風の伝説ザナドゥ


対応機種PCエンジン(SUPER CD-ROM2)
発売日1994/02/18
価格7800円
発売元NECホームエレクトロニクス

(c)1993 NEC Home Electronics / Falcom
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パソコンゲームを中心に活躍してた日本ファルコムがコンシューマゲーム機に本格参戦!!
「風の伝説ザナドゥ」は、PCエンジン向けに開発された完全オリジナルゲームである。

ゲームシステムを軽く説明すると、ファルコムの人気作「イース」を踏襲した画面見下ろし型のアクションRPG。半キャラずらしのテクニックもきちんと使える。
章立て方式で、章の終わりには、サイドビューの凝ったアクションステージが展開する。
成長システムはレベル方式ではなく、熟練度式を採用しているのも特徴的な点だ。

ファルコムにとってはPCエンジンのゲーム開発は初めてとなるが、その割にプログラムレベルは高く、しっかり出来上がっている。
さすが、PCゲーム業界で、多くのファンをつけてきた実力派の会社だと実感させられる。

ただ、ゲームパート、ビジュアルパートといったパートごとのクオリティは非常に高いのだが、PCエンジンのゲーム制作経験が浅いためか、
例えばゲームパートでボイスを当てて喋らせるとか、CD音源でBGMを鳴らすといったCD-ROMの強みをイマイチ活かしきれてなかったところが惜しいと言える。
しかし、ディスクアクセスは無いに等しい快適さだったり、サイドビューステージではPCエンジンでは難しい多重スクロールを当たり前のように再現しているなど特筆できる点は多い。

いっぽう、コンシューマーゲーム自体の開発に慣れてないからか、インターフェイスの作りがこなれていない印象だ。
フィールド画面上では常に左右どちらかにキャラクターのステータスウィンドウが表示されるが、このウィンドウがでかいためにゲームプレイの邪魔になっている。
メニュー画面では、説明書を見なければまず意味の分からないコマンドが多く並んでいたり、欲しい情報が一画面上に収まってないため、自分で画面スクロールを調整して見たい情報を参照するなど、不便さが残っている。
これらは、画面の広いPCゲームをメインに制作してきたファルコムならではの悩みどころといえるだろう。

ゲームはそれなりに面白く出来上がっているのだが、全体的に詰めの甘さや欠点が目立っている。

ストーリーは、膨大なフラグ立てを消化させることで、ゲームシナリオの面白さを演出しようとしている。
時折、どうしたら先に進めるかをプレイヤーに考えさせる場面もあり、謎かけの要素も入っている。

しかし、あまりに回りくどいフラグ立ての水増し感、行ったり来たりの多さに違和感を覚えて投げ出す人も多数出たと予想。
時間の概念があり、夜になると多くの人は寝てしまう。加えて、時間の流れが非常に早い。ある程度時間をコントロールすることは出来るが、勝手がわからない序盤ではただただ煩わしい印象を受けてしまう。
また、序盤から容赦なく入り組んだ広いマップ構成となっており、フラグ立てのバランスも容赦無い作り。独特のプレイ感覚に慣れるまでは、とっつきにくさばかりが先行してしまう。

アクションRPGとしての出来映えについても難点がかなり多い。

まず、トップビューステージでは、画面の隅まで行かないと画面がスクロールしない仕様が、多くの場面で悪影響を与えてしまっている。

画面の端まで行かないとスクロールしないということは、進行方向の先が全く見えずプレイヤーにとって視界が悪いことを意味する。アクションRPGで、この仕様はかなり痛いと言わざるをえない。
なぜなら、向かっている先に何があるのか全くわからないため、敵がいてもわからない。わからないので、まともに敵と戦うことが出来ない。つまり、アクションゲームとして楽しむことが出来ないということだ。

そして、スクロールが鈍いので、現在位置と地形の把握が困難で、迷いやすい。マップ自体も複雑な箇所が多いため、それに拍車をかけてしまっている。

家庭用ゲームのRPGでは二頭身キャラのゲームが標準になりつつあるなか、本作は一頭身キャラというのも、なんともチープさが漂ってしまっている。実に惜しい。

サイドビュー視点のアクションステージは、豊富なキャラパターンとアクション、多重スクロールする背景、仲間の1人が一緒に戦ってくれるなど、なかなかに見栄えの良い豪華な作りとなっている。
しかし、純粋にアクションゲームとしての仕上がりは、イマイチと言わざるをえない。

