忌火起草


対応機種プレイステーション3
発売日2007/10/25
価格7980円
発売元セガ

(c)2007 SEGA / CHUNSOFT
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サターン「街」以来となる、チュンソフト製サウンドノベルの完全オリジナルタイトルが遂に発売!
超高性能マシンプレイステーション3のパワーを豪快に用いたリアリティ溢れる描写が画面上で繰り広げられる。
ちなみに、忌火起草はイマビキソウと読む。

ゲームタイトルを読んで、弟切草を連想した人は察しがいい。内容も弟切草と同様にホラーテイストだ。一作目から15年あまり経ち、本家も一周回ってサウンドノベルの王道に帰ってきたと言える。

今回は登場人物の台詞をフルボイスで聴かせ、画面に表示するのは地の文だけという大胆な挑戦をおこなっている。
これは聞いただけだと、嫌な予感をしたものだが、そこはさすがチュンソフト。
高いクオリティを誇るサウンドノベルのノウハウを遺憾なく発揮し、見せて読ませて聴かせるタイミングが抜群であり、不満に感じることはない。仮にこれをほかがやったら、大失敗を起こして不満噴出だっただろう。
それどころか、声を使った演出が非常に巧く、どん詰まりに来ていたサウンドノベルの表現力が広がった瞬間だ。
一画面上の文章量も減り、すっきりした印象を与える。

グラフィックは実写とCGを組み合わせたスタイルで、人物描写も実物の人間をうつしている。
だが、顔を丸写しにせず、あくまでもプレイヤーの想像力にまかせるあたり「街」の失敗を相当根に持っているようだ。
まあ、作品的に顔出しさせちゃうと怖さがなくなってしまうってのもある。

ゲームシステムは、「かまいたちの夜」で登場した、フローチャートが入っており、読み戻し読み進みも簡単にできる。
しかし、分岐条件が複数に渡り複雑に絡み合っているので、ある程度考えて選択していかないと新しい話に到達することが出来ない。
この辺りの細工、特にヒントの与え方は非常にうまいと思う。
人によっては、未読の話にすぐ入れないのでイライラするかもしれないが、そこをゆるくしてしまうと、結局穴埋めしていく作業に陥ってしまうしまうので、この程度が丁度いいだろう。

肝心のストーリーに関しては…。ゲームでプレイヤーを怖がらせるのは実に大変だと言うことがわかる。
シナリオもなかなかに練られているが、意図的なのか時間的に余裕がなかったのか、複数のシナリオにわたって設定が中途半端に重複しており、話が似たり寄ったりである。贅沢を言うと、色々な毛色の話が読みたかった。
矛盾をなくすため、設定を同一にして、全部のシナリオを読むことで全容が明らかになる設計でもなく、一つの話からすれば歯切れの悪い部分がある。
また、これは「かまいたちの夜2」から気になっていることだが、トゥルーエンドが救われないほど絶望的な終わり方をするってのもどうかと。
これまでだと、ハッピーエンド的なものがほかに用意されていたが、今作ではどうやって進めてもむくわれない終わり方をしてしまうものがある。

「街」であった、TIPと呼ばれるハイパーリンクが本文中に隠されており、それを探す隠し要素が付けられている。リンクを踏むと怪談話を読める。
これは色分けがされておらず、ぼや〜っと文字がゆらいでいるだけなので、画面を凝視していないと見つけられない。
面白い仕掛けだが、見つけづらさを考えると、同じハイパーリンクを複数ちらばせておくぐらいが丁度いいバランスだと思う。

早く解かれて、ゲームを売られてしまうのを防止するために、ピンクのしおり編のシナリオを全部読むためには、パスワードを入力しなければいけないようにしているのは見苦しい。
たしかに、メーカーの不安もわかる。しかしそういうものではなく、本編の内容で手放したくならないものを作るように勝負してきて欲しい。意図が露骨過ぎて冷めるのである。

フローチャートが見づらく操作性も悪かったり、ボイス化のために、操作出来ない間の悪い部分が増えてしまったなど不満点も目立つが、相変わらず完成度は高い。
特に映像面は、これを一度体験してしまうと、PS2で出ていた「かまいたちの夜」すらも、ちゃっちく見えてしまう次元の違いを感じられる。
まだまだ進化の兆しが見られるジャンルであり、安心した。逆を言えば、進化の余地が見られる惜しい作品とも言える(特に内容面は正直弱い)。これはいよいよ他が物真似できない領域に入ってきた。
そこで結論。

本家の底力を見た。快作!





[2007/10/28]
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