メタルギアソリッド5 THE PHANTOM PAIN


対応機種プレイステーション4
発売日2015/09/02
価格8400円
発売元KONAMI

(c)2015 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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専用のゲームエンジン「FOXエンジン」を構築するところから始まった、小島プロダクション史上最大となったプロジェクト。
「メタルギアソリッド5」は、シリーズ中、最も高い注目度と期待を背負った状態で、発売を迎えた。

まず、本作の一番の売りとされているのがフィールドの「オープンワールド」化である。
舞台となるフィールド全てがシームレスに一枚に繋がっており、プレイヤーはその臨場感を存分に味わえる、昨今の据え置きゲーム機での流行りとなっている。

ただし、本作では厳密には、この定義に当てはまったフィールドではない。
大まかに分けて3つの巨大なフィールド(マザーベースと言われる拠点、それと2つの巨大な戦場)があり、プレイヤーはそれを目的に応じて切り替えて移動していく。
しかし、そういった作りではあるが、ほぼゲームの構造的にはオープンワールドと言っていい(オープンワールド的とでも言うべきか)。

ゲームシステムはPSP「メタルギアソリッド ピースウォーカー」のものをベースにしている。
軍事基地を運用して、敵地にいる兵士をフルトン回収してスカウト、人材を集めて、基地を発展させ、武器を開発するといった要素が入っている。
ゲームの流れも、ミッションやサイドミッション(サイドオプス)を一覧から選択して進めていくようになっている。

大作ゲームということもあって、当然のようにかなり作りこまれている。
敵兵士のAIは実に自然な反応をとってくれて、機械的でない。今の時代、これぐらいやってやっと当たり前といったレベルなのかもしれないが、それでも凄いと言いたい所だ。
また、軍事基地に関してもかなりリッチになっていて、実際に自分の基地が歩ける!!そこにはスカウトした兵士が歩いていたり、規模が大きくなるとちゃんと基地も大きくなる!!といった凝りようだ。
そして、このマップを使って、他のプレイヤーと対戦を行うことが出来るというところも凄い。

グラフィックは当たり前のように綺麗だし、ゲームとしての水準もやはりかなり高い。さすが「メタルギアソリッド」!!さすが小島監督!!と、賞賛を送りたい所だ。
だが、開発に時間をかけすぎたせいなのか、広げすぎた風呂敷を畳みきれてなかったり、ゲームのコンセプトが迷走してるような部分があったりと、どうにも気になる点も多い。
そこを指摘したい。

「メタルギアソリッド」シリーズにしては、いや、小島監督のゲームにしては、と言ってもいい。
なんだか、ストーリーの扱いがぞんざいに感じた。

提示されたミッションをいくつかクリアすると、唐突にストーリーが進展する。そこでは、小島監督自慢のムービーカットシーンが流れるが、カセットテープの音声(従来の無線通信に近い)だけで描かれることがあったりと、統一感がない。
(しかも困ったことに、ムービーの割合が少なく、カセットテープの音声だけの部分が割合的に多い)

基本的にこれまでのシリーズだと、アクションゲームとしては冗長と言われるほどのムービーシーンが入って、丹念にストーリーが描かれていた。
それはまるで、映画を見るかのように、プレイヤーが映画の中の主人公になったかのような立ち位置で、ゲームが進行していた。

ところがだ。今作では、ゲーム上でやっていることとストーリーが、あまりシンクロしていなくて、与えられたノルマをこなすことでムービーというご褒美を与えられている感じが強く、没入感が得られなかった。

そして肝心のストーリーについても、「本当はもっと入れるはずだったんだろうな...」と感じさせるような、どこか継ぎ接ぎ感があり、最後までやってもどうにもすっきりしない。
まあ、メタルギアソリッドシリーズ自体、すっきりさせない終わり方をするのが恒例となっているが、今作のすっきりしないのは、どうしても意図したものとは思えないのだ。

例えば章立て方式をとっているが、わざわざ章立てにする必要性がない。全2章で、1章が本編。2章がクリア後のお楽しみ的な位置づけとなっているが、内容的には無理矢理そういう風にまとめたといった雑な感じ。
仮に、そういう構成をとったのだとしたら、やはり章立て方式を導入するのは不自然極まりない。本当はもっとボリュームがあったのではないかと勘ぐってしまう。
(この辺は、海外ドラマ風の演出を入れていることから、シーズン1、シーズン2みたいな意味合いじゃないかとも考えたが、だとしても、最初からそういう表記にすると思う)

これに関しては、開発期間があまりにも長期化したために、発売を急かされたのが原因じゃないかと思う。
っていうか、本作の発売前に小島プロダクションとコナミとの確執がいくつも発覚したので、もう殆ど間違いなく、それに巻き込まれた形となっているのだろう。

本作の開発に入るにあたって、世界を意識して、オープンワールドに固執しすぎたのも問題を感じた。

誤解を招くので断っておくと、オープンワールドを目指した事自体に間違いはない。
時間の概念があり、広大なフィールドマップを舞台にしたことで、圧倒的なリアルさが表現されている。
そして、それらが実現した自由度の高さ。これらはオープンワールドを目指さなければ成し得なかったものだ。

ただ、「メタルギアソリッド」のオープンワールドかというと、想像していたものとはかなりかけ離れたものになっていて。
広大な砂漠やジャングルに点在する敵の軍事基地や、廃村、空港が存在していて、それらがミッションの舞台となる。
しかし、これが「メタルギアソリッド」の世界かと言われると、やはり違和感が拭えない。

