いただきストリートWii


対応機種Wii
発売日2011/12/01
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2011 SQUARE ENIX / ARMOR PROJECT / BIRD STUDIO / KOICHI SUGIYAMA / Nintendo / MarvelousAQL
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「モノポリー」をベースにしたボードゲーム「いただきストリート」がついにWiiにやってきた!
が!正直遅すぎる!!ぶっちゃけ1,2年早く出すべきシロモノだ。売り時を逃していると言わざるを得ない。

DS版の後、このシリーズは携帯アプリに行ってしまったので、もうコンシューマでは出さないのかと思っていたから嬉しい半面、ゲーム内容のクオリティも気になる所だ。

大雑把に書けば、前作「いただきストリートDS」の内容に、新キャラと新マップ(舞台)を申し訳程度追加したぐらいで、すでにDS版をプレイ済みの人間には新鮮味のない作りになっている。
「いただきストリートDS」は、Wi-Fi対戦に対応しているし、キャラクタやマップも、なかなか綺麗にまとまっているゲームだと感じたので、それをベースにするのは悪いことではない。
だが、4年という月日をまたいでいることを考慮に入れても、これを新作として売りだすのはいくらなんでも無茶としかいいようがない。

本作の一番のウリは、株のシステムを取り去ったイージールールを採用している点だ。勿論、従来通りの株とお店で大儲けするルールでも遊べる。こちらはスタンダードルールと名付けられている。
ゲーム開始時に、どっちのルールで遊ぶか選択するようになっている。

このゲームは、「モノポリー」をファミコンに輸入する際に、コンピュータゲーム向けに株や5倍買いといったアレンジを施して生まれた作品だ。
そういった経緯で生まれた企画なので、お店の交換といった交渉コマンドにテーブルゲーム的なノリが残されている。

テーブルゲーム的なノリの欠点として、1回のゲーム時間が長い(1時間〜2時間)、株を使ったテクニック(テーブルゲーム的な駆け引き)がわかりにくい、というとっつきの悪さも引きずっていた。

だが、上記の通り、このゲームはテーブルボードゲームを元に企画されたものであって、コンピュータゲーム向けに1からデザインされたものではない。
そのためか、すでに完成されたゲームルールを下手にいじるわけにもいかず、ずっとこのような欠点を抱えたまま続編が作られ続けた。
多分、堀井雄二も、ここまで長寿シリーズにすることは考えてなくて、ただ「モノポリー」にハマったから、自分風にアレンジしてみただけだと思う。

この辺の開発経緯はドラクエとは違って詳しく明かされてないから、推測がかなり入っているのでこれ以上下手なことは書けないが、あながち間違ってないと思う。
自分がこの手の話で覚えているのは1作目のFC版の発売がやたら遅れていて(年単位のレベル)、当時は発売中止になるのではないかという噂が囁かれていたぐらい(だから発売された時驚いたものだ)。

そんなわけで、過去作では、家庭教師(ガイド役)を付けてみたり、目標金額の半分を最初から持たせたクイックマッチとか、欠点に対するテコ入れを行なっていたが、どれも抜本的な解決にはならなかったようだ。

イージールールというのは、そういう欠点を直球的に排除した画期的なモードと言える。
株を使った駆け引きがなくなったので、いかにお店を並べて価値(買い物料)を高めていくか?ということのみ気にすれば良い。覚えることはなく、実に直感的に遊ぶことが出来る。
目標金額も低めに設定されていて、短時間で終わるようになっている。
そのかわり、プレイヤーの工夫の余地がなくなり、サイコロの出目に頼った運要素がかなり強まっていて、ゲームとしてはあまり面白いものとは言えない。

