3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!


対応機種プレイステーション2
発売日2004/06/24
価格6800円
発売元チュンソフト

(c)2004 CHUNSOFT / TBS
戻る

TBS系列の人気テレビドラマシリーズ「3年B組金八先生」を題材にしたアドベンチャーゲーム。
チュンソフトのサウンドノベルの系統を受け継ぐ作品という面でも期待出来るものだが、中身はどうなのか。

こういう企画ものは大抵失敗していることが多いが、今作はゲーム内容さきにありきという感じで割としっかり出来ている。
「街」にあったTIPSやザッピングという要素がさりげなく盛り込まれてるのも好感触だ。

サウンドノベルの路線といっても本作はテキストではなく全てフルボイスで喋り、クオリティの高いアニメーションで見せていく。
どちらかというと、昔SCEが出していたやるドラシリーズに似ている。プログラム的な動かし方もそっくりだ。
フラグ管理がかなり細かく設定されていて、一度見たシーンはスキップ出来るのだが、ささいな違いでも別扱いだったりする。
やるドラよりも見せ方は一段上。手の抜き方が上手で、動かすところは動かしてそれ以外は適当に誤魔化している。
ムービー(というよりも正確には殆どがプログラムの動画だが)のクオリティも高く、普段の立ち絵の時とのつながりに不自然さも無い。
立ち絵もただ正面向いて口パクさせてるだけでなく、声に合わせて微妙に仕草をさせてたり、なかなか凝っている。
それから、イベント中ポーズすると文字で聞き逃した台詞を読み直せるフォローもあり、感心。
しかし、2周目以降スキップ機能を多用してるときに選択肢を迫られて、状況がつかめないことが多くあったので、カード選択のときも読み直せると良かった。

基本は一本道だが、見なくても進むイベントも多く用意されており、自発的に探す楽しみもある。
物語に関係ないキャラの反応も多彩で、さすがチュン!!見事な職人芸である。この辺の作り込みには拍手を送りたい。

見せ方もさることながら、当然の如くストーリーもまたいい。声優のキャスト構成もベテランから最近の人まで偏りがなく絶妙で演技も素晴らしい。
ドラマ版に出演している武田鉄矢、森田順平、鈴木正幸などの常連も声を当てており、この人たちの演技にも問題はない。
とにかく良くできている。学園ドラマなんてのはありきたりの領域だが、ツボの抑えどころが分かっているので、素直に楽しまされてしまう。

プレイヤーは坂本金八の代理教師となって3-Bの担任となり、期間内(原則1日4ターン)にスポットを当てられた生徒の問題を解決していく章立て形式になっている。
学校の周辺にいる生徒や先生達に出向いて、情報収集をしていくとイベントカードが手に入り、それを使いながら進めていく。

ゲームシステムは出来る限り簡素化されており、分かりやすい。
ゲーム開始時の説明も丁寧で、メニューを開くと操作方法一覧も一緒に表示されるほどである。
ただ、ここには一度見たイベントをスキップ出来る操作が書かれていないし、メニューにあるヘルプ(システム解説)の説明がいい加減で戸惑うことがあった。
できることなら、説明書を開かずにすむほどの徹底ぶりを見せて欲しかった。

見た目は一風変わっているが、物語に沿ってフラグを立てていく意外と古いタイプのアドベンチャーである。
時間内にフラグを立てられないと(話を進められないと)ゲームオーバーになってしまうシビアさも見せる。
ただ、章によって難易度にバラツキがあるし、ところどころでは独りよがりで分かり辛い箇所も。
そのくせ、チャンスは一度きりの場所が多く、たった一回間違えるだけで即バッドエンドというのは厳しすぎやしないか。
こちらのコマンドは前述したイベントカードを出すというものなのだが、使いどころやニュアンスのわかりにくいカードも決して少なくなく、対応に困ることも多く見られた。
一応、右上に表示している信号機を黄色や赤に点灯させることで、期限を知らせる配慮もあるが、それでも厳しい。
基本的にバッドエンドになっても次のシナリオへ進むことも出来るが、なんだかテレビドラマに例えればラスト10分見れなかったという感じでやりきれない。
しかも、結局物語の核心に迫るためには全ての章をクリアーする必要があり、こまめにセーブするという自衛策をとる羽目に。

