キングダムハーツ 358/2 Days


対応機種ニンテンドーDS
発売日2009/05/30
価格5980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 SQUARE ENIX / h.a.n.d. / Disney
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「キングダムハーツ2」に登場したキャラクター、ロクサスサイドの物語が描かれるシリーズ待望の新作!!
ディズニーとのコラボレーションで人気のシリーズ、キングダムハーツがDSで発売された。

時系列としては、「チェインオブメモリーズ」から「キングダムハーツ2」の間をつなぐ格好となっており、
ロクサスという元々謎の多かったサブキャラクターに焦点を当てた、スピンアウト的作品となっている。
こういう作品は、後付けでいくらでも作れるので、設定も余計モンだし、はっきりいって不要である。
内容的には本編の1と2だけで十分。2は、いい金づるが出来たとわかってか、複雑な設定を付けすぎだ。

こういったゲームは、基本的に単体でも(原作の知識を知らない人でも)楽しめるように作られなければならないが、
本作は本編をプレイ済みで、かつ、シナリオを理解していないと、ちんぷんかんぷんな内容である。
いくら外伝とはいえ、これはいけない。「チェインオブメモリーズ」はいくらか配慮が見られたが、本作では全く開き直っている。

ゲーム内容は、XIII機関という本来敵側の組織に入り、日々任務をこなしていく。
毎回ミッションというクエストを引き受けて、その目的を達成するのがゲームの主な内容だ。
これは携帯ゲーム機といういつどこでも気軽に遊べるのをコンセプトにあわせた上手なシステムであろう。
1つのミッションが長くて30分程度で終わることで、ゲームを終えるいい区切りを頻繁に与えている。
壮大なシナリオをダラダラプレイさせられるものではなく、しっかり携帯ゲーム機ということを理解してゲームデザインに工夫を施している点は評価出来る。

しかし、ストーリーとゲーム(任務)が、まったくかけ離れたところで進展するので、なんでこんなことやってんだろうって気分になる。
目の前の強敵やノルマが、展開上重要な役割を果たすものでもなく、ただ話を進める際の障害にしかなっていない。これは無いだろう。

同様に、ディズニーのキャラや世界が舞台になっているが、必然性が全く無い。かろうじて、「キングダムハーツ」だからという理由だけでそれらは存在している。
本来このシリーズは、ディズニーのキャラと一緒に遊ぶがコンセプトだったはずだ。それが独自の設定が一人歩きしてしまい、主ではなく従の関係になってしまっている。

また、DSの性能や容量のせいもあるのだろう、あまり沢山マップを作れないこともあってか、ミッション達成のために、同じマップを何回も行き来させられる。
物語とは無関係のミッションをこなさせられることも合わせて、全編かなり作業的な印象を受けてしまう。
決してこれは、今作のミッションシステムだけが悪いわけではないと思う。寧ろ携帯ゲーム機であることを考えると、良い選択をしたと言える。
そういったものではなく、淡泊としたミッション内容と、同じエリアマップの繰り返しが退屈になってくるのだろう。

グラフィックやインターフェイスは、PS2「キングダムハーツ2」に近づけようと、かなり努力をしており、3Dを扱わせると貧弱なスペックのニンテンドーDSにしては、非常に良く頑張っているといえる。
グラフィックは特にクオリティが高く、テクスチャの描き込みはPS2に負けず劣らず雰囲気が出ているし、オブジェ等造形に関しても非常にクオリティが高い。
そして、キングダムハーツといえば、爽快感溢れる3D戦闘であるが、こちらのプログラミングもかなり良くできている。DSだからと妥協せずに作り込んだ結果が生んだのだろう。
どこをとっても、プレイステーション2版にひけをとらない水準で、良くできている。

残念なのは、ニンテンドーDSでは、アナログパッドがついていないので、十字キーで3Dフィールドを操作することになる。
しかし、十字キーで3D空間を操るのはやっぱり辛い。ボタン数の弊害もあって、一部不自由な操作(コマンド選択やターゲッティングの操作etc)があるのも気になった。
ターゲット操作はR2回押しではなく、R長押しの方が良いように感じるが?

今回は、ただレベルアップして強くなるのではなく、パネルスロットにアイテムをはめ込むことでキャラクターを強化されていくのだが、このシステムが良い(経験値を溜めてレベルアップすると「レベルアップ」のパネルが手に入る)。
さすがスクウェアエニックス(旧スクウェア)は、この手のカスタマイズシステムを作るのが上手だ。
パネルリンクというものがあり、特定の強化パネルをはめると、リンクしてさらに強力にパワーアップ作用を起こすという奥深さもいい。

ゲームバランスは、マルチプレイモードがついていることもあってか、爽快感よりは戦略性を重視しており、前述のパネルスロットによるカスタマイズ性を生かした立ち回りを求められる。
通常攻撃はあまり強くなく、各敵キャラには弱点属性が設定されており、魔法攻撃が圧倒的に優位なバランスにしてある。
ストーリーモードでミッションを受ける前に、どのようなカスタマイズをすれば良いのかアドバイスが記述されているほどだ。
そして、全体的にヒットポイントが高めなので、ザコモンスターですらザコっぽくなかったりする。基本的にマルチプレイ(協力プレイ)ありきの作りなのだろう。最大4人まで遊べるが、残念なことにWi-Fiには対応していない。

このゲームは「h.a.n.d.」という「チョコボの魔法の絵本」などを手がけた会社に外注しているのだが、どうもこの会社のバランス調整の仕方が好きになれない。
攻略法を知っていること前提のチューニングで、初プレイだと結構意地悪に感じてしまう箇所が非常に目立つのである。
「キングダムハーツ」シリーズにしては、爽快感よりもやりごたえを追求した感じで、しっかり敵の動きを見極めて避けたりしないとごり押しでは結構厳しい(ま、難易度選択あるんですけど)。

基本的にイベントはテキストだが、重要なシーンはほとんどCGムービー(ボイス付き)で演出している。但し、ムービーと言ってもプレイステーション2相当のモデリング演算を圧縮しただけである。
このムービー、分量的には結構な数で、それだけ力の入ったゲームであることを実感させられる。

どうせDSだからという価値観にとらわれず、かなり高い技術力を発揮したソフトである。しかし、単品として遊べるゲームかというと疑問点が多く、
熱心なシリーズファン以外はお断りという作りが非常に惜しい。もういっそのこと世界観を独立させて新シリーズとしてぶちまけた方が良かった気がする。
機種も違うし、もうちょっと新規プレイヤーを意識した作りをした方が良かったのではないか?
基本的な操作方法といったチュートリアルに力を入れるよりも、やらなければならないことがあったはずだ。

そこで結論。

金もかけた、中身も頑張った、なのに、内容はマニア向け。





[2009/06/02]
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