キングダムハーツ Birth by Sleep


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/01/09
価格5800円
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / Disney
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ディズニー世界を題材としたアクションRPG「キングダムハーツ」が、プレイステージョンポータブルに初進出!!
3人の主人公から一人を選び、3つ全てを攻略した時、シナリオの全容が明らかになるシリーズ初の試みはどうだったか。

「キングダムハーツ2」のシステムをベースに更なるチューンナップを加えた内容になっている。

アクションゲームでありながら、RPGのようにコマンドを選択して行動する作りになっていたが、今回は攻撃コマンドは○ボタンで固定し、
魔法や特殊攻撃といったアビリティコマンドやアイテムは装備して、使いたいコマンドを上下キーで選択して△ボタンで使用という形になった。
アビリティコマンドは一度使うと再使用するにはチャージ時間が必要で、ゲージが溜まらないと再度使うことが出来ない。
よりアクションゲームらしい操作性に洗練されたと言える。

攻撃を当てていくと、ゲージが溜まっていき、MAXになると強力なフィニッシュ技を決めることが出来る。
このゲージが溜まる間に、特定のアビリティを使うと、ここで攻撃スタイルが変化し、一時的にパワーアップが出来る。この状態は通常時よりステータスがアップするので、積極的に狙うことがとても重要となっている。
たとえば、ファイア系のアビリティを使ってゲージを溜めると、炎攻撃に特化したスタイルに変化する。
このシステムを組み込むことで、ボタン連打になりやすいゲーム展開に幅を持たせている。

睡眠、毒、混乱や属性効果など、この会社はアクションゲームにロールプレイングの要素をとにかく入れたがるが、今作では割とこの辺のバランス取りが上手で、システム的な融合がうまく行っていると思う。

アビリティコマンドにも、成長要素があり、セットして戦うとEXPが蓄積され最大まで育つと他のコマンドと合成させることが出来る。
このときに素材を使うと、コマンドにHPアップなどの効果が付いたアビリティが付与される。
強化アビリティのついたコマンドをまた最大LVまで育てると、プレイヤーが強化アビリティを習得したことになり、該当コマンドを外しても効果が持続する。
つまり、合成を積極的に使うことも、またゲーム展開を優位に進めるための手段といえる。

合成のシステムは、安易に取り込むとただ煩雑でつまらないものになってしまうが、本作においては、やればやるほど得をする作りになっているので、成功している部類と言える。
不要で使わなくなったコマンドの再利用にも役立っている。あまり考えず適当に合成してしまっても、損をするということが無い。

他にも超必殺技的位置づけのシュートロックや、他キャラのアビリティコマンドが使えるD-LINKなどがあるが、前者は別として後者は無理矢理付けたくさい印象しか無い。

「キングダムハーツ2」と比べると、複雑になってしまった印象を受けるかもしれないが、なんてことはない基本的な要素はしっかり外さず作っているので、従来通りの感覚で遊べる。

シリーズでは初となるが、複数の主人公が存在し、3人の中からプレイヤーキャラクタをゲーム開始時に選択する。それぞれシナリオが異なるので、3人全てをプレイすることでゲームクリアーとなる。
しかし、まわる舞台が全く一緒だし、ゲーム構成もほぼ同じな上、重複するシーンも結構あって、さすがにこれを3巡するのはだるい。せいぜい2巡が精一杯だ。ただし、1キャラのボリュームは短めに設定されている(7〜8時間ほど)。

このシリーズは、ディズニーの世界を冒険することが売りであると思うし、面白い部分だと思う。
3キャラ遊ぶことでストーリーの核心に迫ることが出来るが、そっちはたいした面白くない。
ついでに言うと、意固地に世界観を統一して作り続けるのもどうかと思う。
本作は、「キングダムハーツ」一作目より前の時間軸を描いた物語である。従って、外伝とはいえ、シリーズ未経験者にも入り込める内容ではある。
が、ぶっちゃけそういったごちゃごちゃした設定はなるたけ考えず遊びたい。まったく新しい世界観でつながりは関係なく、ディズニー世界を渡り歩く後付けの設定を作るぐらいでいいのではないだろうか。
ディズニーとは関係ない本筋のストーリーは、なんか話がくさいし、いまいち面白さが無い。

