メタルギアソリッド4 GUNS OF THE PATRIOTS


対応機種プレイステーション3
発売日2008/06/12
価格8800円
発売元KONAMI

(c)1987 2008 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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世界的に人気を博している、かくれんぼアクションゲーム、メタルギアソリッド4。
シリーズの全ての謎が遂に明かされる!メタルギアソリッドオンライン(無料)もゲーム内に同梱されている。

最終的にコナミの社運をかけて作られた巨大プロジェクトになったらしく、国内作品ではグラフィックレベルは最高峰を誇る。
イベントムービーは基本的にリアルタイムポリゴンだが、そのクオリティの高さは最近まで(でも)プリレンダムービーとして収録されていたものと言えば驚愕だろう。
プレイステーション3の性能を際限なく発揮したゲーム。逆を言えば、ここまで手間とお金をかけなければ、プレイステーション3のすごみを引き出せないとも言える。
PS3自体、早すぎるゲームマシンなのである。

ムービーが非常に多い。プレイ時間の半分はただ見ていただけではないのかと思うほどだ。しかしこのゲームに言いたいのはそっちの方ではない。
なにせ、ムービーが長いのは今に始まったことではない。小島作品であるPCE「スナッチャー」の頃、追加部分がほとんどイベントムービーで30分以上見ているだけということに批判が集まっていたが、今思い出すと可愛い物だ。

ステルスアクションなどと、間口の広さを歌ってはいる物の、シリーズを重ねるたびにだんだんとリアリティを追求しすぎて、マニアックになってしまっている。
1や2の頃のバカ単純さなぐらいが丁度良かった。まだ、リモコンミサイルなどフィクションバリバリのトンデモアイテムが存在していたり、今ほど硝煙くささが無かった。
今回も3同様、本物志向の重火器がたんまり登場する。ゲーム的には1つでいいような似たような性能の武器も、複数登場する。それは既にマニアが満足するためだけの領域に達している。

操作性もFPS、TPSを意識したものに変更されている。照準を合わせながら動けるなど、自由度が増しているが、裏を返せば、クリアするのにそれらを使いこなす必要があるという意味でもある。
敵の視界も真正面60度ではなく、3のように鋭く反応するし、その視界と地形を表示していたソリトンレーダーも存在しない。そのため、慎重に動かないとすぐに見つかってしまう。
おまけに、3よりもある一点で難易度が上がっていて、ごり押しで通過することが出来無くされている。

一見すると洋ゲーに良くあるドンパチゲームのような敷居を感じてしまうかもしれないが、難易度自体は相変わらず低い。

ただ、3のシステムの反省点もしっかりふまえていて、メニューを開いて一々カムフラージュせずとも、オクトカムスーツという周囲の色にとけ込むスーツや、ソリッドアイという、周辺の敵兵やプレイヤーの気配を視覚的に表示するレーダーがあり、
前作ほど突き放し感は無い。しかし、総合的に複雑なシステムになってしまっているので、取っつきは相変わらず良くない。

CEROの審査がD査定なのは納得いかない。
脚本、演出ともにかなり生々しくなっていて、巧妙に設定でごまかしている部分はあるものの、Z指定でもおかしくない内容だ。
本作はプレイステーション3のキラータイトルとして、大々的に発表され、シェア拡大や売り上げも社内的に期待されているゲームだ。
そんなゲームが、Z指定(18歳以上対象)はまずいという判断からだろう。
小島作品でいえば、「スナッチャー」並に久々にエグい、グロい内容になってると思う。

ムービーがとにかく多く、ゲームとしてのボリュームは驚くほど薄っぺらい。
しかし、決して作り込みが無いわけではなく、舞台となるフィールドマップが普通にクリアするだけでは半分ぐらいしか踏破しないだろうぐらい無駄に広く、緻密に作り込まれている。
この豪華なフィールドを駆け抜けるのは、まさにPS3所持者の嗜好の贅沢と言えるだろう。
1周するだけなら短いゲームではあるが、やり込み要素を含めると結構なボリュームになる。