例えば、このシリーズの軍事基地と言われて想像するのは、MGS1の「シャドーモセス島」にあったような広大で複雑な建造物がどうしても外せない。
ゲーム終盤で、敵の本拠地的なものでそういうものが出てくるのかと思ったが、結局最後まで出てくることはなかった。
まあ多少広い複雑な地形が出てくるのだが、基本的には屋外ばかり。閉塞感を味わうマップがなく、気絶させた敵を隠すためのフルトン回収が優秀過ぎて、気絶させた(殺した)けど、どこに隠そう?といった緊張感がなかったのが残念でならない。

たぶん、そういうメリハリのあるマップを本来は作りたかったのだろう。しかし、技術的に難しくて断念してしまったのではないかと思う。

既に存在している海外産のオープンワールドのゲームと比べても、見劣りしてしまう部分があるのも残念だった。
車両に乗って運転したりはできるが、ヘリや戦闘機に乗って自分で操縦したりは出来ない。

また、基本的に支援ヘリに回収してもらって、マップを一度離脱、そこでミッションリストを見て選択、ヘリに近くまで乗せて行ってもらうのがゲームの流れになっている。
サイドミッション(サイドオプス)の場合は、自分で歩いて行ってもいけるが、ヘリで飛ばしてもらったほうが早い。
これだけワープするのが前提の作りになってしまっているのなら、オープンワールドの臨場感を殺してしまっているのと同じで、苦労してシームレスのマップにする意味が薄れてしまっている。
そして、細かいことだが、ミッション選択→装備品選択→ヘリコプターでの移動ムービーの長さはゲームのテンポを著しく落としてしまっている。
マップ切り替わりのローディング画面も長い。ひたすらに辛い。

自由度の高さを特徴としているが、ギミックやミッションのクリア目標(目的)のバリエーションが乏しいのは問題。
特にサイドオプスは、数ばっかり多くて、同じミッションの焼き直しばかり。最後の方は消化するのが苦痛にすらなっていったほど。
一応場所と敵配置が変わるので、それで違っているというふうにいいたいのだろうが、やってることが同じなので、どうしても作業になってしまう。後半は敵兵士の数を増やしたり密集して難しくしてるだけなので、工夫がなく面倒くさいだけになってしまっている。

戦車やトラックといった乗り物をもうちょっとうまく使えなかったものかなと感じた。
目的地まではほとんどヘリを使うし、ちょっと遠くても無制限に出来るダッシュで走れば良い。逆に欲しいなと思った時に中々使えない。不便。

ボス戦がつまらないのも惜しい。つまらないとまでは言わなくとも、面白くない。
MGS3ぐらいまでは、ボス戦も楽しかった。しかしこのシリーズ、なんだかステルスアクションのテーマを意識しすぎたのか、どんどんボス戦で面白いものがなくなっていっている気がする。

次に、操作性について。
「グラウンドゼロ」の時にも指摘したのだが、ごっちゃりしすぎている。
多くのアクションを詰め込みすぎてしまって、操作が非常に複雑化している。
理解すれば、慣れれば、ギリギリ操作できるようになるレベルなのがまたもどかしい。
それでも、中腰からほふくに戻りたいのに、間違って立ち上がってしまったとか、スティック入れっぱなしでカバーアクションに入りたいのだが、反応が曖昧などといった部分が気になった。
それとキャラクターの動きが全体的にやや軽い感じが?

最後になるが、ゲームバランスについて。
敵の視覚が鋭いとか、追跡がしつこいと言うのが「グラウンドゼロ」で気になっていたが、フィールドが広かったり、ゴミ箱やトイレに隠れるといった対処法が増えていたので、あまり気にならなかった。
バディ(相棒)に犬を連れて行くと、周囲の敵の存在を検知して自動でマーキングしてくれるなどの救済が入っていたりして、遊びやすく調整されていたのは良かった。

一応、2章終わりまでプレイしたのだが、ここまで到達するのに費やした時間は実に80時間。
サイドオプスも追っていったせいなのか、自分が単に下手でのんびり遊びすぎたせいなのかわからないが、アクションゲームとしてはちょっと長すぎる(この辺は自分の遊び方が悪かっただけなのかもしれないが)。

正直、国産のゲームで、ここまでのものを仕上げてきたのは凄いと思う。が、「メタルギアソリッド」として良いかどうかは別で、シリーズの味というか、らしさが薄くなって、どこか没個性的になっている。
どちらかと言うと、世界で通用するものを意識しすぎて、技術力を誇示するためのものになってしまっているというか、そういう雰囲気が強い。
そこでさらに追い打ちをかけた出来事として、採算や納期を考えなかった開発期間。その収拾が付けられず、適当に切り上げてまとめ上げてしまったような荒っぽさが目に付く。

今回、不完全燃焼だった部分が、続編で挽回されるといったことも環境的に期待できないだけに、この出来は本当に残念でならない(この先このシリーズがどうなっていくのかはわからないが)。

元々このシリーズは、MGS3までは綺麗にまとまっていたが、それ以降は無理して作っている感が否めず、今作でも過去作を遊んでシナリオを把握していることが前提となっている作りなので、蛇足感はある。
そもそもこういう方向の、痛々しく妙に生々しさを魅せつけるようなシナリオがファンに求められているのかという疑問もある。本来MGSは、もっとユーモアがあって、どこか漫画的な色合いが魅力的だったと思うのだが。

そこで結論。

メタルギアソリッドが、どんなゲームだったのか、原点に立ち返り見つめなおして欲しい。





[2015/09/17]
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