ゲームが短いことや、沢山マップを作れなかったこともあるのだろうが、敵の配置が密集しすぎていて、テンポが悪い。
倒さず無視することはたやすいが、そうすれば経験値が稼げず、どん詰まりになる。ましてや、同じマップを3人の主人公で3巡するのである。かなり作業的になってくる。
PSPのUMDということで、それなりのボリュームを持たせる苦肉の策でもあったのだろうが、やはり、こういう構造だと、微妙に行けるマップを変えたりまわる順序を変えてみたところで、そんな工夫を施しても飽きてしまう。

せめて、2人目以降のキャラ選択時は、なにか引き継ぎ要素のようなものが欲しかった。さすがに3人目を遊ぶ段になると、やる気がかなり削がれてしまっていた。

敵の多さもあるのだが、ムービーを見ている時間が長いのも指摘しなければならない。
少し進めればすぐムービーである。しかも長い。ムービーはこのゲームの売りでもあるだろうが、やはりもっとゲームが遊びたかった。

また、相変わらずラストボスが異様に強すぎるのも何とかして欲しい。ラストボスというよりも、「キングダムハーツ」のオリジナルキャラクターのボス戦である。
ディズニーキャラとの戦闘は面白いのだが、これらのオリジナルキャラとの戦いは、全く面白味を感じられない。せめてもっと倒しやすければ気にもならないのだろうが、これが妙に強い。

外伝でありながら、リロアンドスティッチなどこれまで取り上げられなかった作品が大半を占め、内容的にはほとんど新作同然である。
ミニゲームの数も異様に多く、妙に力が入っている。3Dレース、リズムアクション、果てはいただきストリートを模倣した物まで収録されているほど(さすがにこれはいらなかったと思うが)。
携帯機ということで通信プレイに対応したモードも付いている。この辺りの頑張りは凄い。ナンバリングに引けを取らない凝りっぷりと言える。

グラフィックもPSPとしてはかなり綺麗な部類に入る。コンフィグでバッテリーの消耗を犠牲にして、ハイクオリティーな描画に切り替えることが出来るが、最も高画質な設定にすると、プレイステーション2のゲームとほとんど同等のクオリティーで遊ぶことが出来る(ただしACアダプターとつないだプレイを推奨されている)。
通常設定では、色数が落とされ、沢山の敵が出た場合など処理落ちするように設定されている。
ただ、イベントムービーなど、演出面はやはり寂しい。勿論PSPの中では、高い完成度を誇っている。

データインストールに対応しているが、それを使ってもまだロード時間が長い。これは、ハードウェアの性能を極限まで酷使していることの裏返しと言えないだろうか?
メニュー画面を開くにもロードしにいくので、相当ギリギリのプログラムを組んでいると思われる。

ゲームをやり込むと続編への布石となるシークレットムービーなるものが見られるようだが、いい加減芸がない。シリーズ恒例でファンも楽しみなのかもしれないが、もうこの手法にはさすがに飽き飽きだ。

インターフェイスは文句の付け所がないが、カメラ操作に関しては、L+Rでロックオンよりも、LかR2回押しでロックオンの方が良かったと思うが?逆にL+Rで視点リセットを割り振った方が良い。
なぜならカメラワークが割と良い動きをするので、視点リセットすることがほとんどないからだ。

正統な続編ではないものの、力の入り方は連番作品の最新作に等しい作り込みで、中々良く出来ている、
しかし、いっぽうでシリーズ物の宿命とも言える、マンネリっぽさがみられ、目新しさに乏しい一面も感じられた。
次の作品では、改善されていることを願う。そこで結論。

シリーズ作品特有の良い面も悪い面もそのまま引きずっている。無難な作品。





[2010/01/18]
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