原因はいくつかあるが、キャラクターを画面の隅まで動かさないと画面がスクロールしてくれないこと、アクションが豊富でも敵の攻撃ルーチンやギミックといった基礎がちゃんとしてないために、操作してても面白さがない。

また、アクションRPGなのでキャラクターの強さが一定ではなくばらつきがどうしても出てしまう。
このため、横アクションとして適切なゲームバランスを組むことが極めて難しい。だから、想定された強さより弱い状態で行くと難しく感じるし、強い状態で行くと簡単に感じてしまう。

断っておくと、アクションゲームとしてのバランスが滅茶苦茶なことを批判するつもりはない。
本作はアクションRPGであり、アクションが苦手な人でもしっかり鍛えることで、楽にクリアできる配慮を行うことは理にかなっている。
特に「イース」以降のファルコム作品というのは、ストレスフリーを意識してゲームが作られている。

結局のところ、サイドビューステージを用意したのは、トップビューステージでは、それらしい格好いいボス戦が出来そうにないから、わざわざ見せ場のバトルシーンという意味で作ったのだろうと思う。

最後に熟練度システムについて。
“不自然な経験値稼ぎがいらない”という触れ込みで導入された熟練度制だが、単純なレベル制と比べると煩雑さを残す出来となってしまっている。
ダメージを受ければ受けるほど最大HPが伸びていき(正確にはHPを回復した時)、装備している武器防具を使い込めば使い込むほど、性能が上がっていく。100%まで使い込むことで最大限の性能を発揮する。

しかし結局この熟練度制も、悪い意味でファルコム的なゲームバランスの取り方をしているせいで、利点を活かせていない印象が強い。

章が進む度に、ワンランク上の装備品が登場するのだが、攻撃力と防御力に関しては、完全に装備品の性能にパラメータが依存しており、100%が上限でそれ以上使い込んでも強くなることがない。
そして、前の章で装備していた武器防具は、基本的に次の章では弱くて使い物にならず、新しい装備品に買い換えなければならない(もしくは宝箱から手に入れる)。

強い装備を手に入れても、最初から強いわけではなく、それまで使っていた武器防具の熟練度から、新しい武器防具の熟練度(=性能)が決定される。
つまり、装備を買い替えても、今度はその装備品の熟練度を、武器、鎧、盾の3種類をそれぞれ鍛えて育てていかなければ強くなっていかないのだ。

装備の買い替えを促すためか、数値のインフレも凄まじく、HP、攻撃力、防御力は、最終的に10万を超える途方も無いものになっている。

“不自然な経験値稼ぎがいらない”と謳っているものの、結局同じようなことをしなければならない。装備を買い換えるためのお金稼ぎだったり、装備品を鍛える熟練度上げなど。
章ごとに、敵が密集している露骨な稼ぎ場のような場所が必ず用意されていたりもする有様だ。
まあ、一応アクションゲームなので、多少無茶やって、弱い状態で先に進むこともできるが、それ自体が面白いわけでもない。

ちょっと仕組みが違うだけで、やっていることは「イース」と大した変わらない。それなら、レベル制にしてすっきりさせたほうが良かったような気もする。
(あまりに近づけ過ぎるとイースに似てるだのあーだこーだ文句を言われるから難しいところだ)

色々ごちゃごちゃと手厳しいことを書いていってしまった。
基本的にこの会社はRPG屋であり、欲を出してアクションゲームに手を出すものではない。

このゲームをやると、「イース」がトップビューだけで、しかも、本作と同じ体当たりアクションのシステムで、あれだけ面白くできていたのが、まさに奇跡的であり、凄いことだったと思わされる。

とにかくゲームとして成立させるだけで難儀している印象が強く、良くも悪くもPCゲームの色合いが強く出ているのも気になった。
壮絶なフラグ立ての多さだったり、フィールドマップの迷いやすい複雑な構造だったり、終盤ではダームの塔を思わせる広大なダンジョンなど。

ファルコム作品をPCエンジンに沢山移植してきたハドソンが間に入れば、もっと出来のいい作品に仕上がったかもしれない。そこで結論。

悪いゲームではないが、悪いところが目立つ作品。





[2014/08/14]
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