キングダムハーツ Re:コーデッド


対応機種ニンテンドーDS
発売日2010/10/07
価格5490円
発売元スクウェアエニックス

(c)2009 2010 SQUARE ENIX / h.a.n.d. / Disney
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携帯電話向けに配信されていた「キングダムハーツ コーデッド」をコンシューマーゲーム用にリメイク移植したものである。
移植作業は、NDS「キングダムハーツ 358/2 Days」を開発した実績のあるh.a.n.d.が引き続き担当。

DSでは2本目ということもあって、全般的にこなれてきた作りで、かゆいところにも手が届く調整がなされている。

まず、イベント演出。見せ場の全てがイベントムービー(PS2相当のグラフィックを圧縮して収録)で、その他スクリプトイベントはキャラクタCGの立ち絵と背景を組み合わせて吹き出しで台詞を表示。
これまでのシリーズ作品と比べると貧弱に映るかもしれないが、無理にポリゴンで全部やろうとするのよりは断然良い。

携帯ゲーム機ではボタン数が少なくロックオンやカメラ操作が特に不自由だと指摘してきた。今回も特に直ってないが、戦闘シーンで敵に攻撃する際に、きちんと相手を狙わなくても攻撃先の自動補正がかなり強力に働くので、あまり気にならなくなった。
なお、この機能は、オプションで切ることも出来る。

今回も勿論3Dアクションゲームだが、アナログパッドが無いと辛いと感じさせない努力をしている。マップの構造を曲線的なものを極力避けて、でこぼことしたタイルを敷き詰めた方式で、十字キーでプレイしやすいように作っている。
ただ一つ気になった点は、今作独自の要素として登場するバグブロックというギミックはストレスを溜めるだけであった。ある時は動く足場でシビアなジャンプの飛び移りを要求されたり、ある時はダメージトラップとして嫌らしい配置がなされていたり、前者はオートジャンプ機能を付けること(これがまた頭の悪いシステムで、詳しくは後述)で解決しているが、後者はただでさえ携帯機に合わせてマップを狭くしているのに、その狭い通路にこんなもの配置されても窮屈なだけだ。
このシリーズは大味な操作性なのに、こういったシビアさを要求するものを率先して導入するところが好きにはなれなかった。

オートジャンプ機能の搭載も、ニンテンドーDSで3Dアクションをやるには辛いことから導入した要素の一つだろう。任天堂「ゼルダの伝説 時のオカリナ」からの丸パクリだが、良いシステムはどんどんパクるべきである。寧ろ逆に、なぜもっとオートジャンプシステムをパクるゲームが無いのだろう?と思う。
しかし、このゲームをやって、安直にパクらない(パクれない)ことが判明する。ジャンプしなくていいところ(下に降りたい場合)でも盛大にジャンプする。はっきりいってうざったい(逆にちょっとした段差は、しっかり小ジャンプで登ってくれる賢さがあるのに…)。また、一箇所だけオートジャンプ機能を入れていると不利になるシーンがあった。
要するに、このシステムを搭載する場合、地形やゲームデザインなどに気を使わなければならないということだ。このゲームでは、(前作を踏まえて)やりづらかったからという理由だけでいれた。実際、シビアなリフトの飛び移りの場面ではかなり便利というか、無いと評価を2段階は落とすぐらいイライラする作りなので、恩恵はあるのだが、不備も目立った。

元が携帯アプリのゲームだし、ムービーの挿入頻度がかなり高いことからわかるように、ゲームのスケールはかなり小さい。目安としては12時間程度でクリアできる。ディズニー作品の収録数やステージ数も少ない。
ただし、ステージごとにゲームルールが変わったり、サイドビューのアクションステージや3Dシューティングステージを入れたり、豊富なバリエーションを付けることで、物足りなさを払拭させようという努力は評価できる。

この会社の得意とするキャラクターカスタマイズ周りのゲームシステムの完成度が高い。もはや看板タイトル「ファイナルファンタジー」を超えたと言っても過言ではない(この会社の主力スタッフをこのシリーズに移したのではないかと思うほどだ)。メニュー画面のインターフェイスも(DSにしては)良く出来ている。
ただひとつの欠点は、これらのシステムコマンドの覚えづらいネーミングセンスだけ。

キャラクター成長システムは、「ファイナルファンタジー10」のスフィア盤を参考にした感じで、面白い。宝箱から「HP+2」などステータスアップさせるアイテムを取って、盤上の空いたマス目に配置していく。
スフィア盤ではレベルを消費して駒を進めていたが、こっちでは、駒を集めて空いたマス目にそれらを配置してキャラクタを強くしていく。
盤上には、難易度を変化させられる機能やアビリティが手に入る場所があり、空いたマス目をそこまで埋めていくことで、それらを入手できる。
特に面白いのは、盤上のCPUとCPUをつなげると、デュアルプロセッサが発動して、つなげたラインに配置したステータスアップ効果が2倍になるというものである。
いかに効率的にキャラクターを強化していくか、便利なアビリティーを優先して取るか、吟味させる作りがロールプレイングらしい上手い作り込みと言える。
不満点は2つあり、手持ちの駒を全てセットしてしまうと、入れ替えが出来なくなってしまうこと(つまり、効果2倍のマス目に移動させたいアイテムがあっても、手持ちに使える駒がないと交換できない)。入手できるアビリティは隠さず最初から見えている方が面白かったのでは?ということ。