もうひとつの要素として、生徒の才能を開化させていく才能開化という要素もある。
ストーリークリアを目指すだけでは時間が余るようにしてあり、その時間を使って生徒の才能を伸ばしていくというもの。
マス目に書いてある項目に対応する才能開化カードを出してやることでそれが埋まっていき、?マスまで到達するとその子の将来像が分かるようになっている。
恋愛SLGの女の子を攻略する(アルバムを埋める)感覚に近い気がする。
才能開化カードはかなりの種類が用意されていて、それに書かれた豆知識のTIPSは楽しい。
新しい職業を発見した時に、どれが合っているか選択することが出来るが、エンディングに影響するようなことも何も無いし、選ばせる意味がない。
全てのマス目を埋めることで、最も適正な輝かしい職業が手に入り、最終的にこれを目指すことになるが、
この作業自体、効率的にやる方法がなく、ひたすら生徒を捜し続けてマス目を埋めるためにターン消費の繰り返し。非常につまらない。

どーも、取って付けたようなやり込み要素に思えてならない。
このせいで、ストーリーの追求に専念したいが、そればかりだと時間が余ってしまい、その逆も然り。散漫になってしまっている。
せっかく見なくてもいいイベントや台詞の反応も豊富に用意してあるのに勿体ない。

あと、話に全く絡んでこないキャラがいるのもなんだかねぇ。
先生なら勿体ない程度ですませられるのだけど、生徒でそれがいるとただの数合わせという感じがする。

1周目では絶対に真のエンディングは見られず、普通にやっていると大体全部の話を見るのに3〜4周はかかるはず。
ただ一度クリアした話は飛ばせるので、それほどストレスにはならない。同じ時間軸で新たな物語が追加されたりと退屈させない作りにはなっている。
しかし最終章はややクリアの難易度が高く難しいのは気になった。
1周目で偶然真エンドの手順を踏んでいたのに、条件が整ってないのでカードが手に入らず、2周目では意識せずに出来るような伏線が追加されていたので、
別のことを試していたらクリア出来ず、3周目でやっとクリアという二度手間を踏んでしまった。何とかして欲しい。

追加シナリオの一つにはザッピングシナリオという触れ込みで説明書に記載されてるが、ただシナリオがリンク(使い回し)しているだけである。これはちとこじつけすぎ。
音楽がチュンソフト製品にしてはイマイチなのも気になった。

周回を前提としてるなら、イベントのスキップ機能をもっと快適にしてプレイ時間がかさばらないようにして欲しかった。
スキップがカット(台詞)一つごとなので、スキップしまくってても結構時間がかかる。
才能開化も意識してやっていくと大体コンプリートまでは20時間ちょっとか。
ソフトリセットやゲーム途中にデータロード出来るコマンドがないので、クリアに関係ない分のイベントカードの制覇は5枚程度残して挫折。
それでも一応番外編を含め全てのストーリーは見たはず。これでプレイ時間は25時間。見ているだけの時間が多いADVというジャンルにしては長すぎるようにも思う。

やり込むことで増えていくおまけモードは、パッケージ裏や説明書でおおげさに紹介している割に、しょっぱい内容でがっかり。

ディスクのローディングはもたつきのあるところもあるが、概ね良好だ。
操作性については、カードの種類が最終的に膨大になる才能開化モードでの選択のしづらさ(カードの並び順が分かり辛い)を除けば問題はない。
むしろ、この程度のゲームで問題ある方がやばいのであるが。

ゲーム部分の簡略化や新しい挑戦はその心意気は評価したいが、あまりにもプレイヤーの介入の余地が少なく、正直なところ退屈だった。話の内容の善し悪しは別として。
そこで結論。

素直にコマンド型アドベンチャーで出せば良かったのに…。





[2005/11/01]
戻る

inserted by FC2 system