特に気になったのは、序盤に運悪く店を取れないと不利になり、その状況から逆転することが難しい。従来の「いたスト」では、株を使うことでうまく食らいついていくことができた。
1,2周しても、マークマスorチャンスマスばっかりで空き店舗に止まれず、店を持てないまま売り切れという不運にぶち当たることは実は結構ある。
イージールールでは、このようなシチュエーションに対する救済措置がないため、買い物料に焦点を絞ったことで一発逆転しやすいなんて触れ込みだが、どちらかというと序盤先行したプレイヤーが有利になる一方的な展開になりやすい。

たとえるならば、ハドソン「桃太郎電鉄」で、貧乏神がいない、カードで妨害もできない、そんな味気ないルールだ。ゲームには何か番狂わせを起こす毒がないとはっきりいって盛り上がらない。
しかも、その毒は、ただ有害なだけじゃなくて、特性や規則性があって、うまく使いこなすことで有益になったりすることが望ましい。
確か桃鉄でも、貧乏神をなくしたモードを入れて欲しい要望があって(12だったと思う)入れたはいいが、次の作品ではそういうモードが入ってないということは不評だったのだろう。そもそもスタッフのさくまあきらは乗り気ではなかった。

なにより、このイージールールというのは、ただ株の要素を外しただけの作りで、芸がない。
ここで問題にしたいのは、株取引のない似たタイプのボードゲームを批判しているのではなく、既存のゲームシステムから問題とされている要素をただなくしただけという浅はかな作りに対してである。
(短時間で終わるように)マップの形を変えたり、目標金額を低くしたりすることで、それなりに様になってはいるが、お世辞にも面白いと言えるモードではない。

プログラムやインターフェイス、グラフィックの出来が悪い。要するに全体的にレベルが低い。
まず、ゲームの処理が遅い。ウィンドウの切り替えなど引っかかる感じでテンポが悪い。DS版とかもっと快適だった気がするのだが?
せっかくマリオやドラクエキャラと対戦するのだから、台詞を読みながらゲームをやりたいのだが、台詞表示を「超はやい」に設定しても、切り替わりがありえないほど遅い。
2ボタンで飛ばせるが、待ち時間の間、ずっとコントローラを持って、セリフが出るたびにボタンで飛ばすのもだるくなってくる。仕方なし、味気ないが台詞表示なしの設定で遊ぶことになる。配慮が足りない。
前はボタンで飛ばせなくてもサクサク切り替えてたと思うのだが。

グラフィックも、大した凄いことしてるわけでもないのに、致命的ってほどじゃないんだけどなんか重い。PS2版とか、こんな重たい表示だったっけ?

ドラクエやマリオの世界を舞台にしたマップに、元ネタのBGMが流れるが、このBGMが安っぽくて、盛り上がらない。
DS版の二番煎じのせいなのかもしれないが、なんか、やる気を感じられない。今回新規に作られた「マリオギャラクシー」「ドラゴンクエスト9」のBGM引用も、こだわりがなく仕様書通りに尺を収めましたというやっつけ臭が強くてつまらない。

1人用のツアーモードも、ただ12個マップを並べただけ。全部クリアしたら、隠しマップ(6枚)が順番に出現するだけってのも、実に事務的な作りでつまらない。

「Wii Fit」とかの一般層、ファミリー層を意識しているのが全体的に裏目に出ている。
例えばチャンスカードの絵柄が、カードの効果を示した無機質なシンボル的なものになり、集める楽しさがなくなった(一応コレクションモードで見れるけど)。
前のように、ドラクエネタ、マリオネタのゲーム画面を貼り付けたものにしてくれたほうが遥かに面白い。
デザイン全般も、ゲーム的なデザインを敢えてやめてみたのだろうけど、演出も音楽も地味ではっきりいってダサい。任天堂が出してる一般向けゲームを素人が真似てみたレベルで、かなり滑稽である。
というか、マリオキャラ、ドラクエキャラで売っているんだから、なんでそういう路線を敢えて殺してしまうのかと思う。誰に向けて売りたいのか、何をしたいのかがまるで理解出来ない。

あと感じた違和感は、レベルアップ時にもらえる「賞金」が「サラリー」という表現に戻っていること。賞金のほうがしっくり来るのだが?

