空想科学世界ガリバーボーイ


対応機種PCエンジン(SUPER CD-ROM2)
発売日1995/05/26
価格7800円
発売元ハドソン

(c)1995 HUDSON SOFT / ワイワイカンパニー / 広井王子 / 芦田豊雄 / 集英社 / フジテレビ / 東映動画
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原案に「天外魔境」の広井王子、「魔神英雄伝ワタル」の芦田豊雄、音楽に田中公平という豪華メンバーを据え、Vジャンプとのタイアップで企画されたハドソン鳴り物入りの超大作RPG。
さらに、PCエンジンで動画再生を可能にした新技術Huビデオも投入され、話題となった。

軽く紹介するだけでも、「これで売れなきゃおかしくない!!」レベルのものだが、残念なことにほとんど売れることなく市場から姿を消した。
なぜかというと、発売が遅すぎたのだ。1995ともなると、もうPCエンジン市場は終わった時期。注目は次世代機プレイステーションやセガサターンにうつっており、PCエンジン陣営もPC-FXという後継機種を発売していた。
ハドソンが腰を据えて作っているゲームだけあって、基本を外さないなかなか良いゲームに出来上がっているのだが、いかんせん発売時期の悪さや半端なメディアミックス(同時期にTVアニメも放映されていた)が僅かに残っていたゲームおたくからの印象を最悪にしてしまった。
これほど不遇なゲームを、自分は見たことがない。
あまりに売れなかったのか、すぐさまセガサターンに急ごしらえで移植してみたものの、セガサターン用に新たに作り替えるようなことをしなかったため、安っぽい仕上がりになってしまって、これまた逆効果に終わる。

よく勘違いされるのだが、元はガリバーボーイは、このPCエンジン版が大元であり、TVアニメをゲーム化したものではない(バンダイが出していたものはアニメ版を原作とする版権モノだが)。寧ろ、逆と言える。
このゲーム版とアニメ版ではストーリーも違うし、設定や同じ登場人物でも性格や声優まで違っていたりする。個人的には、このゲーム版の方が好き。

ゲーム自体は「天外魔境」の系譜に乗っかった、派手なビジュアルシーンで豪華声優がバリバリしゃべるPCエンジンらしいロールプレイングである。
本作は、このビジュアルシーンが、従来のPCエンジンではプログラムで動かしていたが、独自の技術Huビデオを使うことで、セルアニメーションを取り込み再生している。
勿論PCエンジンのスペックでは32bit機のように綺麗には出来ないが、画面サイズを小さくしたり、圧縮をかけるなどして、実現している。
実は似たようなことはビクター音楽産業「シャーロックホームズの探偵講座」でも実写取り込みをやっているのだが、とてもじゃないが実用的ではなかった。
それに対してHuビデオは、フルサイズじゃないし、圧縮しすぎて画面はざらざらで色合いも綺麗とは言えないが、滑らかにアニメーションするさまは必見と言える。
わざわざジャケットにHuビデオのロゴまで用意するほどだ。一つのブランドとして確立させたかったのだろう。
しかし残念なことにこの新技術は本作のみで他作品で使われることはなかった(NECアベニューのモンスターメーカーの完結編で採用していたのだが発売中止となった)。
ちなみに、本作ではシナリオ進行以外に、実験的なムービーが多数収録されている(きちんと世界観に絡めてやっている)。

それもそうだ、次世代機では容易に動画を扱えるのに、今更旧世代機で「これだけ出来ます!」と言われても、存在意義が既に無いのである。PCエンジンでここまでやれるということを身を持って証明したハドソンは素晴らしいのだが、時期が遅すぎた。
せめて発売があと1年早ければ…。次世代機が出る前ならアニメーション再生も十分な売りになったし、1994の同じくハード末期に出たコナミ「ときめきメモリアル」はブームになったぐらいだから、たかが1年とはいえまだ割と多くの人に見てもらえたと思うのだが…。

