メタルギアソリッド5 GROUND ZEROES


対応機種プレイステーション3/プレイステーション4
発売日2014/03/20
価格2980円(パッケージ)/2480円(ダウンロード)
発売元KONAMI

(c)2014 KONAMI / Konami Digital Entertainment
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いわゆる「メタルギアソリッド5」の先行体験版。とはいえ、製品としてリリースするため、それなりに遊べる、力を入れたゲームになっている。
1マップのみ収録されており、そのマップを使った、1本のシナリオミッション(今作における本編)と、5つのサイドミッションが遊べる。

オープンワールドを謳っていることもあり、本作でもその片鱗を見ることが出来る。広い1つのマップが一切切り替わることなく動きまわることが出来る。
舞台は中規模な軍事基地で、それなりに広く、屋外、屋内とバリエーションも豊富だ。これらがシームレスに繋がった1枚のマップになっている。

オープンワールドと言うと、マップの大きさばかりが売りになって、実際はパーツの使い回しが多かったり、ただ広いだけで実際はスカスカしてたり、中身が伴ってない状態に陥っているゲームが多い。
本作では、マップ、空間、造形がしっかり作りこまれており、マップ密度が非常に濃い。
本編ではどのようになるかまだわからないが、今作だけを見る限りでは、オープンワールド系ゲームとしてのクオリティはかなり高いと言える。

インターフェイスも割りと考えられていて、一度接触した敵兵、もしくは、双眼鏡(主観視点)で視認した敵兵をマーキングして位置表示する、目的地をマーカーで設定する(自動的に設定してくれる)、など。
便利すぎず、不便すぎずといった情報の与え方を考えて作られている。
「ヒットマン アブソリューション」では、壁の向こう側にいる敵を見ることが出来たり、どこを歩くのかインスティンクトで知ることが出来た。
プレイヤーに情報を与えるのは簡単だが、どこまで与えるべきかというバランスはステルスアクションではとても重要で、「メタルギアソリッド5」では、このへんのバランスがしっかりしているように思えた。

「メタルギア」シリーズは、敵の視覚聴覚が異様に鋭く、かつ、一度見つかってしまうと、警戒状態から逃れるのが非常に大変なゲームである。
あらゆる場面で、現実と照らしあわせて、なるべくリアルさを重視して作っているためだと思われる。
むしろこれだけ見つかりやすい割にペナルティが重いと、制作意図としては“見つかっている状態をどう対処するか”を楽しむゲームとしている気がする。
今回はエリア移動で仕切りなおすこともできないので、上手に逃げる必要がある。露骨な安全地帯もなく、AIもかなりしつこい。

これじゃ厳しいだろうということで、リフレックスモードというシステムが搭載された。
敵に見つかった瞬間、一定時間、時間が静止状態になり、この間にヘッドショットを決めるなど、上手に対処することで、警戒モードから逃れることが出来る。
この機能は、オプションでオフにすることも可能となっており、ストイックに遊ぶことも出来るようにされている。

一方で、まだ出来上がってないゲームを、先出しした状態の作品のため、こなれていない部分も多く見られた。
ほとんどが操作性に関するもので、一番気になったのが、カバー状態(壁貼り付き)の挙動と判定が曖昧で、非常に不便だったこと。
武器を切り替える(十字キーにセットする)操作、地面に落ちている武器を拾う操作など、複雑なゲームシステムがもたらす煩雑さが気になった。
メニュー画面を開いている間、時間が止まらない仕様の割に、情報量が多いという部分も目に付いた。
細かい部分だと、チェックポイントから再開する時、状態をまるごと保存してるのではなく、開始位置やマップ上の状態が都合よくリセットされた状態から再開されることなど。

トラックの荷台にのって潜入する、車に乗って移動する、戦車に乗れるなど、たった1つのマップしか入っていないとはいえ、遊べるものが多く用意されており、自由度の高さを見せつけてくれる。
これらの要素が本編ではどのように活かされるのか、嫌でも期待が高まってしまう。
どれも、既に実現されているものばかりだが、「メタルギアソリッド」シリーズでは初の試みである。
また、これらのアクションを、「ただ乗れるだけ」で終わらせず、なるべくゲーム的に意味をもたせようという意図が見え隠れしており、厚みのあるゲーム展開へとどのように演出するのか期待したい。

反対に、これだけ自由度を高めた上に、シビアでストイックなステルスゲームのバランスを両立させた状態だと、楽しめるプレイヤーがかなり限られそうで心配になってくる。

ストーリーについて。
プロローグ的作品だが、本編が出た時に“別に遊んでなくて問題ない”が、シリーズファンなら気になって遊びたくなる、という微妙な立ち位置を実現するために、かなり気を遣っている感じがした。
PSP「メタルギアソリッド ピースウォーカー」の後日談にあたる内容のため、それを体験している必要があるが、タイトル画面である程度のフォローがあるため、未プレイでも問題ないように作られている。

内容的には大したものではないが、イベントムービーのクオリティが凄い。
「メタルギアソリッド」は1からずっと、リアルタイムレンダでイベントを見せていくことに拘っていた。
そのせいか、イベントムービーのクオリティが突出して高く、この辺は国産ゲームで希少な、現在の海外ゲームと肩を並べられる作品と言ってもいい。
これに映画好きの小島監督独特の、カメラのカット割りや演出力を考慮すると、他ではちょっとやそっとじゃ真似できない高い品質を持った映像作品といえるほど、力が入っている。

ただ、肝心のインゲームとなると、ずっとリアルを追求したステルスゲームばかり作っていたせいなのか、どこか爽快感が薄かったり、なんとなくエイミング操作が固い、主人公の移動速度の遅さ、ゲームシステムや操作性のまとめ方が下手くそで無駄さ煩雑さが目立つところ、エフェクトの地味さや物足りなさなど、何が悪いってわけではないのだがアクションゲームとしての体感的な不満が際立って感じられる。
このへんの弱さを見るにつけ、純粋なアクションゲームとして発売された「メタルギアライジングリベンジェンス」を外注に出したのがなんとなく理解できてしまう。

当然海外ゲームも沢山研究しているはずなので、「メタルギアソリッド5」本編では、上手に折り合いをつけて、完成されたバージョンとして発売されることを期待したい。そこで結論。

これ単体では評価不能。磨きをかけた本編に期待。無理に買って遊ぶほどのものではない(敢えて本編待ちに徹するのもアリ)。





[2014/03/21]
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