々教えたかったのだろうが、牢獄を脱獄したり、脱走するシチュエーション(バランス)がかなりシビアである。
ぶっちゃけ、ゲーム中で最も難しいと言っても過言ではない。ゲームに不慣れな序盤なのだから、もうちょっとやさしめの作りにすべきだ。
また、その序盤で、魔物の注意を引きつける匂いを出す果物を射抜いて落として、魔物との戦いを避けたり、敵の近くにある爆薬を撃って爆発させ、楽に敵を倒すという、ギミックを活用した楽な進め方を紹介しているが、
実際にそれを「発見」して有利に進められる局面は残念ながらほとんど見られない。そういうものを探すより、普通に戦った方が早いという話もある。

パーティを3つに分けて、敵の城を協力しながら同時攻略するなどの要素は面白いが、そのシステムを実現するためか、やたらと仲間が増える。頭数の増やし方に関して、無理矢理感も否めず、困惑する。
通常の仲間と同行者との違いもイマイチわからず、わざわざ色分けする必要もなかったと思う。

ロード時間は、さすがトライエースの得意とするところなのか、体感的に待たされてると感じるところは無い(全く無いというわけでは無い)。
グラフィックもかなり綺麗な上に、一つ一つのフィールドマップが非常に広大で、そこに配置されたキャラクタなどが全く処理落ちせずに徘徊している。これは凄いと言わざるを得ない。
PS2「ファイナルファンタジー12」では、かなり裏データや構造、敵の配置でごまかしていたのに、Xbox360のスペックだと、軽々と動かしてしまう。
フィールドマップはでかすぎて、一度に読み込んでいるわけではなく、プレイヤーの位置にあわせて読み込んでいるようだ。
町の中や洞窟の中など、非常に作り込まれていて、臨場感溢れる映像美をプレイヤーに見せつけてくれる。

とても前衛的なゲームシステムだが、ゲーム進行は、どっぷりイベント一本道のオーソドックスなものである。
ゲームとイベントが交互に入ってくる形の、ありきたりなストーリー重視のRPGとなっている。
圧縮ムービーがかなり多く、それがDVD-ROM2枚組という結果につながっているようである。ゲーム自体にボリュームがあるというわけではない。
ただあの膨大なフィールドマップも容量圧迫の一つの原因となっているのは否定出来ないが。

イベントムービーは、字幕+ボイス(オプションで変更出来る)だが、声が入っていないシーンが一部ある。
都合が付かなくて、声を入れられなかったのだろうが、そういうシーンは、メッセージウィンドウで表示して、プレイヤーに文章送りさせるようにして欲しかった。
読み切れずに勝手に次の台詞にとばされてしまって、しかもそれが結構重要なことを言っていたりするので、困った物である。

同じシームレスバトルの、特に「ファイナルファンタジー12」とどうしても比べてしまうのだが(開発もおそらく意識して作ってるだろう)、
あらゆる面で、「ファイナルファンタジー12」が実は結構良く出来ているのかが良くわかる作品である(システム的な面で)。
(ガンビットは、全部1から設定しなければならないのと、一々項目を買わなければならないのがまずかった)

マップが広いのに、地図が売ってなかったり(オートマッピングがあるのでそこまで突き放しているわけではない)、そもそも広さにこだわりすぎて適切な大きさのマップが作れてなかったり(移動に時間がかかる)、
作戦がいくつかあるが、状況に応じて使い分けなければならず(ある意味妥当な要素とも言えるが)、ぶっちゃけると融通が利かないように感じてしまう点。AIに回復を要請するボタンもあるが、それならば「ドラゴンクエスト」シリーズで言う「いのちをだいじに」に当たる作戦を入れておくべきである。

「ファイナルファンタジー12」と比較してしまったが、あちらは必然的に間口の広いゲーム作りをしなくてはならないが、このゲームはアクが強く間口は狭いかもしれないが、出来が悪いという意味ではない。
ただ遊んでいて、個性が強い分、気になることが多く目に付くゲームだと言うことである。

アクション性が非常に強いが、アクションゲームとして見た場合、かなり大味な作りで、爽快感は本職と比べると遙かに薄い。
そこまで戦略的でもなく、反射神経が勝負のゲームでもない。どっちつかずになってしまっている。
ロールプレイングゲームでシームレスバトルを採用するには、まだまだ敷居が高いことが良くわかる。

色々面白い試みを沢山見られるのだが、どれも中途半端に終わっている感がとても残念でならない。思えば同じトライエースが作った「ラジアータストーリーズ」もそんな感じだった。
あ、ストーリーはこれぞ水野良って感じです。良くも悪くも。そこで結論。

前衛的な未完成作。





[2008/09/17]
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