ロードオブアルカナ


対応機種プレイステーションポータブル
発売日2010/10/14
価格5980円(UMD)/4980円(PlayStation Store)
発売元スクウェアエニックス

(c)2010 SQUARE ENIX / ACCESS GAMES
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カプコン「モンスターハンター」の大ヒットにより、他社からも類似品(マルチプレイアクションゲーム)がPSPで数多く発売されたが、このゲームはその中でも最底辺を誇る出来の悪さだ。

まず、オリジナリティに乏しい。
このブームに乗った(モンハンを意識した)ゲームでも、意欲作も多く存在し、共通するのは協力プレイアクションのみで、それ以外は別物というほど冒険している作品もあり、一概にパクリと一蹴出来ない状況になっている。
しかし、本作は、「モンスターハンター」の上辺だけを真似して、面白さの本質を見抜かず、適当に手間暇かけず出したというのがあからさまで、かなりつまらない。
ヒット作をパクるのは悪いことではない。だが、そこからさらに新しいものを見出す技量がないと、当然オリジナルに負けるのである。
これは想像でしか無いが、スタッフの中で、一人も「モンスターハンター」にハマっている人間はいなかったのではないだろうか。
なぜ、売れたのか、爆発的ブームになったのか、研究すらせず、わからないまま「なんでこんなものが売れているのだろう」と、見てくれの部分だけを切り取って、文字通り“コピー”しただけ。こんな志の低いゲームが当然面白くなるわけがない。

発売前には体験版を公開し、プレイヤーから意見を求めた。このへんの販促の仕方は、バンダイナムコゲームス「ゴッドイーター」に酷似している。
あのスクウェアエニックスがマルチプレイアクションに挑戦ということで、結構な話題となり、体験版は実に100万ダウンロードを達成。
とうぜん、プレイヤーから改善点やダメ出しがメーカーへと続々と送られる。が、ここでの対応の仕方がかなりとんちんかんで、注目していたユーザーであればあるほど、あきれ返って見切りをつけたようだ。つまりは、この販促は逆効果だったのだ。
逆に、意見をしっかり聞いて、発売延期を覚悟するほど徹底した要望の取り入れを行なっていれば、そこそこ遊べるレベルぐらいには改善していたかもしれない。

遊んでいて感じたのは、この会社は見栄えを最も重視するだけあって、グラフィックとか演出なんかは割としっかり出来ているのだが、それ以外の操作性だとか、近年の商用ゲームでは珍しさすら感じられるほどのちぐはぐなゲームシステムの仕様などが浮き彫りとなってくる。
このゲームは、外注に出して作らせているのだが、思うに、開発元と発売元に軋轢があったのではないだろうか。連携がうまく取れてないから、体験版を出して意見を募っても、それを取り入れることが出来ない。
発売元の人間(おそらくプロデューサー辺りだろう)が、この会社特有の(売りやすくするために)見栄えばっかり口出ししてろくにゲームを見もせず、それに対して外注先の人間も嫌気がさし、まともなゲームを作ることを放棄しているように感じた。

以下は、まずちぐはぐな仕様について述べる。

「モンスターハンター」と比べ視点が寄っていて、視界が狭いためか、敵をロックオンできる機能がついているが、Lボタンを押しっぱなしにしていなければならない。長期戦を強いられるボス戦などでは、ずっと押しっぱなしにしていると指が痛くなってくる。押すだけでロックオン機能が切り替わる方式にすべきだろう。
また、相手が瀕死状態になると、映画とかで使われている視点が斜めになる粋な演出が入るが、画面が見づらくなるだけ。はっきりいっていらない。
ロックオンを常にしているプレイは想定していないということを開発側のコメントとして出されていたが、ロックオンしないと敵の位置を見失うし、距離感もつかめないし、攻撃時の自動補正機能も全く無いのに、こんな便利な機能を“想定していない”とはどういうことだ。せっかく便利な機能をつけているのに、それをわざわざ捨ててしまう。どうかしている。
大体ストーリー上のラストボスは、見計らったかのようにロックオンを解除してくるぞ。それによって難易度を引き上げている。
しかもロックオンした状態でとどめを刺さないと、フィニッシュブロー(アイテムドロップ率を引き上げるとどめ技)が発動しない。このへんがもっともちぐはぐさを感じた部分だ。