PSP「Birth by Sleep」で面白かったコマンド合成のシステムを投入している。ちなみにバトルシーンでの操作性やゲームシステムも「Birth by Sleep」を踏襲している。
ただ、こっちはバランス調整に難があり、合成するために溜める必要があるCPがすぐにいっぱいになってしまうことや、あっという間にこれ以上強化できなくなる最強状態のコマンドが完成してしまう点。
もともと、使わないコマンドに価値を持たせるためにこういったシステムがあるわけで、そのコマンドを使うということは、CPを蓄積させるという意味でもある。最大状態に強化されたコマンドばかり使っていてはもったいないからだ。
しかし、ちょっとやっただけですぐ経験値が最大値まで貯まってしまい、その都度勿体無いので合成させるためにメニュー画面で合成する。あまりにも溜まりづらいのもどうかと思うが、こうもあっさり簡単に合成で強化できてしまうと、強くする楽しみも薄い。

上記2つのカスタマイズシステムはかなり面白いのだが、どちらも頻繁にメニュー画面を開いて手をかけてやる必要があり、煩雑である点は否めない。

クリアするだけなら、難易度はかなり低い。途中で難易度を変更できるのも融通がきいていていい感じだ。
特に最近のキングダムハーツでは、やたらオリジナルキャラクターがでしゃばって、強烈な強さを毎回見せつけてその都度うんざりさせられてただけに、今作の難易度調整は、ステージ最後のボスキャラがちょっと強くてひやりとするというぐらいで、いい位置にあると思う。

DS一作目の「358/2 Days」ではマルチプレイ対応していたが、今回はアバターモードというすれ違い通信のみに対応させた。「ドラゴンクエスト9」ですれ違い通信が流行った影響だろう。
ここでは自分だけのアバターキャラを作れるが、ゲームをやり込むことで使えるパーツがどんどん増えていく。

このすれ違い通信の関係でいれたと思うのだが、バグエリアに侵入しバグモンスターを全滅させるシステムエリアという要素がある。
この中では、与えられた条件をクリアすることで、高い報酬を得ることが出来るのだが、このゲーム最大の不満点は、このフロアトライアルを拒否できないことだ。
やりたくもない条件でも強制的に参加料を払わされる(初回のみで2フロア目以降は離脱できるのではあるが)。
正直、このシステムエリアは、無駄にマップがでこぼこしていて、見栄えが機械的で迷いやすく(自動生成式か?)、シナリオ進行上攻略を求められたさい、かなりつまらなかったパートだ。ぶっちゃけ、ばっさりカットしてもいいぐらいに感じた。

一つのエピソードがステージによって区切られていて、ステージクリア時にスコアが計測され算出される。何度もプレーしてハイスコアを狙おう!という意図があるのだろうが、その割には一面が長すぎる。何度もやる気にならない(少なくともハイスコア狙いでは)。

さて、割と好意的に書いてきたが、ストーリー、シナリオ、シリーズ展開の仕方について、毎回苦言を呈してきたが、今回はかなりきつめにこの辺り指摘する。
元が携帯電話のゲームであり、外伝作品だからしょうがない面はあるのだが、それを踏まえた上でも、言い訳にはならないと感じたからだ。

ストーリー。スケールが小さくどうでもいいレベルだし、シリーズ作品プレイ済みの人間でも、意味不明である。公式サイトなどを見て、ようやくどの時間軸や設定を描いているのかがわかる。寧ろわかっても面白くなるわけでもないのだが...。
もうスピンオフ作品ではさんざん使い尽くされた1作目で登場したディズニー世界をまたなぞるだけで数も少ない。その割に、新規のプレイヤーへの配慮が全くない。さっき書いたように、ナンバリング作品をプレイしてきた人間でも、前情報なしだとどういう話かわかりづらい。
ニンテンドーDSだと、ムービー垂れ流しといったスペックを駆使したごり押しも出来ない。今更テキストベースの立ち絵でやりとりされる安いイベントシーンで焼き直しを見せられても、熱心なファンであればあるほど、いい加減飽きているのである。

ここ最近は、このような小出しの外伝作品ばかりで口を濁しているが、はっきり言ってもう限界を超えている。個人的には、1と「チェインオブメモリーズ」、2で綺麗にストーリーもシリーズ的にも完結していると思う。それ以降の作品は遊ぶ価値すらないといっても言い過ぎではない。

主題歌の宇多田ヒカル「光」も、もう聴き飽きた。そもそも何年前の歌だって話だ。
スクウェアエニックス自慢のシナリオプロットも、いまどきこういうのは流行らない。何年も古い設定とキャラクタで脚本を書き続けているから古臭さを感じるのだろう。そして、ディズニーのキャラクターはどんどん脇にほったらかしにされていっているし、困ったものだ。
なんというか、「世界の中心で愛をさけぶ」のノリで何年も売り続けてる感じ。流行は変わるものだ。実質的にシリーズとしては2で成長が止まってしまっているのを如実に現しているのがこの辺りだと思うのだが?外伝だからって手を抜いていいわけではない。

結果として、ゲームとしては悪くない(プログラミング技術・ゲームシステム)のだが、核となるゲーム内容自体が、長く売りたいのか小出しで先延ばししすぎていて、わざわざ遊ぶ価値を見いだせない残念なものに成り果てている。
外伝作品が3本も続いて、どれも微妙な塩梅だとこれぐらい言いたくなる。そこで結論。

そろそろお金かけた正統な続編を!!





[2010/10/10]
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