かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相


対応機種プレイステーション2
発売日2006/07/27
価格5800円
発売元セガ

(c)2006 SEGA / CHUNSOFT / 我孫子武丸 / 田中啓文 / 牧野修 / 羽毛田丈史
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ミステリー小説を題材にした人気サウンドノベルシリーズ、「かまいたちの夜」が、完結編と銘打ってまたまたやってきた。
様々な想いが交錯するなか、今作の出来映えを探る。

「街」の、ザッピングシステムを取り入れている。4人の主人公がおり、互いの選択肢がそれぞれに影響を及ぼす。
「街」と違い、一本のシナリオを複数視点で見ていくものなので、あれより違和感が少ない反面、ごちゃごちゃしていて難しくなったという面もある。
2では、推理を売りにしておきながら、まったくそれが必要のないものとなっていた。というより、ノベルそのものを楽しんでいく向きが強かった。
思えば、ザッピングほど、かまいたちに最適なシステムはなかったろう。しかし前作では敢えてああいう方向にした。
これは、振り返ると、安易な路線転換だったように思う。発売前のプロモーションも大がかりだったし(TBSでオリジナルドラマまで放送されるほどだ)、多くの人に売りたかったという側面もあったのだろう。
それに、おそらくチュンソフトにとって、PS2で最初に制作したソフトだろう。それならば、グラフィック方面に気をとられるのも無理はない。
フォローするわけではないが、ゲーム性は希薄な物の、完成度の高さはなかなかの物だった。

今回は、選択肢もかなり多く、一筋縄ではベストエンドにはたどり着けない。「街」と同様、正しい選択肢に導いてやる必要があるからだ。
これに加えて、全てのエンディングを埋めるとなると、かなりの難易度だ。ふとした選択肢が、別の展開に切り替わっていくなんてことはざらにある。

ローコストで作る目的もあったためか、CG関係やシステムエンジンは2のものを使い回している。
2では、ひとつのバッドエンドのためだけに作ったようなCGやムービーなど、物量面が膨大だったが、今作では少量化が図られている。
たしかに、総合的に見ると、色々寂しい気もする。しかし、それだけ中身へのこだわりは強く、脚本の出来がかなりいい。
もうひとつの意図として、シナリオに一貫性を持たせるという目標もあったようだ。細かいところまで気を配り、推理小説としてのボロが出ないように、かつ、さりげないトリックへのヒントなど、この辺の情報の与え方は素晴らしい。
いわゆる、叙述トリックというものも存在し、なかなかにプレイヤーを巧妙にだましてくれる。

欲を言えば、エッチなシナリオでなく、もう一つシリアス路線ではじけた完全なサブシナリオがあって欲しかった。
もしかすると、入れる予定だったのかもしれない。予約特典で、没シナリオが読める本が付いてくるという話だそうだ。

なぜ、入れなかったのかと言えば、やはりここ最近頻発した、少年犯罪の影響から、描写の自主規制が騒がれたからだろう。
本作も、それこそスーパーファミコンの一作目よりも、演出が遠慮がちになっている。相当警戒していたに違いない。

1や2のメインシナリオもサービスで収録されていて、これは3を解くために必要なあらすじを見せるだけのための最低限のものかと思っていたら、ちゃんと選択肢を選べたり、バッドエンドが入っていたりする。なかなかの頑張り具合だ。
1なんか、新しくプログラムし直しただろうに。時事ネタをこっそりすり替えるほどの凝りっぷりも愛を感じる。

残念ながら「かまいたちの夜」は、今回で終了してしまったが、推理サウンドノベルとしては、新しい進化を見せた。これで辞めてしまうのは惜しい。

サウンドノベルはまた一歩前進した。これで引っ込むのはもったいないぞ!





[2006/07/30]
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