敵を倒して素材を集め、装備品を強化したり生産する要素は勿論健在だが、操作性が悪いから部位破壊がやりづらいし、なにより、モンスターのコア(素材の一種)の入手条件が厳しすぎる。
クエスト中に特定のフィールドエリアでアルカナの活性化が起こった場所で、そこの敵を倒すことで入手できるのだが、この面倒な条件をクリアした上でさらに、絶対に入手できるわけとは限らない。希少品の位置づけにしたかったのだろうが、この開発スタッフは遊び手の精神状態というのを全くわかってない。これはやる気を確実に削ぐ。
入手しやすくする手段はあるのだが、その中の一つに、同じコアを持っていると、入手確率が上がるというものがある。これは普通、設定を逆にすべきところだと思うのだが…。特に、ストーリ上クリアしなければならないマスターガーディアンのボス戦では、苦労して倒すのだから、ここでは確実にコアをあげてもいいだろう。
前述のコアを持っていればいるだけ入手率があがるというのなら尚更。希少なボスで手に入るコアをすぐ強化素材として消費してしまうか、保険として持っておいて、ある程度溜めてから使うかという葛藤が生まれるからだ。

一回のクエストで持ち帰られるアイテム数も少なく、不便。

「モンスターハンター」と違うのは、プレイヤーキャラクターにレベルアップの概念があり、自身がパワーアップしていくこと。敵を倒すことで経験値が溜まり、基本能力値が底上げされるレベルアップと、使っている武器の熟練度が上がっていき、新しい技を覚えたり、その系統の武器に限って使い勝手が向上するといった恩恵がある。また、敵を攻撃するとダメージが表示され、自分のヒットポイントも数字で表されている。
フィールドマップでそのまま敵と戦うのではなく、RPGのようにシンボルエンカウント制度で、接触することで専用の平坦なバトルフィールドで戦うことになる。この辺はロールプレイングゲームの要素が強い作風になっていると言える。
後者に関しては、差別化をはかったというより、発注先の開発力では「モンスターハンター」みたいなバトルが再現できないから、苦肉の策としてやったようにしか思えない。

次に、このゲームの不満点を指摘していく。

シンボル制の戦闘は、単調でテンポが悪く、ありきたりな展開になりがちで、作業的である。
最大で3体まで出てくるが、行動ルーチンがいい加減で、だいたいはそれらの敵が密着してしまって、攻撃する隙が減り、その分時間がかかり、ただただ倒すのが面倒になっているだけである。
せめて中型クラスの一体だけでも倒すのに時間がかかる敵に関しては、他の小型モンスターも一緒に出すのはやめて欲しかった。

クエストの数も種類も少ない。結局は特定の敵を倒せというものだけで、「モンスターハンター」のように採集系のクエストは無い。敵にはおおまかに、明らかなザコと、多少それらより強い中ボスクラスのもの、ガーディアンといわれるボス級の3つ。敵の数も、全然少ない。
序盤や中盤の中ボス以上のモンスターは、キャラクタが育ってくるとさほど最初ほど苦労せず倒せるようになるが、基本的に倒すのに時間がかかり、テンポが良くない。そして、この手のゲームは、死んで敵の動きを覚えるゲームなので、その過程を楽しめないと致命的だが、このゲームに関しては面倒臭いとしか感じなかった。
それぞれの敵は、ただ攻撃を当てるだけでなく、倒し方があるのだが、このプロセスの作り方が下手。条件を満たしたとき(敵を気絶させるetc)のみダメージを与えられるといった、まどろっこしい物が多い。その手順はどれもつまらなくて、決して面白いものとは思えなかった。
それに追い打ちをかけるようだが、特定の攻撃を受けるとキャラが小さくなって行動が不自由になる、空をとぶ敵は、降りてくるまで一切ダメージを与えられないし、なかなか降りてこない、魔法攻撃を当てないとダメージを食らわないなど...よくもまあ、ここまで不快感を味わわせるギミックばかり思いつくものだ。逆に感心してしまう。

