メトロイド Other M


対応機種Wii
発売日2010/09/02
価格6800円
発売元任天堂

(c)2010 Nintendo
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「デッドオアアライブ」「ニンジャガイデン」のチームニンジャと組んで作られた全く新しいメトロイドが本作となる。
ここ数年はずっと海外スタジオによる一人称視点のメトロイドプライムが発売されてきたが、国内開発での新作はかなり久しぶりだ。

操作はWiiリモコンを横持ちにして使い、ファミコンゲームのようにシンプルに遊べると書いてある。
似たような謳い文句は「Newスーパーマリオブラザーズ」でも使われ、あちらは完全な横スクロールアクションに回帰していたが、これはメトロイドである。ただ昔風にするわけがない。

十字キーを使って動かすが、完全なサイドビューではない。固定視点で3D化されたフィールドが舞台となる。
それならば、なぜヌンチャクのスティックを使わせないんだと思うかもしれないが、十字キーで最も最適に遊べるようにカメラが自動で動いてくれる。その点で不自由さを感じることはほぼ無い。
また、昔のメトロイドをそのまま立体化しているので、狭い通路と小部屋で構成されていて、広大なフィールドを歩かせるということがないので、違和感も少ない。感覚的には横スクロールのジャンプアクションを遊んでいる感じに近い。

普段は横持ちだが、リモコンを画面に向けることで主観視点に切り替わる。ここでは気になるところや敵をロックオンして、強力なミサイル攻撃などの特殊アクションを出すことが出来る。通常時ではショットしか出せない。
この、横持ちを突然縦持ちに変えさせる操作がいかにもメトロイドらしい作りで、このシリーズはいつも“面白いけど付いてこれる人が限られる”マニアックなゲームに仕上げてくる。

他にも、タイミングよく十字キーを押すことで回避行動を取るセンスムーブや、隙の出来た相手に接近してトドメを刺すオーバーブラスト、リーサルアクションなどがある。
このように、相変わらず多彩なアクション性で、覚えることが多く、付いてこれる人は少ないかもしれない。特にゲーム中に持ち方を変えさせられる操作は賛否両論だろう。
そのようなリモコンの使い方は、本来なら不適切とされてきたことだからだ。

しかしである、メトロイドシリーズはいつもこのような一歩先をゆくゲームシステムではなかっただろうか。ディスクシステムの初代メトロイドは、広大で意地悪な探索マップで難しかったし、今でこそ評価されている「スーパーメトロイド」も、当時はボタンの全てを使わせる操作性が複雑すぎると言われていた。
今作も、一見すると不便さを与える操作性かもしれないが、どれも非常に良く考えぬかれて構築されたゲームシステムに思えた。
ショットの弾は自動的に敵を狙ってくれるので、遠くから撃っているだけで倒せてしまってはつまらない、そこで時折ミサイルを使わないとダメージを与えれなかったり、止めを狙って近接攻撃を行う。ショットの溜め時間が長いが、センスムーブを出すことで一瞬で溜まるため、積極的に避け動作を行うことでガンガン攻撃できる。
煩雑と思えるゲームシステムも、実は一切の無駄が無く駆け引きを面白くするために存在している。上手にプレイしている人を見てると凄く楽しそうだ。
主観視点にしてミサイル攻撃などを出す時が理不尽さを感じるかもしれないが、切り替えて数秒は時間がゆっくりになる。きちんとそのへんも配慮されて作られている。

また、メトロイドといえば、アクション要素だけでなく、マップを探索してどうやって先に進むか?を考えるシーンもあるが、この探索とアクションのバランスが考え抜かれていて良く出来ている。
プレイヤーを強化するミサイルタンクやエネルギータンクといった強化アイテムの隠し方も絶妙で、部屋の敵を全滅させることでレーダーマップにヒントが表示されるなど、敵を倒す意味合いが出ていて良い。

敵を倒しても、回復アイテムといった類のものは一切落とさない。回復は全て自分で行う。体力が減ってきたらコンセントレーションで回復させる。ミサイルも同様のアクションで補充する(Wiiリモコンを立ててAボタンを押す)。
この間、隙ができるので敵に攻撃されると当然ながらやられてしまう。

今回は、テクモのチームニンジャが制作に当たっているので、任天堂らしからぬ手触り感があるが、新しい風が入ったことで、いい方向にゲームが出来上がったのではないかと思う。

任天堂のゲームにしては珍しく、長めのムービーが挿入される。個人的には箸休めになっていいと思う。いまどきこれといった物語もなくひたすらゲームだけ展開しても淡々とした探索になりがちだし、この決断は英断と取りたい。
元々このシリーズは、凝ったムービーシーンなどはなかったが映画を見ているかのようなゲームだった。本作においても、その伝統を貫いているだけだと思う。「メトロイドプライム」の時の世界観の演出は、海外のメーカーが作っていたため結構おざなりだったが、本作は割と細かいところまで作り込まれていて好感が持てた。昔から遊んでるユーザーも納得の内容になっている。
音声がちゃんと日本語と英語、切り替えられるようになっているのも細かな配慮だと感じた。

個人的に感じた不満点としては、つかみの部分がシナリオ、ゲーム、両面から見ても弱いと感じたことだ。もっと早いタイミングで色々な能力を使えるようにしたり、気を引くストーリーを見せても良かったと思う。
なぜなら、ゲームに不慣れな序盤こそ、最もプレイヤーにとって厳しい時間帯であり、そこからのめり込ませるまでの間に、もっとこのゲームの魅力を出していくべきだと感じた。
本作は非常にストーリー性が強く、時折ストーリーに沿った行動を取らなければならないが、中でも主観視点で特定の対象物を探させるシーンがシビアすぎる印象を受けた。狙ってやっていると思うが、主にゲーム終盤で、何をすればよいかわからない状況に追い込まれることもあったのが気になった。
メトロイドといえば、クリアータイムに応じてエンディングが変化することだが、今回はその評価要素がなくなっていることが残念。メトロイドプライムで既になくなっていたが、あっちはゲーム性の異なるものだったので納得できた。本作は従来作に近いゲーム内容なので、なんとかいれて欲しかった。
敵の種類が少なく感じたり、同じ場所を行ったり来たりすることが目立ち盛り上がる箇所はあるものの、間延びした構成になってしまっている点が気になった。

とはいえ、グラフィックはWiiの中では非常に綺麗だし、ディスクの裏読みを駆使してロード時間を感じさせない工夫など、プログラム技術も高い。
ゲーム・ボリュームに物足りなさは感じるが、クリア後にパワーアップアイテムを探すやり込み要素は健在で、長く楽しめる。
また、チームニンジャ制作ということで、難しさをウリにしてきた制作スタッフということで、高難易度なゲームになってしまう懸念があったのだが、ほどよい難しさで安心できた。

思うに、ゲームシステムは良く出来ていると思うのだが、ギミックの制作がこなれていない印象がある。技術面など色々制約があり難しかったのだろう。しかし十分及第点のゲームと言える。相変わらずシリーズファンを喜ばせる演出を心得てる点も良い。そこで結論。

どこまでもストイックな、人を選ぶゲーム。





[2010/09/05]
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