プレイヤーキャラはMiiを使う。ショップで衣装や小物、モーションを買ったりして細かくカスタマイズできる(ちなみにDS版にも同じ要素は存在する、Miiは使えないけど)。
しかし、魅力的な商品がない。コスプレ衣装もアクセサリも全然少ない。DS版の方が遥かにバリエーション豊富だった。

やはり一般層を意識したのか、前作まではドラクエキャラは天野シロがデフォルメしたものをポリゴンにしていたが、今作では鳥山明のデザイン画に忠実なモデリングに変わっている。
この変化で気になったのは、ゲーム中のキャラクタの無表情さである。かわりにモーションを大振りにすることで喜怒哀楽を伝えている。
アニメチックな演出を避けた弊害だと思うのだが、これがまた地味さに拍車をかけてて、イマイチにしてしまっている。

収録マップ枚数は36枚とかなりのボリュームとなっている。イージールール用18枚、スタンダードルール用18枚で、同じ舞台(マップ)を用途に応じてちょっと変えているだけなので、実質18枚と言える。
全く違っているものもあるが、ほとんどがスタンダードルールのマップを一回り小さくしたものばかりだ。

スタンダードルールのツアーモードを先にクリアして、その後イージールールのツアーモードもクリアして隠しマップを全て出すまでやりたかったのだが、後者であと4枚を残すところで飽きて苦痛に耐えられず挫折。
イージールールは短時間で遊べるといっても、それでも1回1時間以上かかるし、ボードゲームなので運の要素が強く、やった時間だけ進めるタイプのものではないのが辛く、やってられなくなった。
ここに至る時点で、相当な時間プレイしているということもあり、レビューを書いてしまうことにした。

FFとDQキャラをかぶせることで化けたシリーズだが、FFシリーズはもう使わないのだろうか?
個人的にはもうマリオやピーチをボコボコにするのは飽きたので、FF13のライトニングとかサッズをボコボコにしたかったのだが。
それに、DS版の時は気にならなかったのが不思議でならないが、マリオがディズニーのミッキーみたいなキャラでとてもじゃないが見てられない。
逆にDQ9のサンディが妙にいたストの世界観にマッチしているのが笑えた所だ。

おそらくFFよりマリオを使ったほうが、数字を持ってるから売れると言う判断で採用しているのだと思う。
でも、ステージマップも対戦キャラのメンツも、強キャラはピーチ、ゼシカ、ククール、マップは、トロデーン城、アレフガルド、クッパ城、と決まりきってて、正直マンネリ化がひどくてつまらない。
かといってマリオもDQも、なかなかナンバリングの新作がでないので、4年経っても、あまりネタが増えない。FFネタは掘ったらまだまだ沢山出てくると思うのだが…。

唯一今回面白いと思ったのは、「マリオギャラクシー」を舞台にした円筒形のマップだ。実際触る前は、ただの宣伝対策のハッタリだと思っていたが、マップの端と端がつながっているという構造はなかなか新鮮で面白かった。
確かにマスの見づらさも非常に気になったが、シンプルなマップ構成にすることで、利便性はギリギリ保たれていると思う。

途中、マリオは数字を持ってるなんて書いたが、ゲームのダメさ加減に比例するように案の定売れてないようだ。
こんなやる気のない作りでは売れなくて当然である。全体的に安くあげて金を儲けようって言う雰囲気がプンプン出ていて、商品としての魅力が全くない。
このゲームは多分、会社が赤字転落したときに大慌てで企画して、ありあわせのモンでなんとか製品に仕立て上げようとしたんだろう。
個人的には、FFやDQキャラが初めてコラボレーションしたときの華やかさをまた見たいものだ。そこで結論。

ほぼ同内容のDS版の方が出来が良い。どうしてもWiiで遊びたいって言うならっ!!





[2011/12/13]
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