キングダムハーツ チェインオブメモリーズ


対応機種ゲームボーイアドバンス
発売日2004/11/11
価格5980円
発売元スクウェアエニックス

(c)2004 SQUARE ENIX / Jupiter / Disney
戻る

ディズニーキャラてんこ盛りで一躍ドル箱作品となったスクウェアエニックス「キングダムハーツ」がゲームボーイアドバンスでデビュー。
元はPS2で3Dアクションだったゲーム内容を、どのように携帯機用にアレンジを施したのかが見所。

サードパーティの作品にしては、非常に技術レベルが高く、ぶっちゃけ、それを見るだけでも価値はある。
容量の関係で量こそ少ないがGBA上でCGムービーが滑らかに流れるのは単純に圧巻(さすがにボイスまでは入らなかったようだが)。
主題歌ともなった宇多田ヒカルの「光」も、なんとフルサイズで収録されており、スタッフロールでいきなり流れだした時には驚かされたものだ。
1995年にナムコが「テイルズオブファンタジア」で、カートリッジでボーカル入りの歌を入れて大きな話題を呼んだが、
あれから9年。テイルズよりも高い再現率でさらにフルバージョンである。随分と進化したものだ。

キャラのアニメパターンも豊富で、フィールドグラフィックも丁寧に描かれている。
他にもエフェクト効果など、一瞬GBAか?と疑いたくなるほど、ハードウェアを上手に使っている。
良くGBAは使い勝手の悪いハードだとか言う話を聞くが、それはSFCのときにも言われていたことであって、
使い手次第でまだまだ十分高いポテンシャルを秘めている。そんな可能性を感じたソフトだった(任天堂の作品なんかを触ると毎回そう感じるのだけど)。

さて、ゲーム内容だが、時間軸としては1と2の中間でサイドストーリー的なものが入っている。いわば外伝作品である。
一作目で、続編をにおわす映像を入れて一部で話題となったようで、本作はそういったコア層を満足させられるほどのものかというと、正直苦しい。
まず、直接的に本編に絡んでくる話というよりかは、2で登場するであろうキャラや伏線を一部先出ししてそれを見られる内容(ファンサービス)と解釈すべきだ。
ただし、値段的にこの程度の内容なのはあまりにしょっぱいし、それではゲーム自体はどうなのか。

本編は、1のストーリーを再びなぞっていく格好で、それに若干本作のエピソードをのっけて、最後にちょっとしたオチを見せる。
これは、熱心なファンほどがっかりだろう。見せ方も機械的で工夫がない。かといって未体験プレイヤーが満足出来るほどのものでもない。誰に向けて作ったのかさっぱりだ。
クリア後、別視点で展開するシナリオが遊べるが、こちらはそれなりに独特な話が見れるのだが、正直いってたいしたものではない。
というか、このゲームはもともとディズニー作品をウリにしたゲームであって、独自の設定にはそれほど魅力は無かったと思うのだが…。
(ようするに、スパロボのオリジナルキャラに位置するものだと思っていたのだが)
作品としてはますます婦女子率が高まっていて、なんだか嫌らしい感じがする。ターゲット層はこれで満足出来てしまうのか?

ゲームシステムはカードを前面に押し出したものとなっている。この時点で、とても嫌な予感がした。
コンピュータゲームでカードを題材にしたタイトルに出来の良いものが全然無いからだ。
大抵の作品は「カード」という設定に引っ張られて、駄目にしてしまっている。やらなきゃ良かったのにっていう感想を持つものが多かったのだ。

このゲームに関してはどうか?仕組み自体は実は結構面白かったりする。
カードを使って扉を開けるというシステムも、条件に合うカードを持っていない場合、付近の敵と戦ってそれを手に入れる必要があり、
ちゃんとシンボル戦闘をさせる意味合いを持たせていて、避けてばっかりでも最低限の戦闘をさせることである程度のレベルまで成長出来るのだ。
ただ、机上の理論としては感心出来るが、心情的には変な足止めを食らった感じで、あまり好きになれない。

バトルでも、カードを消費して行動(攻撃、魔法など)するというルールで、相手より高い数字のカードを出して無効化して隙を作ってそこを攻撃するというような、自由度の高いものとなっている。
そのうえでアクション性も強く、敵の攻撃を避けて間合いを取ったりという要素もある。
カードゲームとアクションゲームの駆け引きを両立させているのだが、全く、欲張りにもほどがある。
単純に忙しい。相手の出すカードも見て、操作キャラも気にしないといけない、こちら側が出すカードも選んでタイミング良く出して…こんなに一度に出来るかー!!ちゅう感じで、シビアなボス戦では何度も怒鳴りそうになった…が、なんとか気を取り直してクリアーした。
カードバトルは、感覚的にはトランプゲームの一つで反射神経を要求されるスピードに近いものがある。
一応、難易度はカードブレイクを気にしたプレイをすればそれほど高くはないが、一部のボスが過剰に強く、やり直しの度に事前のイベントを見させられる。強敵との戦闘をやらせるならスキップ機能は入れて欲しい。
特に、回復手段の限られるリバース編(クリア後のモード)の終盤のボス戦は苦痛で苦痛で仕方が無かった。まるで、制限プレイをやらされているようなきつさであった。

このように複雑なゲームルールを敷いているため、直感的でないことが欠点となってあげられる。
例えば、ボスに勝てない、上手く進めない、というときに原因が何かはっきりしない独りよがりさがあるので、そこに対応していく辛抱強さが必要。
前作が3Dアクションだった先入観や、見た目アクション要素の強い作品なので、そういった感覚で取り組むと痛い目を見る。
このギャップは、絶対埋める必要があった。単純に気持ちよくないのである。
また、この会社はアクションゲームを作るセンスがないのに、懲りずにアクション要素を絡めたものを作っている。
アクションとしての操作性、当たり判定、キャラクターの動きなど、これも例に漏れず非常にストレスの溜まるつらいゲームだ。
特に操作の割り振りは、かなり酷いと言わざるを得ない。
緊急回避が暴発しやすく、意図しない方向へ移動してしまったり、キャラクターを操作しつつL、Rボタンで出すカードを選ぶ。タイミングを計って出すという、
一連の忙しい操作をこなすのはそれだけで苦痛で、人を選ぶ敷居の高さがある。
そういったゲームのくせに、カードの絵柄が見ただけでそれが何を意味するカードなのか分からない。
メニュー画面で、効果を確認して覚える必要があるのは致命的な問題。
明らかに、アイディアに対してボタンが足りない。詰め込みすぎである。もっとそぎ落としが必要だった。

PS2版とは異なり、ゲーム性の強い内容となっていて、しっかり考えてそれをこなしきる腕がいる。シリーズ的にこれで良かったのか?という疑問が残る。
大筋のゲーム内容を見る限り、どうも技術的なものをやりたくて作ったという印象が強いのだが…。製品として出す以上、もっとちゃんと作り込んで欲しいものだ。

詰め込みすぎて訳が分からない、内容の絞り込みと物語の展開に一捻りの欲しい作品。





[2005/10/10]
戻る

inserted by FC2 system