ストーリー構成や、ゲームシステムの構築は、同社「天外魔境」シリーズをお手本に作られていて、(Huビデオを除いて)突き抜けたプログラム技術などは見られないが、全体的に安定した高い完成度を見せる。
「天外魔境」を知らない人に軽く特徴を説明しておくと、町の住人など全般的なテキストのクオリティが高い。プレイヤーをノせる演出技巧を心得ている。CD媒体だがディスクアクセスが非常に早い。
それに加えて、本作では敵が見えており、かつ、回避しやすいので、戦闘シーンによるストレスが少ない。キャラクタのHP/MP以外のステータス数値は具体的に見れないが、小気味良くレベルアップし、きちんと新しい技も覚えていく(それによって戦略の幅も広がっていく)ので、少々長めのゲームだがダレずに楽しめる。
それにしても、「カブキ伝」でも感じたのだがインターフェイスはちょっとファイナルファンタジーの影響受け過ぎじゃないか!?と思う。さすがに戦闘画面は対面式に戻しているが。PCエンジンは、ハード性能的にファイナルファンタジー方式よりドラゴンクエストのような対面式の方が向いている。

新しい要素にもいくつかチャレンジしているのだが、そちらは少々滑り気味の印象を受けた。
主人公は船に乗り、ヨーロッパの海を駆け巡り、貿易をすることでお金を稼いでいく。敵を倒してもお金は手に入らない。
貿易は、遠くの国の特産品を欲しがっている人に“安く買って高く売る”のだが、欲しい物は変わることがないし、買値も売値も変わらない。
やればやるだけ、こちら側が儲かるシステムである。誰から仕入れて誰に売るか分かってしまえば、こんなにつまらないシステムはない。
メリットはお金が増えるだけなので、他にもお金を稼ぐ方法はあるわけで、そもそも、貿易をやらなくても、宝箱から結構いいアイテムが手に入るし、普通にやっていればまずお金に困ることがない。
どうしてもお金が欲しくなったら、カジノや闘技場などのミニゲームで稼ぐ方が楽でいい。箱の裏に「画期的な貿易システム!」と得意げに書くぐらいなら、もっと手の込んだものにしておくべきだった。

パーティメンバーは最大4人で、4人目は獣人というNPCが入る。何人かは強制的に仲間になるが、隠し的扱いのキャラもいる(期間を逃すと仲間にできなくなる)。
仲間になった獣人は船に乗り、獣人はそれぞれ、宿屋をやっていたり、道具屋をやっていたりと、仲間が増えれば増えるほど船の中の機能が充実し便利になっていくというくだりはなかなか良い。
だが、戦闘に連れていっても、自分で動かせないし、どのキャラもたいして強くないし、まるで戦力にならない。この辺はもっと大胆に作りこんで欲しかったものだ。

バトルデザインは、一度かけてしまえば切れることのない補助系魔法全般が強すぎるきらいがあり、難易度は低めで、歯ごたえに乏しい。が、強い敵はしっかり強いので、分かってやっている節もある。基本的にサクサク進んで欲しいんだろう。
親切心で置いたつもりのセーブポイントが、状況次第ではハマリ状態に陥る可能性があるのが気になった(簡単なゲームなのでまずハマることはないと思うが)。
また、ラストダンジョンに突入してしまうと前に戻れなくなってしまうのも不満である。

ミニゲームも豊富で良く作り込まれており、全てが本編に直結しており、ただの自己満足で終わっていない点も評価したい。
例えば、カジノは実際のお金をかけて勝負するし、闘技場のイースもどきの機神バトルは、本編のダンジョンでも登場する。つまり、闘技場は練習場の役割を果たしているのだ。その上勝ち抜けば大金が手に入る。

隠しイベントや隠しアイテムといった要素もふんだんに盛り込まれており、そういうものを探す楽しさもある。やってみると、とても作り込まれているゲームなのだが、それが売上に直結することはなかった。惜しい作品である。
ハード末期の作品で、全体的に良くまとまった作りなのだが、逆を言えば飛び抜けた何かがなかったとも言える。それゆえ、注目される機会も少なかったのではないだろうか。
テレビアニメの放映もフジテレビ系列で日曜朝9時からという子供向けの枠で、PCエンジンユーザーと非常にずれている。このギャップが埋められなかったのも痛いと言える。
自社ネタのパロディが多く、ゲーム自体も「天外魔境」で蓄積したノウハウをぞんぶんに発揮していて、なにやら一種の集大成的な作品に感じた。そこで結論。

ハドソンのPCエンジン作品の集大成。遊べ。





[2010/09/11]
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