操作性が悪く、煩雑である。「モンスターハンター」のように抜刀や納刀がないので、覚えやすいといえば覚えやすいが、個人的に感じたのは、コンボ攻撃の種類が多すぎ。打ち上げ攻撃なんて、打ち上がる敵が少ないし、まず使わない。
ボタン数の割にアクションが多く、だから、ボタンを組み合わせて出すアクションが多く、このせいで誤操作してしまうことが多かった。また最大の不満点は、ボタンを押してから行動に移るまで若干のラグがあるように感じた。つまりもっさりしているのである。
個人的にはこの独特の操作性になれるまでが最も辛かった。大体中盤辺りから極端に難しくなっていくのだが、あまりのつまらなさにこの辺りで何度も途中でやめようかと葛藤したが、なんとか気を取りなおして最後までプレイした。

攻撃した際の血しぶきの出方が不自然。というか飛び散りすぎ。
あと、ボス戦で発生する、一定値ダメージを与えると発生するボタン連打するカットシーンと、ボスが瀕死状態で発生するシネマティックシーン(止めのイベントシーン)と言う、デモ画面にあわせてボタン入力を求める要素ははっきりいって蛇足。見栄えをよくするためにねじ込んだとしか思えない。
だいたいボタン入力に意識がいって肝心のプレイヤーは、作り込まれたイベント映像を全く見られない。困ったものだ。

「モンスターハンター」のアイルーに相当するつもりで作ったのだろうヴィッセルというマスコットキャラ(にしたかったのだと思うが)が、はっきりいって可愛くない。語尾に「じ」とか、ちびまる子ちゃんのはまぢじゃないんだし。

マルチアクションゲームとしてはかなり後発となるが、一人でも楽しめるような工夫が一切見られないのははっきりいって時期的に言って駄目すぎる。最近では一人用モードではNPCが一緒に戦ってくれたり、ストーリーでグイグイ引っ張っていくようにして、楽しめる配慮を行っているのに、時代遅れも甚だしい。
これが、モンスターハンターが流行った直後で、われ先にとスピード勝負で発売したゲームならわかるが、あんまりだ。

装備品を強化したり生産したり、アイテムを生産したり出来るが、どちらかというと、バトルメインの作りだ。というか、色々と不便で自由度が低くなった「モンスターハンター」といった感じで、ハンティングアクションとしては楽しくない。
どちらかというと、コーエー「三國無双」のような大味な3Dアクションゲームとして作っていったほうが良かった気がする。それにしたって10年前のゲームのような古臭さがあって厳しいのだが…。

あと、細かなところでは、聖堂が無駄に広い。

最後になるが、本作は売り方が阿漕でその面でも(悪い意味で)話題となったゲームだ。
このゲームは、アーケードのカードゲーム「ロードオブヴァーミリオン」と関連があり、製品版についているコードを入力することで、抽選でそのゲームで使えるカードが手に入るキャンペーンを実施していたり、
製品版についている体験版(公式サイトからダウンロード出来る体験版とは異なるもの)を経由して、製品版を購入させることでメダリオン(ドラゴンクエストで言うちいさなメダルに相当する)が手に入り、ゲーム上のレアアイテムがゲット出来る仕掛けが用意されている。
つまり、製品版を買って、布教することでレアアイテムが手に入るというわけだ。これはあまりにもひどい商売だと感じた。

体験版の配布で、ユーザーの意見をほとんど聞かないまま発売したのは、「ゴッドイーター」のように短期間で不満点を改良した続編でも出すつもりなのではないかとも思ったが、最初に書いたように開発を外注した会社との軋轢が原因だとしたら、一発屋で終わるだろう。
ちょっとやそっと改善した程度じゃ劇的に面白くなるとは思えなかったし。ただ、体験版が下手に話題になったので、勘違いして出す可能性もある。いずれにしても期待はできないが。

大体こういうゲームは、モンスターハンターをやり飽きてそれでは満足できず、似たゲームを探すほどのいわばヘビーゲーマーが主に手に取る。売る側としては、類似品を出せば売れるだろうと言う考えだったのだろうが、本来手にとって欲しいだろう一般ユーザーはモンスターハンターで既に満足しており、それ以外のものはまず手に取らない。
ただでさえ現在進行形でモンスターハンターはキラータイトルとして君臨しているわけだし。つまり、よほど力を入れて作り込まないと、舌が肥えた人間は満足できない。ノウハウのない会社が適当に安く作れる会社に外注して作らせる。これはあまりに分が悪い。そこで結論。

安易にモンスターハンターをパクっただけの駄作。遊ぶ価値なし。





[2010/10/19]
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