いけにえと雪のセツナ


対応機種プレイステーション4
発売日2016/02/18
価格4800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2016 SQUARE ENIX / Tokyo RPG Factory
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RPGのスクエニ(合併前のスクウェア、エニックス時代含む)を取り戻す!!という強い意気込みを感じるプロジェクト作品。
わざわざ、専用のゲームスタジオまで立ち上げるほどの力の入れようで、「いけにえと雪のセツナ」は、その会社、Tokyo RPG Factoryが開発する記念すべき第一作目となる。

なかなか、面白いRPGを作ったり、RPGを面白がってもらうこと自体が難しい時代に、敢えてその難しい課題に挑戦する、その気概は、それだけで高く評価したい物だ。

ただ、前置きしておくが、そんな時代だからこそ、厳しい。余計に、厳しい。

RPGが面白かった時代、勢いがあった時代というのは、この作品(制作会社の理念)のウリでも書かれているが、1990年代の頃である。

この時代のRPGが特別面白かった理由についてちょっと書く。

誤解されやすいが、“RPGというゲームジャンル自体が面白い”わけではない。
この頃のRPGが、当時の最先端の技術を貪欲に取り込み、コンピューターゲームとして面白いゲーム体験を提供するにふさわしいジャンルの一つであったためで、RPGそのものがゲームを面白くしているわけではないのだ。

RPGというゲームとしての表現文法が、当時のゲームハードのスペックに適した作りになっていた。勢いがあったからくりをクールにたどれば、ただそれだけの単純な話である(それだけが理由ではないが)。

今ぐらいの高精細なハイスペックを持つゲームマシン、及び、機械が溢れてくると、別にターン制に拘る必要もない。ゲージが貯まるまで待って、貯まったらターンが回ってくるみたいな、アクティブターン制である必要もない。
だからこそ、かつてはマニア向けだったよりリアルな一人称視点のRPGがヒットしたり、FPSでもいいし、三人称視点の映画のようなアクションゲームが表現としては適したジャンルになっている。
(一人称視点のリアルタイムのRPGは、昔からマイトアンドマジックやダンジョンマスター等、存在していたが、ハードのスペック不足で直感的なシステムでないためマニア向けの烙印を押されていた。しかし現在、高スペック化によって、本来表現したかったことが実現したため、
このジャンルは多くの人に受け入れられ、強い存在感を示すようになった)

RPGの復権を目指す!!とか、RPGを今また面白くする!という、考え方自体は共感できる所もあるし、応援したいとも思うのだが、これを踏まえるとやはり時代に沿ったアプローチというのは必要だ。

その点において、「いけにえと雪のセツナ」は、何か、面白かった頃のRPGを、きちんとした考えもなくただそのまま持って来ただけの劣化コピー的な色合いが強く、作品単体ではどうにも好きになれなかった。
具体的には「クロノトリガー」のゲームシステムを、かなりの部分を無批判に採用している。

過去の名作と言われている作品を借りてきて、面白く出来上がっていればよいのだが、これがどうにも、上辺だけを都合よく借りてきた感じで、なんとも作品独自の魅力が出ておらず、オリジナリティがない。

ストーリーは最近なかなか無い素朴な路線で、ツボをしっかりおさえていて良い。ただテキストの誤字脱字が目立つところに残っていたのが残念だった。
また、スクエニだけあってか、グラフィック、BGMも非常に独特でクオリティが高い。
グラフィックは、白い雪で覆われた世界になっていて、どこに行っても雪景色という、ゲームとしては割と危険な橋を渡っている。
それだけに、雪の表現には凝っていて、場所ごとに降り方や空模様まで変える凝りっぷり。微妙な空気感なんかが出ていて良い。

BGMも、これまた危険な橋を渡っていて、全曲、ピアノメインで作曲されている。
ピアノの音色が紡ぎだす、繊細なメロディと雰囲気が素晴らしい。

どちらも、ゲームのテーマを再優先に貫き通した作風は、実に勇気ある決断だと取りたい。

しかし、やはりどこ行っても冬景色だと、メリハリのあるマップが出来ないし、おまけに音楽もピアノメロディばかりだと、正直な話、物足りなかったり退屈になってくるのだ。
そのリスクを冒してまで、この路線をやり通したことは賞賛したいのだが、同時にそこまで意固地になる必要もあったのだろうか?とも感じる。

次に、具体的なゲームの不満点というか印象を述べる。

良くも悪くも、オーソドックスな、王道的なRPGの作りを目指している。

だが、システムの説明とか、細かい部分の作り、例えばテキストの説明、ヘルプメッセージなどが、どうにもこなれていない印象で、わかりにくいまま(理解していることを前提に)進んでいく。

ストーリーやグラフィックなどが良いと書いたが、ゲーム全体の展開は基本的には単調で、とにかくやっていてもあくびが出てくる感じで、盛り上がらない。

特にマップがダメで、町もイマイチだが、最悪なのはダンジョンで、通路と戦闘用の部屋のパーツでつなぎ合わされた似たり寄ったりの構造。おまけに、複数のダンジョンに渡って同じパーツを使いまわしていたりする。
「クロノトリガー」では、イベント仕立てで敵とエンカウントしていたところが斬新だったが、このゲームでは、システムを引用しているといっても、そこは真似せず、画面切り替えなしのシンボルエンカウントという形式を持って来ただけである。つまらない。

逆に、マップが3Dなのに、それを活用しようとせず、ほぼほとんどの場面で上からの見下ろし視点で固定されている。これは勿体無い。
これなら2Dの書き割りマップにして欲しかったが、作業量的に厳しかったか?

ゲームバランスも、なんというか大雑把で、これといった面白味がない。極端に強い敵を置いたりの仕込みを入れたりしてるんだけども、あまりに極端すぎるので倒す気になれない。

まだ、立ち上げたばかりのゲームスタジオだからなのか、失礼な物言いになるが、全体的に作りがこなれてない。
エフェクトやSE、細かい操作感、ゲーム構成といった、当たり前にできているべきところが出来てない感じである。

思うに、昔のRPGをお手本に集まったメンツで何か一本ゲームを作ろうといった修練的位置付けのものだったんじゃないだろうか。

物足りないところをすぐムービーで誤魔化すといったところに手を付けてないのは評価したい所だが、安めの価格設定を考えると、Unity使って何か安く1本適当に仕上げた感じもして、複雑な心境だ。

こんなやり方で、スクエニのRPGブランドが復活するかと思うと、正直微妙だ。個人的には会社立ち上げるぐらいだから長い目で見たい。そこで結論。

昔のRPGはもっともっと面白かったぞ!!頑張れ!





[2016/02/23]
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