今回はプレイヤー対敵兵ではなく、2つの敵対勢力が争っているなかでの第三者=プレイヤーという位置づけで、お互いのAIが争っている戦場が舞台。
もちろん、その敵兵にプレイヤーが見つかると攻撃を受けるのはこれまでと変わらないが、どちらかに荷担すると、味方になってくれたり、AIの動きに変化が現れる。
この辺のAIの動きが画一的でなく、破綻無く動く様はさすがと言わざるを得ない。

シナリオは、これまでの作品で適当に広げた伏線すらもきっちり回収しきっていて、まさに完結編にふさわしい規模、密度を保っている。後付感は否めない部分も目立つが、もともとが後付なのだから仕方ないだろう。説得力さえあればいいのだ。
ファンを喜ばせる演出も忘れていない。ただし、これはシリーズ経験者前提での話だ。
今作はストーリー面では、そもそもが新規のプレイヤーを突き放している。前作までのストーリーとの密接なつながりを持っていて、それが説明もなくガンガン話にからみついてくるので、未プレイの人間にはかなりつらいし、真相を暴かれた際のカタルシスも何も感じられないだろう。
むしろ、説明的なシーンが多く、退屈感すら味わうのではないかと心配になるほどである。
一応断っておくと、今作単体でも一つのお話としては成り立っている。だが、ゲームを進めて自分の手で感じ取っていくというよりも、長いムービーを垂れ流されて見せられるだけなので、いまいち感情移入出来ない。

ゲームを意識した演出も随所に見られるが、全体としては見ているだけの部分が圧倒的。
まずゲームとして内容が成り立っていて、それからイベントムービーが素晴らしければ、手放しで高評価を与えた物だが、ゲームとして感動出来る作品かと言うとかなり微妙である。

この点で、アクションゲームとして構成まで意識して作られたメタルギアソリッド一作目は、高い評価を未だに持っている。
あれも最後語りすぎと言う印象はあるものの、無線通信でのやりとり、限られた制約で演出されたイベントムービー、斬新なゲーム性(かくれんぼゲーム)に多くの人が付いてこれるだけの難易度、なかなかのゲームであった。

2作目、3作目とどこかに「監督、見せすぎ頑張りすぎ」と言いたくなる構成に、どうにも引っかかる箇所が出てきてしまう作品になっていってしまった。
それでも、ハードウェアの進化、作り手の進化による、システムの進化に、納得出来る部分はあった。

巨額の開発費を投じて作られたメタルギアソリッド4は、やはりかつて同じ道を歩んだセガ「シェンムー」スクウェア「ファイナルファンタジー7」などのように、ゲームに金かけたらロクな結果にならないといういい手本になったのではないだろうか。
決して出来が悪いという意味ではなく、金をかけた部分がまるでゲームプレイヤーに関係のない部分ばかりという意味で。
多くの消費者はきっとこう思っているはずだ。こんな映像作品に金払ったわけじゃねぇ!と。

やっぱりメタルギアなんだから、無線で遊べなきゃ。ふざけたら怒られなきゃ。無線でセーブ出来なきゃ。色々寂しい。

しかしそれにしても、おじいちゃんになった主人公=オールドスネークが、腰を痛めながら戦地を走り回る姿はなかなかにシュールである。
そのほかにも全体的に登場人物が高年齢で、スネークとビッグママ(2人とも高齢)のツーショットは、他のゲームでおがめるかどうかわからない貴重なシーンである。
さぞかし小島監督はブルーレイディスクでシワを表現したかったに違いない。そこで結論。

ゲームに無駄に金かけても駄目だ(個人的にはE3のトレイラー映像で遊び心を忘れていない演出を見て、小島なら大丈夫だと思っていたのだが)。





[2008/06/14]
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